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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE169 ビーストスタイル真の姿!

俺のソードスキルの3連コンボにより、強靭な巨体の猛獣と化していたカレラのHPをなんとか削り切り、三本勝負の一本目を勝ち取ったのだった。

教祖「では、カレラさんを蘇生します」

教祖がそう一言発しただけで、エンドフレイムとして漂っていたカレラは瞬く間に元の――本来のこがらなケットシーとしての姿に戻っていた。
元に戻った際のカレラの顔は流石に予想外だったのか険しく強張っていた。
何はともあれ、あと一本……あと一本勝利すればその瞬間に俺の優勝が決定し、優勝賞金の200万円が得られるわけだった。

カレラ「ったく――やっぱり強いよねアンタ……そんだけ強けりゃ美化されるわけだよ」

俺「俺が美化されただって?どこのどいつがどんな風にだ?」

カレラ「どこのどいつとかじゃなくて……単なるネット上の記事でだよ」

聞いてみて、俺は何だそんな事かと拍子抜けすると同時に、予想通りだとも思った。SAO事件解決以来、ネット上、そして雑誌などにおいてSAOに関する正確な記録を自称する記事だのコラムだの、ウジ虫見てぇに沸いて溢れちゃいるが、その殆どが傑作な位に適当だ。

ある記事にはアインクラッド解放軍が中層のプレイヤー達を守りながらボス攻略の指揮を取っていただとか……ある記事にはラフィン・コフィンのボスは実は攻略組の幹部格プレイヤーだったとか……中には風林火山のリーダーと血盟騎士団の副団長は密かに恋仲にあったなどと言う―――もし本当ならクラインが泣いて喜びそうな適当な事が書かれているのが千差万別で見ている方もどうせ適当であると言う事が前提になっていた。

教祖「30秒後に二本目のデュエル開始ですよ」

俺「ああ、もうここまで来たらさっさと決着付けちまいたいからな」

カレラのケットシー専用結晶スキルのビーストスタイルは確かに驚異的な力をカレラに与えているが、やはり使用中は常にMPが減少しているようで、短期決着を付けなくてはならないからか、その動きはどうしても攻撃的にならざるを得ないのだろう、防御主体の戦い方だと決着を付ける前にMPを消耗しきり、あの形態を維持できなくなると思われる。

カレラ「随分と余裕なこと言ってくれるじゃん……猛獣になったアタシなんて怖くないってわけ?」

俺「いや、結構怖いぜ。特に目の前まで迫って来たり、あのデカい顎で食われそうになりゃどうしてもな」

実際にあの大口で食い付かれたクラインは、これが仮想空間の出来事であると理解しつつも冷静さを欠いていたのが目に見えて分かるほどだったくらいだ。

カレラ「やっぱり、アタシ程度の雑魚プレイヤーがただの猛獣程度になったくらいじゃ、MBTのリーダーに勝てるわけないか……」

カレラはそんな悲観的な言葉を口にしている割には、未だに余裕を残しているかのような、まだ手を残しているかのような様子を漂わせていた。

教祖「デュエル開始まで5秒前です」

そして、再び俺とカレラのデュエルの開始が告げられる。これで決めれば俺の優勝―――200万円!ここまできたら是が非でも勝たなきゃならないだろ……!

カレラ「んじゃ……ビーストスタイルいきますか」

俺は今度はワープビジョンではなく、デュエル開始の直後に自分の足で瞬時にカレラに急接近し、そのまま全力の直進の勢いのまま突きを放っていた。
カレラはその突きに対して全く一歩たりとも反応する事無く、自身のか細い体で受け止めていたが、同時に既にビーストスタイルの発動モーションである赤紫色のオーラを全身から放ち続けていた。

俺「なら今のうちに……!」

今のうちに少しでもダメージを与えるべく、俺は迷わずソードスキルを発動した、片手直剣による高速の6連撃で徹底的に速度を重視した技ゆえに瞬く間に6連撃はカレラにすべてヒットし尽くした。そして……俺のソードスキル発動後の硬直が終わる直前とほぼ同時に――カレラの姿はビーストスタイルによって変化したのだったが―――その姿は先ほど見せた、二足歩行の巨体の猛獣とはまるで違う姿だった。

俺「んだよそりゃ……?」

その姿は恐らく、キマイラって奴だろうか?家庭用のRPGゲームとかでもよく出てくる、頭部はライオンだが、胴体は羊、尻尾が毒蛇になっており……様々な動物を合成したかのような姿からキメラ(合成獣)として扱われる事もある――まさにカレラはそんな姿へと変貌を遂げていたのだった。

カレラ「言い忘れてたけどさぁ、ビーストスタイルには二種類の変身があってねぇ、こっちはさっきのよりもMPの消耗が激しいから控えてたんだけど――アンタを叩きのめすには仕方ないよね!!」

俺「対人戦のデュエルだってのに、さっきから猛獣の御守りばっかりかよ……!」


ビーストスタイルの真の姿を露わにしたカレラ!その力は……?オズマは本当に優勝と賞金を得る事が出来るのだろうか!? by立木ナレ



西暦2025年5月某日。

カレラ「学校、つまらねぇな……」

彼女の名前は桜井青嵐(さくらいせいらん)。SAO帰還者学校に通う少女であり、SAO時代はキャラクターネーム、カレラとしてALF(アインクラッド解放軍)に所属していたSAO生還者であった。
そして彼女は攻略組の一員であったのだが……彼女が攻略組の一員としてフロアボス戦に参戦したのは第24層と第25層の僅か二戦のみ、第25層の戦いにおいてカレラが所属していたアインクラッド解放軍……当時はALS(アインクラッド解放隊)は主力メンバーの大半を失う大打撃を被り、攻略組から脱落する要因となった。
カレラは辛うじて生き永らえた物の、ギルドメンバーの大勢を失った解放隊メンバーは勿論の事、その場にいたレイドパーティーのメンバーの誰もがフロアボスを討伐した後も勝利の歓喜に沸く者はおらず、フロアボス部屋全体を喪失感と悲壮感が包み、解放隊のリーダーであったキバオウの激情的な叫び声が響き渡る中、カレラは気が付けば失っていた……同じく解放隊のメンバーにして兄でもあるボクスター……桜井青葉(さくらいあおば)を……兄の明確な最期を目の当たりにした者は数名程度、フロアボスモンスターである双頭巨人がボス部屋を縦横無尽に走り回った際に、まるでその場にいる事すら気が付かない様な――それこそ人間がアリを踏み潰す様な感じにボクスターは走り回っていた双頭巨人によって呆気なく踏みつぶされ、次の瞬間にはボクスターはその場から消え去っていたと言う末路!
そんな出来事があったのが西暦2023年3月31日の事であったので既にカレラは兄を失ってから二年以上の月日を過ごしていた。
あの日以降、攻略組から離れれば離れるほど、遥か上層で活躍するSAOプレイヤー達の希望とも言える攻略組の活躍を聞けば聞くほど、カレラは否応でも自分が――そして死んだ兄やその他大勢のプレイヤー達が余りにも弱者!
このSAOでは取るに足らぬ存在であるのではないかと思い知らされ続けていた……そして、西暦2024年11月7日に、黒の剣士キリトの活躍によってSAOが第75層の段階でクリアされて以降も、カレラはその劣等感に際悩まれ続ける事になっていた。

ユッチ「いや~、ホントオズマさんは流石だぜ!MBTリーダーの右腕としちゃあ、鼻が高いってもんだぜ!!」

カレラが所属する教室の中央で、クラスメイトの三好裕一(みよしゆういち)。SAO時代はユッチと言うプレイヤーネームで、攻略ギルドMBT(未来は僕らの手の中に)のリーダーのオズマの右腕――もとい腰巾着であったクラスメイトの少年は得意気な表情と口調で数名の比較的大人しそうな男子生徒たちを囲い、自慢話を繰り広げていた。

ユッチ「お前らも知ってるだろ?ネットで掲載されてるSAO事件記録全集!」

クラス男子A「いや……知らないよ」

クラス男子B「ゴメン俺も分かんない」

ユッチは自慢気に『SAO事件記録全集』等と言う如何にも怪しげな単語を口にしていたが、ユッチの話し相手にされていた男子二人は共に首を傾げていた。

カレラ「知らねぇよ、そんなのアタシだって……」

教室の片隅で、ユッチの訳の分からぬ自慢話を聞いてしまったカレラもつまらなさそうに漏らしていた。
一方でユッチは自分の話に早速腰を折る形となってしまった二人に対して頭を抱えて――

ユッチ「ったく、なんだよお前らぁ!今ネットのSAO関連のサイトで話題のSAO事件記録全集を見た事がないなんてそれでもSAO生還者かよ!!」

理不尽に声を荒げて喚き散らすのだった。

クラス男子A「けどさぁ、SAO関連の記事とかサイトにはさ、確かにSAOの中で起きた出来事に関する話とかが掲載されてたりとか、沢山あるけどさぁ……」

クラス男子B「あれって殆どある事ない事な話ばっかりだったり、曖昧で抽象的な事しか書かれてないようなのばっかりだしさ……」

そのクラスの男子二人が言う様に、SAO生還者からの証言を基に作られたなどと言うキャッチフレーズのSAOゲーム内の出来事を書いた記事や記録は書籍、ネット上を問わず、あり溢れるほどに出回っているのだが、その殆どがデマ、脱色した内容、或いは適当でいい加減な情報に基づいた内容である等、SAO生還者たちからしてみれば、まるで自分達とは関係のない――三流脚本家が書いた、架空の物語を読んでいるようにしか思えない有様であり、カレラも幾つかその手の記事を見て、余りにも事実と一致しない内容に思わず雑誌を破きたくなるような衝動に駆られた事もあるほどだったのだが―――

ユッチ「バーカ!その辺のいい加減な記事と一緒にするな!お前ら本当に何も知らねぇな!」

クラス男子A「いてっ!」

クラス男子B「いたっ!」

ユッチは甲斐甲斐しく自分の話に耳を傾けてくれている男子二人に対して、罵りの言葉を浴びせながら平手で頭を一発ずつ強く叩きつけるのであった。
基本的に自分よりも強い相手に対しては徹底的に媚び下手に出て……逆に自分よりも弱い者に対しては傍若無人の如く強気な態度を取るのがこの三好裕一であった。

ユッチ「良いか?このSAO事件記録大全集はなぁ、実際に何人ものSAO生還者の証言を基に書かれてるんだ!黒の剣士キリト、補足転移のオズマ、そして閃光のアスナさん、有名どころのプレイヤー達の活躍は勿論、第100層に至るまでの攻略の経緯や道のりもびっちりと正しく書かれてるんだ!噂じゃ来年あたり書籍化して、国内外に販売されるんじゃないかって話も上がってるくらいなんだからな!」

どう言うわけかユッチが偉そうに、誇らしげにそう言い張ったのだった。

ユッチ「ホント、MBTの右腕としては、オズマさんの活躍がより多くの連中に知られるのは誇らしい限りってわけだよ!もしかしたら何年後かに、僕もSAO生還者ユッチとしてテレビ番組に呼ばれてさぁ、そのまま芸能界デビューと化しちゃったりして?はははははっ!!」

カレラ「バカか……アイツ?」

一人勝手に都合の良い妄想を語り、笑いまくるユッチに対してカレラは冷ややかな視線を向けつつ、ユッチが語ったSAO事件記録大全集を見てみたくなり、学校から帰宅後にスマホを使い検索エンジンで検索……スグにそのサイトは発見されて、カレラはそれを読んでみる事にしたのだった。

そして、そこには確かに他のネットの記事や雑誌記事と違い、SAO攻略の正確な記録が記されていた。攻略組の中核を担ったギルド……フロアボス戦との激しい戦い……登場する人物たちの人物像に関しては総じて本来とかけ離れた部分が多々見受けられたものの、概ね記録としては正しいのだが―――

カレラ「ホント……これが書籍化されりゃ売れそうだな……娯楽小説としてさ……」

全てを読み終えたカレラは自嘲するように……自室でSAO事件記録大全集を娯楽小説と評したのだった!だが、カレラがそう例えるのも無理はないであろう。
記載されていたのは総じてSAOプレイヤーの中の一握りに過ぎない攻略組の活躍に関する事が殆どであり、その他大勢のプレイヤーに関して触れられている事は極僅か――一応、第25層のALSの主力プレイヤーの大半が死亡する一件に関しても書き記されてはいたのであったが、死んだプレイヤー達の呼称は『ALSメンバー』『ALSの男性』『ALSの剣士』等と言った適当な特徴で呼ばれ、明確なキャラクターネームを出されたの誰一人としておらず、カレラの兄であるボクスターも『ALSの一人』と言う呼び方で、双頭巨人によって踏み潰されたと言う事だけ書き記されるのみであった!

そう、この記録大全集はあくまで攻略組の活躍を――見るものが面白いと感じる様に……興味を惹かれる様に書き記されたが故に、一般のプレイヤーの、特にこれと言った活躍を見せなかった者達に関しては殆ど描写されておらず、それは死んだ者たちもまた同様の扱いなのであった!

カレラ「今だに頻繁にニュースやネットで取り上げられてる割には……興味を向けられるのは死んだ奴らよりも活躍した奴ら……何もできないで死んだ奴らになんて誰も見向きもされないんだ……」

カレラにとってそのSAO記録大全集はまさに自信を含めた一般プレイヤーが軽視されているかのようなもの!
あたかも自分達がSAOと全く関係の無かった存在すらしていなかったかのように――兄の死を僅か一行で描写し、まるで誰も興味が無いからと言われているかのような錯覚を起こしていたのであった!!
 
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