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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第13話 メイド兄弟と琴葉

 
前書き
琴葉side 

 
 あの後、レンに紅茶をいれて、クリスマスプレゼントであるマグカップを贈った。


 そして、次は―――

「オイ! 離しやがれ」
「随分と躾のなってないメイドねぇ……ご主人様の曲がった性格の所為かしら?」
「……ご主人様を馬鹿にするな。殺すぞ」
「まぁ! 殺すなんて、言葉遣いが悪いですわ? うふふふ」

 仮の拷問室に繋いであるメイド兄弟だ。

 首、手首、足首に枷を取り付け、それを壁に鎖で繋ぐ。魔法で壁や床まで破壊不能にし、どれだけ暴れようとしても、逃げられないように工夫してやった。自害用なのか、口の中に毒が仕込んであったので、すぐに外してやった。九〇四番共の房にやったように、魔法も使えないようにした。

 準備は完璧だ。

「で、君達は日本で活動する、魔法実験を行い続ける、非合法組織の殺し屋であり幹部。相手が痛みに悶えるところを、そのカタチが無くなるまで痛め続ける、狂った使用人と、様々な武器を使い、一擊で相手を仕留める、冷静沈着な使用人と言う、メイド服を纏ったおかしな兄弟。裏社会では、"闇月(やみづき)兄弟"と呼ばれている、生きた伝説の殺し屋。……ここまで、間違いは無い?」
「……無い。情報は全て消したのに、如何為てソコまで知ってるの?」
「さっき同じような事を言われたから同じように返すけど……お前達だって理由、分かってるでしょ」

 分かっているのに聞くなとツッコんでやりたい。だが、そう言うことを言うべきタイミングでは無いため、溜息交じりの声で返す。


「知ってるだろうけど、私は君達の組織の元幹部」

 ―――ある所に、小さな女の子がいた。両親はとある組織に属し、日本のために魔法を研究していた。戦争のまっただ中、少女は組織で育っていった。

「それも、最年少で幹部に就いた、組織内の殺しと魔法研究で、一番の成果を出した、狂ったヤツ」

 ―――少女が幹部の座に就いた時、二人の補佐が付いた。

「そして、君達の元上司」

 ―――その補佐も着々と成果を挙げていった。だが、空いていたもう一つの幹部の座に就いたのは、違う人だった。彼は"グレース"と名乗った。

「で、組織の裏切り者」

 ―――その少女は、同年代のとある少年と少女に出会う。その二人は、ずっと魔法研究の被検体に使われていた。それを見て、少女は上に言ったのだ。"これは間違っている"と。組織は、これを"裏切り行為"と見なし、少女を幹部から下ろし、実験の被検体にした。

「君達の、初めての実験台」

 ―――少女は何回も実験を受けた。補佐だった二人は幹部に成り、少女を使って実験をした。

「君達に仲間を殺され、君達の仲間を殺した」

 ―――少女は幹部だったときに出会った二人と親しくなった。が、ある日少年が元補佐の一人に殺され、もう一人の少女は実験に携わっていた研究員を殺した。その事実から逃げるために、二人の少女は組織を逃げ出した。が、生きる手段が無くなりかけた頃に追い付かれ、殺人犯となった少女は頭を撃って自殺した。そのショックで、少女は組織の人間の大半を殺し、組織から再度逃亡する。

「君達が何年掛かっても殺せない、唯一の敵」

 ―――少女はとある医者に拾われた。その数ヶ月後、その組織や少女等は、戦場で会うことになった。何度も勝負を繰り返すが、少女は実験に因って生まれた強大な力で、組織の力をねじ伏せた。

「邪魔者を排除する、便利な道具として扱われた」

 ―――少女は襲ってきた敵を相手し続けた。数回ほど命を落とした。が、魔法で蘇生され、道具のように何度も何度も、壊れては修理されて、使い続けられた。

「ただの狂った"化物"だ」

 ―――だが、そんな少女はいつも血の雨を浴びたように、服を真っ赤に染め、髪から死を滴らせ、ただただ、嫌だと叫ぶことも無く―――


 ――――――笑っていたという。


 裏社会では有名な話だ。まぁ、その組織はかなり大きなもので、そこの最年少幹部が色々やらかしたのだから、有名になるのもおかしくない。
 私の元部下の兄弟の兄・(きょう)と、弟・(じん)が、こちらを睨む。が、非合法組織に居たようなヤツが、こんな事で怯む訳が無いのだ。

「ハハッ! お前ら、そう言えばいつも私の事、何て呼んでたっけ? "琴葉様"だっけ? それが、今では睨んでくるし、殴り掛かってもくるしで、私がどんだけ苦労してお前らを育ててやったのか、考えたことある?」

 響の前に立ち、片方の手を壁に付ける。"壁ドン"というヤツだ。座った状態で拘束しているため、此奴等より身長の低い私でも、普通に見下すことが出来る。

「お前ら、ずっとご主人様ご主人様って言ってさ? 首領(ボス)にひたすら媚びを売りまくるから、大変だったんだよ。人が殺しの仕方とか、魔法で人を殺す方法を教えてやってんのに、自己流を貫くしさ。カタチが無くなるまで痛め付ける? そんな面倒臭いこと、するなって"教育"したよね? 如何為て師匠の言うことも聞けないの? 君はそんな駄目なメイドだっけ」

 響が私を殴ろうと拳を振り上げようとするが、枷が固定されているため、腕を上げることすら出来ない。
 その様子をじっくりと楽しんでから、仁の前に移動する。

「剣だったり銃だったり、刀だったり爆弾だったり、使い方を教えてやったのは私だよ? 君に武器の使い方を教えてやったのに、如何為てそれを私に使うの? 恩を仇で返すのが君達のやり方なの? 最悪だね。どうせ、これまでにも何回も依頼を断られてんだろうね。私の"教育"を忘れてしまうようなヤツだからねぇ」

 悔しそうな顔をして黙り込む仁。響が隣で騒ぐが、全然と言って良い程気にならない。
 自然と表情が緩んできて、笑顔になる。

「じゃあ、明日別の看守が引き取りに来るから。素直に着いていって、悪さをしないのが一番の手だ。じゃあね」

 そう残して、私は部屋を出た。

 
 

 
後書き
おまけ
〔その後の琴葉〕
琴葉「んふふふふふふふ」
要「琴葉、怖いんだけど」
琴葉「えへへへへへ」
要「……おーい」
琴葉「ふへへへへへ」
要「…………気でも狂ったか……って、いつものことか!」
琴葉「てめぇ一発殴らせろ」
要「えやめてください」 
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