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奇妙な僧正

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第一章

               奇妙な僧正
 幸田吉三郎と永井麻友は今神託で幸田の試練の場所だという下関にいた、幸田は下関に入るとすぐに麻友に言った。
「下関っていったらあれだよな」
「そうだね、河豚だね」
 まさにとだ、麻友は幸田に笑顔で答えた。
「何といっても」
「そうでい、だからまずはな」
「河豚を食べてだね」
「試練に挑もうと思うんだがどうでい」
「いい考えだね」
 麻友は幸田に笑顔で答えた。
「じゃあね」
「ああ、まずは河豚食ってな」
「下関のお役所に入ってね」
「そこを宿にしてな」
 そのうえでというのだ。
「試練にあたろうか」
「それがいいね」
「じゃあまずはな」
「河豚だね」
「それ食おうな」
「鍋にお刺身に唐揚げに皮の酢のものにね」
「白子もな、河豚はとにかく何処も美味いからな」
 毒はある、だがその恐怖を凌駕する美味さがあるというのだ。
「それじゃあでい」
「二人で河豚食べようね」
「そうしような」
 二人でこう話してだった、実際に二人はまずはお忍びで河豚の鍋や刺身、そしてその他の料理と酒を楽しんだ。そうしてだった。
 二人で下関の役所に入りそこを宿とした、その時は夕方だったが。
 風呂上りで浴衣姿でくつろいでいる二人のところに一人の僧侶が役所に入って来た。一人の役人が二人にそのことを言ってきた。
「この下関の中で特に大きな弦隆寺の僧籍の方ですが」
「おう、相当大きな寺だっていうな」
 幸田は役人に浴衣姿で応えた、隣には麻友もいる。
「禅宗のな」
「その寺の方が今来られてです」
「そしてか」
「市にどうしてもお話したいことがあるとか」
「これが試練じゃないかい?」
 麻友は幸田にそっと囁いた。
「ひょっとして」
「そうだろうな、じゃあな」
「それならだね」
「おうよ、今からな」
 まさにとだ、幸田は麻友に答えた。
「ちょっとおいら達の立場を隠してな」
「そしてだね」
「とりあえず浴衣からスーツに着替えるか」
 役人即ち官吏の服を着ようというのだ、日本が統一した太平洋は官吏の服はスーツや礼装となっているのだ。
「そのうえでな」
「お坊さんに会ってだね」
「話を聞こうな」
「それじゃあね」
 麻友も幸田の言葉に頷いてだ、そしてだった。
 幸田は麻友と共にだった、まずはスーツに着替えた。そうしてその弦隆寺の僧侶と会うことにした。僧侶とは役所の応接の間で下関の官吏ということで会った。僧侶はフランケンの大柄な僧侶であった。
 僧侶は怪訝な顔で小声で二人に話した。
「実は我が舷隆寺がおかしいのです」
「おかしいとはどういうことでい」
 幸田は僧侶に江戸っ子の言葉丸出しで応えた、幸田にとって江戸っ子の言葉は絶対でどうしても出てしまうのだ。
「一体」
「はい、近頃我が寺の僧正様がおかしいのです」
「弦隆寺で一番偉い人だよな」
「はい、その方がです」
 フランケンの僧侶は自分の向かい側の席、文明開化の趣の部屋のソファーに麻友と共に座る彼に話した。
「別人の様になってしまわれたのです」
「別人かよ」
「外見は変わっていません、ですが日々の念仏や修行の形が」
 それがというのだ。 
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