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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第45話 再会の二人、イッセーとイリナ!

 
前書き
 あけましておめでとうございます。のんびりと遅い投稿で申し訳ございませんが今年もよろしくお願いします。 

 
side:祐斗


 コカビエルとの戦いを終え、サーゼクス様方との話を終えた僕達はイッセー君に家に戻っていた。全員激戦の疲れが今出てきたのか疲れ切った表情を浮かべており、僕も精神的にも肉体的にも限界だった。


「……私達、生き残れたんだね」


 リビングに入った僕達は暫くボーッとしていたんだけど、突然イリナさんがそんな一言を呟く。


「そうだな。聖書に書かれた伝説の堕天使と戦って生き残ったんだ、正直今でも信じられないんだがこうして生きているのが何よりの証拠だろう?」
「あはは、そうだよね。でもあんな戦いを本当に繰り広げていたなんて今更ながら実感が湧かなくて……」
「その気持ち、分かるぞイリナ。私も必死だった故あの時は何とも思わなかったが、こうして落ち着いてくると何とも非現実的な光景だったな」


 僕達はある程度慣れてしまったから何とも思わなかった、でもイリナさんとゼノヴィアさんはあんな大規模な戦闘は初めてだったようでさっきの出来事が夢のように感じているみたいだね。


「その気持ち、私達も分かります。イッセー先輩と一緒にいるとあんな事は頻繁に起こりますから今は何とも思いませんが最初は度肝を抜かれましたからね。最初に見たガララワニは怪獣そのものでしたから」
「はい、私もトロルコングさんを初めてみた時はとっても怖かったです」
「僕の場合はデビル大蛇かな?あの時は生きた心地がしなかったな、というか次郎さんに助けてもらわなかったら今こうして生きてはいなかったんだよね」


 僕達は自分達が初めて遭遇した猛獣について話し始める。しかしこうやって思い返してみると本当にすごい体験をしているんだな、僕達って。


「ふむ、それが君達が話していたグルメ界という世界に住む生物なのか?」
「うん、そうだよ」
「そうだ、私達にグルメ界について説明してくれるんでしょう?せっかくだから今教えてもらいたいな」
「そうだな、コカビエルとの戦いも終えた事だし今度こそ教えてもらうぞ」
「でも僕達よりもイッセー君に聞いた方が……あれ?イッセー君?」


 僕はイッセー君に話を振ろうとしたんだけど、彼の姿は何処にも見えなかった。


「皆、イッセー君は知らない?」
「さっき台所にお水を飲みに行かれましたが……」
「ちょっと遅いですね」


 僕の質問にアーシアさんが台所に向かったと話してくれた。でもルフェイさんの言う通りちょっと戻ってくるのが遅いね。


「ガァウ!」
「テリーが叫んでいます!」
「行ってみよう!」


 するとテリーが大きな声で吠え始めたので僕達は急いで台所に向かった。


「イ、イッセー先輩!?」


 そこには床に倒れているイッセー君がいた。テリーはこれを僕達に伝える為に吠えたのか!


「イッセー君、しっかりするんだ!」
「イッセーさん!今回復します!」
「先輩!大丈夫ですか!先輩!!」


 僕はイッセー君を抱き起してアーシアさんが回復の光をイッセー君に浴びせる。小猫ちゃんは心配そうに彼の手を握って声をかける。


「ど、どうしたの!?」
「まさかコカビエルとの戦いで受けた傷が開いたのではないか!?」


 イリナさんとゼノヴィアさんも心配そうな表情を浮かべてイッセー君を見ていた。


「は……」
「イッセー先輩!どうしたんですか?」
「何処か痛むんですか!?」
「は……ら……」
「腹?お腹が痛いのかい、イッセー君!」
「腹……減った……」


 イッセー君の呟きに僕達は大慌てになってしまった。これはマズいぞ……!!


「た、大変です!早く何か食べさせないと!」
「食材を持ってくるんだ!早く!」
「み、皆?どうしてそんなに慌てているの?」
「たかが腹が減っただけだろう?何もそんな慌てなくても……」


 僕達は事情を知っているから慌てているが、二人は知らないので首を傾げていた。


「イッセー君の体内にはコカビエルがパワーアップした原因であるグルメ細胞があるんだ」
「えっ、イッセー君もソレを持っていたの!?」
「なるほど、赤龍帝とはいえ人間にしては強すぎると思ったが兵藤一誠もグルメ細胞とやらを持っていたのか」
「はい、ですがグルメ細胞にも弱点があってカロリーを常人よりも遥かに多く消耗してしまうんです。だからこのままだとイッセー先輩は栄養失調で死んでしまいます」


 僕と小猫ちゃんの説明を聞いた二人は、事の重大さを理解して顔を青くしていた。


「た、大変じゃない!?なら早く何か食べさせないと!?」
「いえ、こっちの世界の食べ物では栄養が足りません。ここは一度グルメ界に戻って食材を食べさせましょう!」


 イリナさんが慌ててイッセー君に何かを食べさせようとするが、ルフェイさんは一度グルメ界に戻って食材を食べさせた方がいいと話す。
 確かにこっちの世界よりもグルメ界の食材の方が栄養も高いし量も集めやすいからね。


「ならイッセー先輩は私が運びますね!」


 戦車の駒の特性である怪力を持っている小猫ちゃんは250㎏はあるイッセー君の体を持ち上げる、そしてシュウが入っているケースを置いているイッセー君の部屋に向かった。


「僕達も行こう!」
「はい!」


 僕達も続いてイッセー君の部屋に向かう。ゼノヴィアさんとイリナさんは初めて見るシュウに驚いた表情を浮かべた。


「なんだ?この虹色に光る蝶は?」
「すっごい綺麗……」
「この子がグルメ界への鍵を握っているんですよ。では皆さん、手をつないでください」


 驚く二人にルフェイさんが声をかけて全員が手をつなぐ、そしてルフェイさんがシュウの入っているケースに手をかざすとシュウが強く光り出した。


「な、なんだ!?」
「きゃあ!」


 あまりの眩しさに目を塞ぐゼノヴィアさんとイリナさん、そして光が収まると僕達はイッセー君のスイーツハウスの寝室に立っていた。


「なっ!?何が起きたんだ!?」
「目を開けたらお菓子の家にいるなんて、これは夢なの?」
「いいえ、これは夢じゃないんですよ。外に出てみれば分かります」


 そして二人を案内しながら僕達は外に出る、そこには幻想のような世界が広がっていた。


「……」
「……」


 綿菓子の雲にチーズの岩、クッキーの木にチョコの湧き出る泉、チーズラビットを追いかける五ツ尾オオワシ、近くの池ではねるシマウマエビ、飴で出来た花畑にひらひらと飛んでいるポテトチップスの蝶々の姿……改めてじっくり見てみると本当に絵本の中のような世界に見えるよ。
 そしてそれを見た二人は言葉を失っていた。


「信じられない、こんなおとぎ話のような世界が存在するなんて……」
「これがグルメ界なの……?」
「ふふっ、ゼノヴィアさんとイリナさん。ようこそ、グルメ界へ!」


 ルフェイさんがウィンクしながら二人にようこそと挨拶をする。いやぁ、懐かしいね。僕達も最初はあんな反応をしたものだ。


「ルフェイさん、挨拶は後回しにしてイッセー先輩を!」
「大丈夫ですよ、ここなら沢山食材をだせますから」


 焦る小猫ちゃんに僕達はイッセー君の状態を思い出してハッとしながらルフェイさんを見る。食材を出せるという事は何処かにしまっているって事なのかな?


「私はこういう時の為に沢山の食材を保管していたんです、今からそれを出しますね」


 ルフェイさんは近くの地面に魔法陣を出現させると何かの呪文を呟き始めた、そして呪文を唱え終えると魔法陣が光り輝きそこから沢山のグルメ食材が現れた。


「おおっ、ストライプサーモンにプリンウニ!オーガツオにイカマグロもあります!」
「小猫ちゃん、涎出てるよ……」


 自身の好物である魚介類を見た小猫ちゃんは目を輝かせながら涎を出していた。


「これがグルメ食材!なんと食欲をそそる匂いだ……!」
「うわぁ……!見た事もない食材がいっぱいある!」


 ゼノヴィアさんとイリナさんも初めて見るグルメ食材を見て涎を出していた。


「あはは、食べてもいいですがまずは師匠からですよ。小猫さん、師匠をそこに座らせてもらえますか?」
「分かりました」


 小猫ちゃんがイッセー君を食材の山の近くに座らせる、するとさっきまでグッタリしていたイッセー君が鼻をクンクンとさせるとガバッと立ち上がって目を輝かせていた。


「め、飯の匂いだ……!!」


 さっきまで死にそうな表情をしていたのに、今では目がランランと輝いて涎を出していた。


「この世の全ての食材に感謝を込めて……頂きます!」


 イッセー君は近くにあったアーモンドキャベツを手に取ると、ボリボリッとかじりついた。


「うんめぇ―――!アーモンドのような食感とこの気持ちのいい歯ごたえ!最高だな!」


 アーモンドキャベツをあっという間に食べたイッセー君は、次にストライプサーモンに骨ごとかじりついた。


「くはぁ―――!ストライプサーモンは脂がのっていて美味い!身もプリプリしてていい感じだ!」


 そして次々に食材を平らげていくイッセー君を見ていたら僕達は安心して笑みを浮かべた。やっぱりイッセー君はこうじゃないとね。


「わ、私、もう我慢できませぇん!!」


 小猫ちゃんはそう言うと近くにあったオーガツオと醤油バッタを手に取った。


「オーガツオと醤油バッタ!ルフェイさん!」
「はーい、任せてください」


 魔法で異空間から取り出したお皿を受け取った小猫ちゃんはお父さんの形見である包丁をリュックから取り出すと醤油バッタの背中にある醤油を取りお皿の上で潰した、そしてオーガツオを包丁で丁寧に切って刺身にする。


「出来ました、オーガツオのお刺身です。それでは……はむっ」


 小猫ちゃんはオーガツオの刺身に醤油を付けてパクリと食べた。


「はうっ、顔は怖いオーガツオですが味わいは繊細で奥深いです。はにゃあ……♡」


 うっとりとしながらオーガツオの刺身を食べる小猫ちゃん、その顔は実に幸せそうで見ていると僕もお腹が空いてきてしまう。


「次はイカマグロを頂きましょう。トロも好きですがやっぱりマグロは赤身ですよね」


 ルンルンと手際よくイカマグロをさばいていく小猫ちゃん、前よりも手際が良くなっているね。


「出来ました、イカマグロの盛り合わせです。赤身に中トロ、大トロにイカの刺身……これは気分が上がりますね♪」


 小猫ちゃんはまず赤身から食べた。


「んっ、噛めば噛むほど魚の旨味が溢れてきます♡そして次は中トロを……ん―――!!口に入れた途端にトロけてしまうこの脂!最高です!次は大トロ……の前にお口直しにイカの部分をはむっ……コリコリとして実にあっさりとした味わいです。そして最後に大トロをはむっ……ああっ、幸せですぅ、言葉にできない程の美味さ……天国はここに在ったんですね……♡」
「なんて幸せそうな顔をしているんだ、そんなにも美味しい物なのか?」
「ううっ……ねえ小猫ちゃん、私達にもそれを分けてくれないかしら?」



 コロコロと表情を変えながらお刺身を食べる小猫ちゃんを見ていたゼノヴィアさんとイリナさんは、辛抱堪らなくなったのか小猫ちゃんにお刺身を食べさせてほしいと頼んだ。


「ふふっ、勿論ですよ」


 小猫ちゃんは笑顔で承諾すると二人にイカマグロのお刺身を差し出した。


「う、美味い!こんなに美味い魚を食べたのは初めてだ!」
「どうしよう、こんな贅沢したら主に怒られてしまうわ。でも止められない……♡」


 初めて食べるグルメ食材の味に、二人はすっかりはまってしまったようだ。


「祐斗さん、ちょっと手伝ってもらってもいいですか?」


 小猫ちゃん達を見ていたボクに、ルフェイさんが声をかけてきた。


「どうしたの、ルフェイさん?」
「蟹ブタやねぎま鳥などのお肉を焼きたいので火を起こせる魔剣を作ってくれませんか?私の魔法でもいいんですけど師匠が食べる分となるとかなり焼かないといけないので」
「なるほど、それだったらお安い御用だよ」


 僕はルフェイさんと協力して蟹ブタやプチ玉牛などの肉類を焼いていく、そしてアーシアさんは近くの炊飯器でプラチナ米を炊いていた。
 因みに電気は僕の魔剣で作っている、でも最近こういう使われ方ばかりしているような気がするなぁ、まあ別にいいんだけどさ。


「皆さん、お肉が焼けましたよー」
「う、美味い!このベーコンのような野菜、野菜なのに肉汁が溢れてくるぞ!」
「この黄金のバナナ、とっても甘くてジューシィだわ!」


 ルフェイさんが皆に声をかけるがゼノヴィアさんはベーコンの葉を、イリナさんはゴールデンバナナをそれぞれ幸せそうな顔をして食べている。食べるの早いね……


「おおっ!肉か!俺にもくれ!」
「はい!ご飯もいっぱいありますから沢山食べてくださいね」
「私達も負けていられないぞ、イリナ!」
「ええっ、食べて食べて食べまくるわよー!」
「お魚も焼きましょう」


 アーシアさんによそってもらったご飯茶碗を受け取ったイッセー君は、モリモリとお肉やご飯を食べ始める。それに負けじとゼノヴィアさんとイリナさんも食べ始めた。
 小猫ちゃんは肉を食べながら魚も焼いて食べていた、四人共ペースが速すぎるよ。


「あはは、早く食べないと僕達の分が無くなってしまうね」
「そうですね、私達も頂きましょうか」
「そうだね、アーシアさんも一旦食べようよ」
「はい、頂きますね」


 僕達は時間が過ぎるまで思い思いにグルメ食材を食べ続けていた。



―――――――――

――――――

―――


「ぷはぁ!食った食った―――!!」


 あれだけあった食材の山を食べ終えた僕達は、満足感に浸っていた。流石にお腹が苦しいや、我ながらよくこんなにも食べたと思うよ。
 そして最後の食材を食べ終えたイッセー君がそう言うとキョロキョロと辺りを見渡し始めた。


「……ってあれ?ここはグルメ界か?いつの間に戻って来ていたんだ?」


 どうやら食べるのに夢中で、自分がグルメ界にいた事に今気が付いたみたいだね。


「イッセー先輩!」
「イッセーさん!」
「おっとっと」


 意識を取り戻したイッセー君を見た小猫ちゃんとアーシアさんは、感極まったのか泣きながら彼に飛びついた。


「イッセー君、君はカロリー不足で倒れてしまったんだよ。僕達は君をグルメ界に運んで食材を食べさせたんだ、回復してくれたみたいでホッとしたよ」
「そうだったのか……悪い、皆に迷惑をかけてしまったな」
「そんなことはないよ、君が僕にしてくれたことに比べればこんなことは……」


 彼には本当に助けられてばかりだ、鍛えてもらったしいつも僕達の事を気にかけてくれ更には復讐にだって手を貸してくれた。そんな彼の為なら僕はなんだってできる。


「イッセー君、僕、皆と会えたよ。仲間たちと……僕ね、皆が唯一人生き残った僕を恨んでいるんじゃないかって馬鹿な考えもあったんだ。でもそんなことなかった、皆僕の幸せを願ってくれていたんだ」
「そうか、いい家族だったんだな」
「うん、本当に、素晴らしい家族だったよ……」


 あれっ、どうして今になって涙が出ちゃったんだろう?情けないなぁ……


「ごめん、なんか急に涙がでてきちゃって……男は人前で涙をみせるものじゃないって前に言われたのに」
「いいさ、誰かを思って流す涙は恥ずかしい事じゃない。本当によく頑張ったな、祐斗」
「イッセー君……」


 僕は本当に恵まれていると思う、大切な家族を二つも持つことが出来たんだから。


「イッセー君、僕はもっと強くなるよ。部長や皆を守れるくらいに……そしていつか君の隣に立ちたい」
「それなら俺も負けてられないな、お互い切磋琢磨しながら高め合っていこうぜ。ダチ公」
「うんっ!!」


 突き出されたイッセー君の拳に僕は自分の拳をコツンとぶつけた。


「ぐすん、こういう男の友情はいいものですね……」
「そうね、まさに青春だわ」


 女子たちの暖かい視線を受けた僕はちょっと顔を赤くしてしまった。イッセー君もコホンと咳払いをするとゼノヴィアさんとイリナさんに話しかけた。


「えっと……ゼノヴィア、イリナ、挨拶が遅れたがようこそグルメ界へ。俺はお前達を歓迎するぜ」
「兵藤一誠、もう大丈夫なのか?」
「ああ、もうすっかり元気だ。心配かけて悪かったな」
「良かった」


 ゼノヴィアさんの言葉に頷くイッセー君、それを見たイリナさんは安堵の表情を浮かべた。


「どうだ、グルメ食材の味は?気に入ったか?」
「ああ、実に美味なる物だった。あんな美味しい物は生まれて初めて食べたよ」
「それは良かった。故郷の食べ物を褒めてもらえるとこっちも嬉しいぜ」
「故郷?君はグルメ界の人間なのか?」
「正しくは第二のかな、それについても今から話すよ」


 イッセー君はその場に胡坐をかくと、二人に真剣な表情で話しかけた。


「二人とも、いきなりで悪いが今から話す事は絶対に口外しないと約束してくれ。下手をすれば向こうの世界で大規模な……それこそ世界を揺るがしかねない戦争を引き起こしかねない事を話す」
「そ、それ程までの事なのか?」
「ああ、これが漏れれば間違いなく争いが起きる。例えミカエル殿にも話しては欲しくない」
「……」
「……」
「約束してくれるか?」



 イッセー君は暫く彼女たちを見つめていたが、ゼノヴィアさんとイリナはお互いに頷きあうとイッセー君に向かって首を縦に振った。


「分かった、君には大きな借りがある。このことはミカエル様にも報告はしない」
「だからお願い、この世界の事を教えてほしいの」
「分かった、なら話そう。この世界の事を……」


 それからイッセー君はこの世界が異世界という事、ここは人間界で未開の地がグルメ界であること、そこには想像も絶するような生き物と地獄のような環境が支配する世界だという事、IGOの事、美食屋の事、グルメ細胞の事など知りうる情報を全て彼女たちに話した。


「……………」
「……………」
「簡単に話すとこんなところだ。何か質問はあるか?」
「いや、質問も何もあまりにも規格外の内容についていけてないと言うか……すまない、上手く言葉が出てこないんだ」
「確かにこんなこと口外できないわね、特にグルメ細胞は教会の上層部が知ったら何があっても手に入れようとする奴が現れるわ」


 あまりにもスケールの大きな話に二人はかなり混乱しているようだ。無理もないよ、僕達だって最初はあんな感じだったからね。


「グルメ界の事はこれでお終いだ、次は俺について話すよ」
「あっ……」


 イッセー君が自分の事を話すと聞いたイリナさんは少し不安げな表情を浮かべたが二人はイッセー君の話を黙って聞きはじめた。


「さっきゼノヴィアが俺にこっちの世界の人間かと質問したが答えは違う。俺は……元々駒王町に住んでいたんだ」
「!!」
「駒王町に……だと?」


 イッセー君の言葉を聞いたイリナさんは目を見開いて驚きゼノヴィアさんは怪訝そうな表情を浮かべる……いよいよ話すんだね、イッセー君。


「ああ、俺は幼い時に両親を亡くし施設に入れられることになった。でも親を失ったショックで施設を抜け出して逃げたんだ。ただ夢中で走り続けた俺は気が付くと見知らぬ森の中にいたんだ。そして俺はそこで異次元七色チョウに出会ったんだ」
「異次元七色チョウ……シュウとマイの事か?」
「あの時のがシュウとマイだったのかは分からねえ。とにかく俺はそのチョウに何気なく触れてしまいグルメ界に飛ばされたんだ。その後はさっき話したIGOの会長に拾われて美食屋になったって訳さ」
「なるほど、君は波乱万丈な生き方をしていたんだな。イリナもそう思わないか……イリナ?」


 ゼノヴィアさんはプルプルと震えているイリナさんに気が付いて声をかける、でもイリナさんはそれに反応することはなくイッセー君に声をかけた。


「……ねえイッセー君。昔駒王町に住んでいたって言ってたよね、それは何年前の話なの?」
「俺が5歳の時までは駒王町にいたから12年前くらいだな」
「!ッ……じゃ、じゃあさ、その時近所の近くに男の子みたいな恰好をした女の子はいなかった?」
「……」
「イリナ、どうしたんだ?」


 震えた声でイッセー君に質問するイリナさん、彼女も本当は感づいているのかもしれないね。でもそれを言葉にする事が難しい様だ。


「……イリナ、俺が学校の校庭でこう言ったのは覚えているか?大切な幼馴染を死なせたくなかったと……それが俺の正体の答えだ」
「……じゃあ君は私の知るイッセー君なの?」
「……そのペンダント、今も持っていてくれたんだな。嬉しいよ、イリナ」
「ッ!!」


 イッセー君がイリナさんの事をイリナと呼んだ、するとイリナさんは信じられない物を見たような眼差しをイッセー君に向ける。口を右手で押さえポロポロと涙も流れていた。


「イ…ッセー…君?」
「ああそうだ、もう隠すことは無い。俺はイリナが知るイッセー……神崎一誠だ」
「……ほ、本当にイッセー君……?」
「信じられないか?そりゃずっとほったらかしにしておいて今更俺が神崎一誠なんて言われても受け入れがたいよな。事情があったとはいえ直に本当の事を話さなくてすまなかった」
「ホントに本当のイッセー君……?」
「ああそうだ、幼い頃虐められていた俺を助けてくれたイリナのお嫁さんになるって約束したイッセーだ」
「あ…ああ……イッセー……イッセー君!!」


 イリナさんはバッと勢いよく立ち上がると胡坐をかいていたイッセー君に飛びついた。


「イッセー君!私の……私の大切なイッセー君!本当に君なんだね!!」
「ああ、そうだよ。お前の幼馴染のイッセーだ」
「夢じゃないよね、本当にイッセー君だよね!?」
「夢なんかじゃないさ、俺はここにいるよ」


 イッセー君がイリナさんの頬をそっと撫でて涙を指で拭った。するとイリナさんはその手を両手で包み込むように握りしめる。


「あったかい……私には分かるよ、この手はイッセー君のだ……私には分かるもん……ずっと昔に握っていた暖かい手……ようやく出会えたんだ……うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」


 イリナさんはより強い力でイッセー君を抱きしめた。イッセー君もイリナさんの背中に手を回して強く抱きしめる。


「会いたかった!会いたかったよ、イッセー君!」
「ごめんな、イリナ」
「いいの!こうして会えただけで私は嬉しいの!だから今は抱きしめて!絶対に離れないように強く……!」


 イリナさんの言葉に頷いたイッセー君は、更に強い力でイリナさんを抱きしめた。


「……一体どういう事なんだ?兵藤一誠は神崎一誠だった?」
「詳しい事情は後で話しますけどその通りです。イッセー先輩も本当は話したかったんでしょうけどグルメ細胞の事や自分の事を知ればイリナさんにいらぬ危険が迫るんじゃないかって言えなくて……でもようやく二人は再会できたんです」


 困惑するゼノヴィアさんに、小猫ちゃんが説明をする。


「……そうか、イリナを悲しませた奴だから一発くらいは殴ってやろうと思っていた男が彼か。ふっ、あんな話を聞いてしまってはそれもできないな」
「ゼノヴィアさんは本当にイリナさんの事が大切なんですね」
「ああ、大切な親友だ……良かったな、イリナ」


 イッセー君とイリナさんを見て微笑むゼノヴィアさんはまるで長年にわたって叶えられなかった願い事をようやく叶えることが出来たような晴れ晴れとした表情で笑みを浮かべていた。
 あの二人をみれば、僕達も同じように心から良かったって思えるよ。


「……イッセー君、私ね、イッセー君にまた出会えたらこれだけはちゃんと言いたかったの……お帰りなさい、イッセー君」
「……ただいま、イリナ」


 僕達はイリナさんが泣き止むまで二人の事をそっと見守り続けた。


 
 

 
後書き
 これでエクスカリバー編は終わりです。次回はリアス達と話し合いをして遂に一龍に会いに行きます。 
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