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妖精達の社

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第一章

               妖精達の社
 佐藤忠志と佐藤香菜の双子の兄妹達は信濃の北にある須坂の街に来た、そこに香菜の試練があると神託で告げられたからだ。
 それでこの街に入ったがすぐにだった。
 兄妹は市場に入った、そこで様々なものを見た。当然土産ものも。
 その土産もの達の中にだ、香菜はあるものを見た。それはというと。
「紫の頭巾って」
「こんなの信濃の土産ものにあったか?」
 佐藤もその頭巾を見て言った。
「こんなの」
「ちょっと聞かんな」
「そやな、信濃っていうたら林檎にお蕎麦やな」
「そうしたものでな」 
 それでというのだ。
「別にな」
「こうしたものがあるとかな」
「聞いてないけどな」
「何でこんなの売ってるんや?」
 土産ものとしてというのだ。
「しかも大量に」
「値段は安いな」
「けどな」
 それでもとだ、佐藤はここでだった。
 店の親父の顔、妙に人相の悪い初老のエルフの男のその顔を見て言った。
「この店の親父どう思う?」
「盗賊みたいな顔してるな」
「そやろ」
「多分な」
 香菜はここで兄にこう囁いた。
「あの親父元はな」
「悪いことしてたな」
「それで今もや」
「あまりええことしてへんな」
「そやからこの頭巾もや」
 紫のそれもというのだ。
「碌なもんやないな」
「そやろな、ほなこの頭巾買って」
「調べるか」
「そうしよか」
 二人でこう話してだった。
 それで頭巾を一つ買った、そのうえで今度は信濃名物の蕎麦を食べる為に蕎麦屋に入ったのだがふとだった。
 香菜は自分の蕎麦を食べてこう言った。
「あれっ、何かな」
「どないした?」
「いや、もうおつゆに唐辛子入ってるわ」
 二人はざるそばを食べている、香菜は自分のおつゆが入った碗を見て兄に答えた。
「それもよおさん」
「入れたの忘れたんちゃうか?」
「そんな筈ないけどな」
「唐辛子よおさん入ってたら辛いで」
 佐藤は妹にこうも言った。
「大丈夫かと言いたいが」
「うちは辛いの好きやしな」
「大丈夫やな」
「そや、けれど何かな」
「どないした、今度は」
「これさっき入れたんちゃうな」
 唐辛子のつゆへの浸かり具合を見てだ、香菜は述べた。
「どうもな」
「そういえばそやな」 
 佐藤も香菜のそばつゆの碗を見て述べた。
「結構深く入ってるな」
「表面nぱらぱらやなくてな」
「これは自分が入ってすぐやないな」
「お店で調理してる間に入れたんか?」
「それやったら僕の方もそやし」
「そもそも店員さんがこんなことするか」
 出す前に唐辛子を入れる様なことをというのだ。
「ちょっと考えられんな」
「サービスでそんなことせんな」
「嫌がらせやったらもっとばれん様にするわ」
 唐辛子をつゆの中に入れる様な目立つことをというのだ。
「何かおかしいな」
「ちょっとな」 
 二人でこんな話をしつつ蕎麦を食べた、蕎麦の味自体は信州そばだけあって実に美味く二人は堪能した。
 蕎麦の次は林檎と今度は八百屋に向かおうとしたが。
 香菜は身体を左に動かした、不意にそうすると。
 上から何か落ちてきた、その落ちてきたものは。 
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