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戦国異伝供書

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第二十三話 東国入りその十二

「その気構えを見せればな」
「やがて降りますな」
「何時までも籠城出来る筈がありませんから」
「自然と」
「そうじゃ、あと兵達には賑やかに酒や舞楽を楽しませよ」
 信長はこうも命じた。
「それを城の中の者達に見せるのじゃ」
「我等の余裕を、ですな」
「籠城で強張っている者達に」
「そうしてその心を惑わせる」
「戦をする気も削いでいきますな」
「そういうことじゃ、何度も言うが城を攻めるよりもじゃ」
 この場合は小田原城だ、難攻不落と言われる。
「人を攻める、それが上手な戦の仕方じゃ」
「だからですな」
「ここはあえて宴も開き」
「そうして北条家の者達のやる気を削いでもいき」
「惑わしてもいきますな」
「そういうことじゃ、あとやがて城に敵が攻めてくる」
 築かせた付城にというのだ。
「その際の用心はしておくぞ」
「そうして退けるのですな」
「敵が攻めてきても」
「付城を壊されなけば勝てるので」
「そうしていきますな」
「そういうことじゃ、この戦は守って戦い宴も楽しんで」
 そうしてというのだ。
「敵の心を攻めていくぞ」
「わかり申した」
「ではその様にして、ですな」
「北条家を降す」
「そうしていきますな」
「武田、北条は一戦で決めた」
 長篠、川中島でそれぞれだ。両者の切り札を打ち破りその軍勢と完膚なきまでに倒しての会心の勝利でそれで完全に勝負あったと敵味方だけでなく天下に知らしめてだ。
「毛利は攻め込み備中高松城で決めたが」
「この度は、ですな」
「じっくりと攻めていく」
「守りも固め」
「急がずにですな」
「そうして攻めていく、よいな」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 信長は実際に兵達に宴も楽しませその様子を小田原の者達にも見せてそれで彼等の心を攻めてだった。氏康の夜襲も凌ぎ。
 それでだ、遂にだった。
 北条家も降らせた、氏康自身が己の本陣に来ると信長は彼も家臣とした。そうして彼もまた大名としてだった。
 関東一円を所領とした、だが。
 刃城等も領地として関東の大名や国人達も降ったがある報を聞いて主な家臣達を集めて暗い顔で述べた。
「関東は手中に収めたが」
「それでもですな」
「まだ戦は続きますな」
「その様ですな」
「今度は伊達家ですか」
「伊達家が来ますか」
「その様じゃな、今は東北攻めは考えていなかったが」
 それでもと言うのだった。
「あちらが今すぐ動くならな」
「それならですな」
「こちらとしてもですな」
「受けずにいられませぬな」
「戦わずには」
「そうじゃ、こうなれば伊達家と戦ってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「よいな」
「はい、次はですな」
「東北を手中に収めますな」
「欧州を暴れ回る伊達家を降し」
「そのうえで」
「他の家にも人をやって降るかどうか聞くが」
 それだけでなくというのだ。 
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