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奇妙な僧正

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第四章

 その僧正を遠くから見てだ、幸田は一言で言った。
「あれは盗人だな」
「おわかりですか」
「ああ、顔は僧正さんと同じだよな」
「僧正は虎毛の猫人であられまして」
「そうだよな、しかしな」
「顔は同じでも」
「物腰でわかるんだよ」
 こう言うのだった。
「坊さん、僧侶と盗人は動きが違うんだよ」
「動きですか」
「そうさ、僧正さんはずっと修行されてたよな」
「はい、僧籍に入られてから」
「だよな、畑仕事とか肉体労働はしててもな」
 禅宗の寺は自給自足が基本だ、だから僧侶も畑仕事に務めるのだ。
「隠れたり探ったりとかな」
「そうしたことは確かに」
「無縁だろ、盗人っていうかシーフは隠れて探るのが仕事でな」
 シーフという職業はというのだ。
「それに合わせた動きになるんだよ、それであの僧正さんはな」
「シーフの動きですか」
「しかもあれは相当タチの悪いことしてきたな」
 シーフの中でもというのだ。
「山の中を歩いてる感じだな、傍に色々知恵付けてる奴はいても」
「それでもですか」
「盗人は盗人だ、これでわかるな」
「では」
「ああ、試しに寺の坊さんで学問のある人で囲んでな」
「仏門のことで聞いていく」
「それこそ隅から隅までそうしてみな、禅宗だろ」
 この宗派についての知識からもだ、幸田は話した。
「それこそ禅問答って言うよな」
「はい、それは」
 聡明はその禅宗の僧侶だ、当然ながら幸田よりも知識は相当に深い。そのことから幸田に対して答えた。
「拙僧も修行があり」
「それで知ってるよな」
「他ならぬ僧正様から教えて頂いたことも多くあります」
「じゃあな、夜にでもな」
「多くの僧侶達で囲んで」
「そしてな」
「仏門のことを聞けば」
 それでと言うのだった。
「宜しいのですね」
「いいぜ、坊さん達の中でも深いことについて聞けばな」
「化けの皮が剥がれますか」
「そこからは任せときな」
 幸田は聡明に満面の笑みで述べた、そしてだった。
 聡明は寺の僧侶達の中で学問のある僧侶や尼僧達を集めそのうえで僧正に対して仏門について聞きたいと称して色々聞いた、僧正は最初は難色を示したが僧正として仏門のことを何でも答えられ答えてきたと聡明が言ったので。
 渋々ながら応じた、この時彼は後ろに今寺の中にいる怪しい僧侶達を全て置いた。そして幸田と麻友は聡明達の方に入った。
 そのうえでだ、聡明達は口々に詰問する。僧正だけでなく怪しい僧侶達も答えていったが次第にだった。
 返答に窮し聡明の禅問答については誰も答えられなかった、ここで幸田は内心笑みを浮かべて言った。
「拙僧は先日僧正様に答えて頂きましたが」
「そ、そうであったか」
「はい、それでなのですが」
 ここでだ、幸田はカマをかけて言った。
「僧正様の頭の後ろですが」
「どうしたのじゃ」
「何故傷があるのですか」
「何っ!?」
「その盗人が逃げた時の様に受けた様なお傷は」
「まさか」
 怪しい僧の一人が思わず声をあげた。
「我等のことが」
「馬鹿、言うな」
「そんなことを言うな」
「口を慎め」
 周りからすぐに言われた、だがここでだった。
 幸田は今度は彼等にさらに言った。 
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