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妖精達の社

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第四章

「紫の頭巾持ってるか被ってる人結構おるけどな」
「結構売れてるな」
「その人等にドングリの実とかゴミ当たったりな」
「襟から虫入れられたりな」
「ピクシーの連中が嫌がらせしてるな」
「そやな」
「紫の頭巾の奴が盗んだんだ」
 大左衛門はまた言った。
「そうだからな」
「だから違うって言ってるやろ」
 香菜は大左衛門に突っ込みを入れた。
「あんたもわからないわね」
「人盗んだのは事実だ」
「その人ってどの種族やねん」
「人は人だぞ」
「いや、自分何言うてるねん」
 小柄ながら自分よりもずっと大きな林檎をぺろりと平らげた大左衛門に即座に突っ込みを入れて返した。
「人間、エルフ、ドワーフ色々おるやろ」
「僕等かて烏天狗やぞ」
 佐藤もこう言った。
「ほんまにちゃうぞ」
「人いうても八十位種族おるんやし」
「何か色々な種族に悪戯してるけど」
「どの種族か確かめてないんか」
「そういえば誰も知らないな」
 大左衛門も言われて気付いた。
「我々も」
「呆れたわ、それが最大の手掛かりやろ」
「そもそもその社どんな風やねん」
 佐藤もまた呆れつつ大左衛門に問うた。
「一体」
「我々で最も神聖な色赤一色の社だぞ」
「それめっちゃ目立つな」
「そや、相当にな」
「それを探しているぞ」
「そんなん街中探せばすぐに見つかるやろ」
 佐藤は林檎を齧りつつ大左衛門に述べた。
「悪戯するより街中探せばええやろに」
「紫頭巾持ってる人に何しても例え持ってても出すとは思えんわ」
 香菜はまた言った。
「何か変なことが続くってもうだけで」
「それが懲らしめで反省して自分等に返そうって思うか?」
「そんな筈ないで」
「そう言うなら何か知恵を出せ」 
 大左衛門は自分に左右から言う彼から見てとてつもなく大きな者達に反論した。
「反対の為の反対はよくないぞ」
「私等の世界のアホな政治家みたいなことはせんわ」
 香菜は大左衛門に即座に答えた。
「そやから今から代案出すわ」
「それはどんなものだ」
「紫の頭巾を持ってる奴が社盗んだんやな」
「それを被っていたぞ」
「紫の頭巾な、私が持ってるのは」
 その頭巾を見つつだ、香菜は述べた。
「エルフのおっさんがやってる店で買ったわ」
「あのやけに人相の悪いエルフやな」
 佐藤もその店について言及した。
「もう如何にも昔悪いことしてましたって感じの」
「あれは今もしてるかもな」
「そうかもな」
「そやな、今もやな」
 ここでだ、香菜は気付いた。そしてだった。
 兄に気付いた顔になってこう言った。
「あの親父は」
「ああ、あの親父がか」
「盗んだんちゃうか?」
「そやな、店の品物やしな」
「あの親父が持ってて当然や」
「ほなちょっとあの店に戻るか」
「そうしよか」
 二人で話してだ、そしてだった。
 二人は大左衛門にこう言った。
「今からあるお店に行くからな」
「そのお店の中探すんや」
「絶対にそこに社あるで」
「赤い社がな」
「本当だな」
「ああ、そやからな」
「今から行くで」
 こう彼に言ってだ、そしてだった。
 大左衛門は香菜が左肩に乗せて店に向かった、親父は相変わらず悪い顔で店を営業していた。その人相はエルフと人間の違いこそあれど日本のマスコミ関係者の様な下品で下卑た感じのものである。原発事故を起こした元総理大臣のそれにも似ている。 
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