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誇りにすべき父

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第一章

                誇りにすべき父
 正岡龍馬と織田月心は今カンボジアにいた、しかも二人が今射る場所はカンボジアの象徴と言っていいアンコールワットだ。
 密林の中にある東南アジア仏教の石造りの遺跡を観つつだった、正岡は右目を瞑って顎に右手を当てた姿勢でこんなことを言った。
「わしは起きた世界ではアンコールワットどころかじゃ」
「カンボジア自体にですね」
「行ったことがないぜよ」
 自分の隣にいる織田に答えた。
「一度もじゃ」
「それは拙僧もです」
「おまんもじゃな」
「はい、タイは行ったことがあります」
「わしもじゃ、わしはベトナムも行ったことがあるわ」
「あちらにもですか」
「家族旅行で中学の時に行ったんじゃ」
 それで両国に行ったことがあるというのだ。
「お父んが旅好きでのう」
「それでタイやベトナムに」
「東南アジアのツアーに家族で参加してじゃ、インドネシアにも行ったわ」
「そうでした」
「三国共ええとこじゃった、しかしじゃ」
「カンボジアにはですね」
「起きた世界では行ったことがなくてじゃ」
 それでと言うのだった。
「アンコールワットを観てもじゃ」
「写真でのことですね」
「そうぜよ、それでじゃ」
「今御覧になられて」
「嬉しいぜよ、それでわしの神託はここでのことじゃが」
「それでもですね」
「そうじゃ、遺跡はあるが」  
 この世界でもアンコールワットは見事なものだ、芸術と言ってもいい壮麗さで密林の中にあり二人にその姿を見せている。
 二人以外に観光客達も来ている、だがそれでもだ。
 遺跡を観つつだ、正岡は織田にどうかという顔で言った。
「しかし神託はどういったもんかのう」
「このアンコールワットで何かあるのでしょうか」
「どうじゃろうのう」
「そこがわからないですね」
「アンコールワットに地下迷宮があってじゃ」
 正岡は考えつつ織田に話した。
「それでじゃ」
「その中に入ってですね」
「モンスター退治かのう」
「そうかも知れないですが」
「それでもじゃな」
「はい、まだ何もわかっていないですね」
 神託でここに来ただけでとだ、織田も正岡に考える顔で述べた。
「そうですね」
「ううむ、ならじゃ」
 正岡は織田に考える顔のまま述べた。
「ちょっとアンコールワットの中に入ってじゃ」
「それで、ですね」
「調べてみるか」
「そこから神託がわかるかも知れないので」
「そうしてみるかのう」
「そうしますか」
 織田も正岡に同意してだった、そのうえで。
 二人でアンコールワットに入ろうとした、だがここでだった。
 二人を呼び止める声がした、声の方を振り向くと奇麗なコバルトブルーの肌にカンボジアの民族衣装を着た蛙人の青年がいた。青年は二人を見て声をかけてきた。
「お二人共アンコールワットの中に入られるのですか?」
「ああ、ちょっと考えるところがあってのう」
 正岡は青年に顔を向けて答えた。
「それでじゃ」
「そうですか、実は私もです」 
 青年は礼儀正しい態度で正岡に応じた。
「これからです」
「中に入ってか」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「父を探そうと思っていまして」
「まさかと思うが」
 正岡は馬のその顔をいぶかしめさせて青年に尋ねた。 
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