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仙女の正体

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第一章

               仙女の正体
 幸田吉三郎と永井麻友の二人は共に試練を受ける旅を続けていた、その途中幸田は麻友に今着いた中国の湖南省のある村について言った。
「ここで試練があるとかな」
「思えないよね」
「ああ。どんな試練なんだ?」
「見たところ平和な村だけれどね」
「果たして何があるか」
「ちょっとわからないね」
「ああ、しかし試練があることはな」
 そのこと自体はとだ、幸田は麻友に話した。
「神託でそう出ているからな」
「間違いないんだよね」
「まあな、平和だってのはな」
「一見でね」
 それでとだ、麻友は村をよく見た。そしてだった。
 すぐに怪訝な顔にだってだ、幸田に言った。
「吉君、さっきの見たところって言葉ね」
「ああ、訂正しねえとな」
「いけないね」
「そうだね」
「何かおかしいな」
「警戒してる感じがするね」
「これは何かあるよな」
「そうだね、魔物でも出るのかね」
「ちょっと村の人達に話を聞くか」
「そうした方がいいね」
 二人でこう話してだ、そしてだ。
 幸田と麻友は二人でだった、村人達に話を聞いた。,村人達は二人にこう話した。
「どうしたもこうしたもないよ」
「最近村で子供達が攫われてるんだよ」
「一ヶ月に一度位ね」
「それでいつも後で身体に血が一滴もない死体になって出てきてね」
「もう何人の子が犠牲になって」
「血、ねえ」
 そう聞いてだ、麻友は眉を顰めさせて言った。
「中国で血を吸うモンスターっていうとキョンシーだけれど」
「子供は首を引っこ抜かれてねえよな」
 幸田は村人にこうも聞いた。
「そうした吸い方か?」
「いえ、首の前を切られて」
 村人の一人が答えた。
「そこからです」
「血を一滴残らずか」
「採られてます」
「喉の前を切ってかい」
「そうなんです」
「子供達の手足を縄で縛って動けなくしたうえで」
「成程な」
 幸田はその話を聞いて納得した顔で頷いた、麻友と目を合わせると彼女もまた納得した顔で頷いた。
 そのうえでだ、二人は村人達の話をさらに聞いた。村人達は口々に話した。
「この近くの森におかしな仙人がいます」
「女の先任なんですが」
「若い狐人の娘です」
「そいつが絶対にやってます」
「あいつが子供達を攫って血を吸ってるんです」
「間違いありません」
 村人達は二人にその森の方を忌々し気に見て話した。
「あいつが来てから子供達がおそわれてます」
「そうなってますから」
「間違いないです」
「あの仙人の仕業です」
「それで、ですが」
 村長らしき白い髪の毛のドワーフの老人が出て来た、ドワーフらしいがっしりとした体格と立派な髭の中国明代の服を着た老人だ。
「お二人は冒険者とお見受けしましたが」
「ああ、日本から来たな」
「旅の冒険者だよ」
 二人は自分達の素性を隠して答えた。
「二人でこの中国まで来てね」
「一稼ぎしようと思って来たんだ」
「そうですか、それではです」
 それならとだ、村長は応えてだった。 
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