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誇りにすべき父

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第三章

「モンスターがやけに多いのう」
「強いモンスターはいませんが」
 織田も言ってきた。
「ですがそれでもですね」
「おう、数は多いのう」
「初球の冒険者が戦う様なモンスター達ばかりでも」
 それでもというのだ。
「こうまで数が多いですと」
「どうにも難儀ぜよ」
「アンコールワットは神聖な筈ですが」
「これは気になるのう」
「全くです」
「あの、私は」
 センはほぼ戦っていない、それで正岡達に申し訳なさそうに述べた。
「何もしなくても」
「いいぜよ」
 正岡は笑って彼に答えた、その間にも短筒を動かし術を放っている。
「わし等もわし等でじゃ」
「ここに来たかったからですか」
「だからぜよ」
 それでと言うのだった。
「気にしなくていいぜよ」
「そうですか」
「とにかくこの奥に向かってぜよ」
 そのうえでともだ、正岡は話した。
「お父さんを探すぜよ」
「そうすべきですね、ただ」
「生きてるとはじゃな」
「思えないですが」
「まあそれでもじゃ」
 沈んだ顔で言うセンにだった、正岡は励ます声をかけた。
「ここはぜよ」
「先に進んでですか」
「そうしてぜよ」
「父を見付ければいいですね」
「そうぜよ、そしてぜよ」
 供養もとだ、正岡は言外で述べてだった。そのうえで。
 多くのモンスター達を倒しつつ先に先にと進んでいった、そして遂に地下迷宮の最下層の最深部まで来た。そこは仏教の祭壇だったが。
 崩れていた、しかもだった。
 石の瓦礫の下に一匹の二十メートルがある白い大蛇がいた。瓦礫はあまりにも重く大蛇が動きが出来なかった。
 その大蛇を見てだ、正岡は言った。
「生きとるみたいぜよ」
「そうですね」
 織田もその大蛇を見て述べた。
「まだ」
「どうも悪い蛇じゃないみたいぜよ」
「これまで二人で合わせて千体のモンスターを倒していますが」
 この地下迷宮に入ってとだ、織田は正岡に話した。
「この大蛇は、ですね」
「特にじゃな」
「悪い感じはしませんね」
「仏教じゃからのう」
 正岡は右目を瞑って顎に着物の前から右手を出してそのうえで自分の顎に手を当てて考える顔になって述べた。
「軍荼利明王さんのあれか?」
「ああ、あの明王の蛇ですか」
「それかのう」
「そうだ、私は軍荼利明王様にお仕えしている」
 ここで蛇も言ってきた。
「そうしている蛇だ」
「おお、そうじゃったか」
「そしてだ」
 蛇は正岡に応えてさらに話した。
「よくここまで来たな」
「正直モンスターの多さに困ったぜよ」
 正岡は蛇の言葉にこう返した。
「まっことのう」
「だがそなた達はここまで来たな」
「それはその通りだな、そしてモンスターが多く出た理由はな」
「祭壇壊れとるのう」
 蛇の後ろ、壊れたそこを見ての言葉だ。見れば確かに何かを祀る様な場所である。それが崩れてしまっている。
「そこが壊れたからじゃな」
「そうだ、アンコールワット自体は御仏の力が存在しているが」
「だからモンスターも出んのう」
「だが地下のこの迷宮はな」
 そこはと言うのだった。 
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