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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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プロローグ

 
前書き
クロスウォーズアドベンチャー…始まります 

 
デジモンカイザー・一乗寺賢のパートナーデジモンのワームモンと、キメラモンによる無差別攻撃による大きな被害と犠牲を払いながらも、マグナモンがキメラモンを撃破し、デジモンカイザーが一乗寺賢に戻ってからしばらく経って、大輔はパートナーのチビモンと共に自宅への帰路についていた。

「今日もお疲れ、チビモン。今日はハンバーグだぜ」

「やったー!!ハンバーグだ!!」

何度もフレイドラモンとライドラモンへの進化を繰り返してデジタルワールドの復旧作業を頑張ったチビモンを労いながらそう言った大輔の言葉にチビモンは大喜びした。

現実世界の食べ物はデジタルワールドの物よりも味も質も良い物が多い。

何せ大輔達からすればありふれたコンビニのおにぎりでさえ美味しいと感じるくらいに。

「それにしても、一乗寺の奴が無事に家に帰ったみたいで良かったぜ…。家の人も心配してたし………出来ればああなる前に止められれば良かったんだけどな…」

「だいしゅけ、賢とワームモンのことを気にしてるのか?」

「ああ、ワームモンが死んで…あいつはようやく止まった。でもあいつを止めるチャンスはいくらでもあったんじゃないかって思うんだ。あいつが俺達の前に現れた時、無茶してでもあいつを捕まえていれば…せめて今より強かったら…」

「だいしゅけ…」

「本当にワームモンが死ななきゃあいつを止められなかったのかな…?」

大輔が小さく呟いた直後に背後から声がかかる。

「止められなかったと思うわ大輔君」

「ヒカリちゃん」

声の主は同じ選ばれし子供の八神ヒカリであった。

「多分、彼は途中で捕まえることが出来ても私達の言葉を聞き入れなかったと思う。全てを打ち壊されてようやく私達の声が聞こえるようになったんだと思うの…」

「………」

ヒカリの言葉に大輔は沈黙した。

確かにあの時の賢は自分以外を認めようとはせずに例えどのような言葉でも自分達の言葉など聞き入れなかっただろう。

「それでも…何とかあいつを止められたんじゃないかなと思うと…」

「どうしてそこまで彼のことで悩むの?」

大輔が優しい性格なのは自分も知っているが、同時に曲がったことや悪事が大嫌いな正義感が強い性格でもあるのだ。

「ん~……信じてくれるか分からないけどさ。あの時、要塞の中で黄金のデジメンタルに触れた時、ほんの少しだけなんだけど一乗寺の記憶が流れてきたんだ。いつも一乗寺そっくりの奴に比べられて、家族の中でさえおまけみたいな扱いを受けて…俺もさ、何だかんだで色々そつなく家事以外はこなせる姉貴がいるから分かるんだよ。兄貴や姉貴の弟としてしか見られない気持ち…」

「…………」

ヒカリは大輔の言葉に沈黙するしかない。

大輔の姉のジュンは何だかんだで壊滅的な家事以外はそつなくこなす人物で、不器用なところがある大輔はジュンと比べられることがそれなりにあった。

ジュンを良く知る人物は殆ど卒業したので今はそうではないが。

「もし俺達が早く出会えていればもしかしたら何か変わったんじゃないかなって…あ、いや、でも、あいつが太一さんのアグモンを操ったりキメラモンを造ってあんなことをしたのは許せないぜ?」

慌てて言う大輔にヒカリは分かっていると言うように頷いた。

「うん、分かってる。大輔君は…優しいね。私はまだ一乗寺賢君を許そうと思ったことない。沢山のデジモンを、みんなを傷付けて、キメラモンのようなデジモンを造った…彼を」

キメラモン

デジモンカイザーが数々のデジモンのデータを組み上げて造り上げた完全体とは思えない程の脅威を振るった人造デジモン。

あの悪魔のようなデジモンは目の前の大輔とチビモンが倒してくれた。

デジモンカイザーとしての力とパートナーデジモンを失って、砂漠を去っていく賢の後ろ姿を見て、自分を含めた殆どの仲間が怒りにも似た感情を抑えられなかったと言うのに大輔は心配そうに賢の後ろ姿を見つめながら叫んでいた。

『………お前、家に帰れ…。お前のことを心配して、待ってる人がいるんだ!帰れよー!!』

大輔のこの言葉を聞いた時にヒカリは何となくだが悟った。

大輔は自分達や兄の太一達が倒すべき敵としてしか見ていなかったデジモンカイザーを同じ選ばれし子供として人間として見ていたことに。

賢が罪を償いたいと言ってきた時は恐らく、明るく笑いながら共に戦う仲間として暖かく受け入れるのだろう。

意識して優しくあろうとする自分とは違い、大輔はまるで呼吸するように人に優しく出来る。

人を受け入れて優しさを与えてばかりの大輔にはそれが当たり前で、それによってどんなに自分が不利な立場であろうと、そんな状況を覆す心の強さもちゃんと持っている。

タケルはその優しさを付け込まれたりして命取りになるんじゃないかと危惧していたが、その優しさや真っ直ぐさがあったからこそあのような奇跡を起こせたのだと思う。

マグナモン

ブイモンがあの黄金のデジメンタルでアーマー進化した聖騎士型のアーマー体デジモン。

その美しい黄金の輝きはキメラモンやデジモンカイザーの闇すら消し去ってしまった。

あれは大輔だからこそ起こせた奇跡なのだとヒカリは思う。

誰もが諦めかけた時、大輔だけは諦めなかった。

希望を見失わず、勇気と友情を力にして危険を省みずに突き進んだ。

そんな彼だからこそ、他人の紋章をまるで自分の紋章のように使うかのような奇跡を起こせた。

自分どころか兄の太一やヤマト、タケルにも起こせない奇跡を…。

ふとマグナモンのことを思い出したヒカリは大輔に尋ねた。

「ねえ大輔君。もうブイモンをマグナモンに進化させることは出来ないの?」

もしマグナモンへの進化があれ以降も使えるなら自分達の最大の戦力になるとヒカリは思ったのだが、大輔は首を横に振る。

「あのデジメンタルはキメラモンとの戦いで完全に消えちまったよ。あのデジメンタルの力は凄え強かったから少し残念だけどさ、でもあれは本当の一乗寺の優しさが俺に力を貸してくれたんだ。紋章は個性なんだろ?あの時感じた優しさが本当のあいつなんだって俺は信じる…そう信じたいよ」

「そっか…でも無理しないでね。大輔君、1人で背負い込んで誰にも言わないで解決しようとするから…」

「………あのさ、それはヒカリちゃんにだけは言われたくないなあ…ヒカリちゃんだって誰にも言わないで無理すんじゃん。それはヒカリちゃんにそっくりそのまま返すぜ」

「ううっ!?」

確かにと今まで黙って聞いていたテイルモンとチビモンは思った。

大輔とヒカリは1人で背負い込んで自分だけで解決しようとする傾向がある。

変なところが似ているなとテイルモンとチビモンは思った。

「お互いに苦労するわね…」

「そうだな…」

互いに顔を見合わせながら、大輔とヒカリに聞こえないように呟く。

「チビモン?」

「テイルモン、どうかした?」

「「いや別に、何でもない」」

チビモンとテイルモンが合わせて言うと大輔とヒカリは疑問符を浮かべながらも自宅へ向かおうとしたのだが。

「ん…?」

空間が捻れるような妙な違和感を感じて上を見上げるチビモン。

「だいしゅけ!ヒカリ!上だ!!」

「え?うわあっ!?」

チビモンが異変に気付いて叫ぶと上から落ちてきた巨大な岩に大輔はヒカリの手を掴んで咄嗟にかわした。

岩はズシンと重そうな音を立てて先程立っていた大輔とヒカリのいた場所に転がった。

後僅かでも遅かったら下敷きになって死んでいたかもしれない。

慌てて岩が落下した上を見上げると、大輔達は空間が捻れているのを見た。

「何だよあれは…?」

「空間が捻れてる…?」

「なあ、テイルモン。あれ、デジタルゲートに似てないか…?」

「ええ、でも…何処かが違うわ」

チビモンとテイルモンはあれはデジタルワールドに関係があるのかと考えた。

突如、空間の歪みから3つの光が降り注いだ。

3つのうち2つは大輔とヒカリのD-3に。

光を吸い込んだD-3は色が変化し、大輔とヒカリのD-3は白い部分が黒に変化した。

見た目の変化はそれだけなのだが、チビモンとテイルモンはD-3に吸い込まれてしまい、驚く間も抵抗する間もなく大輔達は猛烈な勢いで時空の歪みに吸い込まれてしまった。

「過去の平行世界の子供達の旅路に幸多からんことを…」

不思議な声が大輔とヒカリがいた場所に響く。

大輔とヒカリの本来なら交わらないはずの平行世界での戦いが始まる。 
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