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新しい妻

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第二章

「この話は真でしょうか」
「はい、どうやら」
「私達もこっそり見てきましたが」
「確かに馬車がオリンポスに向かっています」
「多くの者に護られて」
「そのうえで」
「そうなのですか、では間違いないですね」
 ヘラは自身の従神達に険しい顔になって応えた。
「この話は」
「どうされますか」
「ゼウス様はもうヘラ様のことをお忘れでしょうか」
「それでなのでしょうか」
「この様なことを」
「前から浮気性でしたがもう私のことを忘れるとは」
 怒りが湧いてきた、こう思うだけで。
 それでだ、ヘラは従神達に告げた。
「すぐにオリンポスに向かってです」
「そうしてですね」
「そのうえで、ですね」
「その新しい妻の方を追い返すなりして」
「そしてゼウス様も」
「問い詰めます、どういうつもりか」
 彼自身にというのだ。
「そうします、ではいいですね」
「私達もお供します」
「何があろうともご安心下さい」
「ヘラ様のことはお護りします」
「頼みます。私も貴女達のことは護ります」
 主神としてだ、ヘラは従神達にこう返した。
「では共に」
「オリンポスに参りましょう」
「そして新しい奥方の方を止めてです」
「ゼウス様に聞きましょう」
 従神達も続いてだ、そうしてだった。
 ヘラは従神達を連れて彼女達を護り護られながらオリンポスに向かった、その速さは彼女の怒り故に凄まじく速く。
 まさに人の思考より速くオリンポスに着いた、そしてだった。
 オリンポスに着くとだ、すぐにその馬車多くの者が周りにいるそこに向かった。すると馬車の周りにいる者達は。
 ヘラの憤怒の形相と全身から放たれている怒気に驚いてそのうえで道を開けた、まるで雷が空を割る様に。
 ヘラと彼女に従う従神達はすぐに馬車の前に来た、馬車を曳く馬達もヘラの姿を見て真っ青になって動きを止めた。御者の者はヘルメスの従神だったが彼もだ。
 動きを止めていた、そうして。
 ヘラは何なくゼウスの妻となる女神のところまで来てそのヴェールを剥ぎ取ったうえで彼女に詰問しようとした、だが。
 その彼女を見てだ、思わず声をあげた。
「!?これは」
「あの、これは」
「木像ですが」
「確かに美しいですが」
「只の樫の木の像ですが」
 従神達も言う、ヘラ達は思わず動きを固めてしまった。するとここでだった。
 ヘルメスがヘラの前に来てだ、そのうえでヘラに話した。
「よく戻って下さいました」
「まさかこのことは」
「はい、私の智恵でして」
「また貴方の悪智恵ですか」
 ヘラはそのヘルメスに目を怒らせて言った。 
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