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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第9話 新キャラ登場!?

 
前書き
琴葉side 

 
 鼻血を出して、仰向けに倒れる囚人共。笑いが抑えられなかった。

 腹を抱えて笑うのだけはどうにか堪え、四人の手に手錠を掛ける。これは看守室の物と同じ様に、破壊出来ない様にし、歩かなければいけないので、水平移動しか出来ない仕様にした。
 後は手錠を鎖で繋いで、引っ張っていけば良かったのだが―――

 ドガン!と、私の横の壁に拳が叩き付けられた。
 …………どうして、こんなに野蛮なヤツが多いんだ、この舎は!! 私もそうかもしれないけども!!


「チッ……外したか」


 後ろでドミノ倒しの様に倒れる囚人共に巻き込まれるのを回避し、声の主から距離をとる。そして、目を疑った。

 其処に居たのは二人の男。一般的に見て、どちらともイケメンの部類に入るものだろう。殴りかかってきた方は、いかにも性格が荒そうな感じをしている。もう一人の方は落ち着いていて、争いごとが好きじゃなさそうな顔をしている。
 髪は暗い紫。若干赤みが掛かっていて、綺麗な髪色だなぁと、いきなり殴りかかってこられると言う状況でも思ってしまう。
 瞳も透き通るような緑。女性が十人居たとして、十人は羨ましがるような、宝石のような瞳。因みに、私は黒が一番しっくり来るので、強いて言うなら綺麗だなぁ程度にしか思わない。

 ここまでは一般的なイケメンと同じだ。

 だが、問題は服。
 二人の男はロングの"メイド服"を着ているのだ。
 …………世の中には、こんな変わった趣……コホン、個性的な人もいるんだなぁ。


「……何? お前達」
 私が問うと、荒そうなヤツの方が、
「言う必要なんてねぇだろ。言葉遣いの荒い女だな」
 と言う。…………あ、そういえば。

「あ! お前ら、今日私を暗殺しに来た奴等か!!」
「「「「は?」」」」

 後ろで重ねるように倒れた囚人共が、素っ頓狂な声を出す。そんなに驚くことだったか? 私は、一週間に最低でも四回は暗殺者に、命を狙われているのだが…………

「そうと決まれば捕まえるしか無いな! わざわざ警備を薄くしたのが無駄になる!」
「「「「はぁ!?」」」」

 今日此奴等を捕まえに来たのは、警備を薄くしてあって、もし一舎の外壁の近くまで来て爆裂魔法をぶっ放されたら、とんでもないことになってしまうからだった。

「と言う訳で暗殺者共、危険だから手錠掛けるから。安心しろ、此奴等と同じ房にぶち込むだけだ、安心しろ」
「「「「はぁぁぁああああ!!?」」」」

 囚人共が騒ぐ。

「いやいやいや、琴葉ちゃん!? こんな危なそうな奴等と一緒にしないで!?」
「○○○○れて、体を○○○○にされちゃうよぉ!!」
「○○を○○して、○○○○○○○○されるのは勘弁してくれ!」
「…………止めてくれ」

 そう言えば、席替え前の中学生って、○○くん、○○さんの隣はヤダァァァアア!! 先生、変えてよぉぉおおお!! とか言うんだよな……? 喧嘩も中学生レベルだし、此奴等の精神年齢、若すぎないか? ええと……三歳?

「ま、冗談だ。取り敢えず、其奴等を捕まえてから―――」


 頬を拳が掠める。…………こっわ。

「避けんのは得意みてぇだな」
「…………お前ら、何処のヤツなのか、もう検討はついてるんだ。さっさと大人しくしろ。最近徹夜続きで眠いんだ」

 九〇四番共が、毎晩毎晩毎晩毎晩脱獄するから、と心の中で付け足す。

 このメイド男は過去、会ったことがある。向こうが覚えているとは、到底思えないが。

 取り敢えず、此奴等は危険だ。私にとってはただの餓鬼でしか無いのだが。ただの餓鬼でしか無いのだが。

 確か、此奴等は兄弟で、上が荒そうな方で、大人しそうな方が下。ある組織に所属する殺し屋。かなり裏社会に名が通っていた筈だ。
 そんな奴等は、上が素手での戦闘、下が武器を使った戦闘を得意としている。

 今回は気を引き締めた方がよさそ―――


 と思ってやめた。


「オラッ!!」

 横にずれて回避…………しない。

「……ラァッ!!」

 しゃがんで回避…………しない。


「……もしかして、君攻撃当たらないん? さっきから攻撃がスカばっかり……」
「うるせぇぇぇえええええ!!」


 図星か。


「ちょっと退いて」

 下の方がバズーカを構える。これは……魔法か。炎は出るっぽいが。

 トリガーを引く。…………が。


 出たのは小さな炎。十年前、赤ん坊が使っていたレベル。


「…………君達、何でそれで名の通った殺し屋になれたんだ?」
「……うるさい」


  ◆ ◆ ◆


 取り敢えず囚人共を房に戻してから、メイド兄弟と房の前で話しをする。何故此処で話しをするかと言うと、囚人共が気になって寝れない! と騒ぐからである。

「……で、如何すれば良いの? 君達は」
「解放しろ」
「無理。馬鹿じゃん」

 此奴等は十年前の戦争で、一番魔法開発を進めた組織に所属する殺し屋。魔法開発のための実験を多く行っていて、私が保護している被検体は、全てその組織での実験に使われた被検体だ。
 レンに会わせたらとんでもないことになる。そんな事は一切無い。レンは実験に関する記憶を全て失っているからだ。

「お前らの目的は、私を殺すことと、其処の四人の内二人を回収すること、そして残りの六人の被検体の回収だよね?」
「なっ……如何為て実験について…………」
「質問に答えろ。それ以外喋るな。拷問されたいなら催促はしないが?」

 口の端を持ち上げながら言うと、前から短い悲鳴が響く。……カスか。
 また、後ろからは、

「おおおぉぉぉお二人さん!? 琴葉ちゃんの拷問、受けない方が良い! 命のためにも!!」
「メイドさん、メイドさん! 死ぬ前に"お帰りなさいませご主人様♡"ってやって!?」
「一生僕に尽くしても良いぞ」
「…………早く言った方が楽だぞ」

 と言う声が。八九番については不明すぎる。

「内蔵破壊されたり、蛙を体内に詰め込まれたり、耳にムカデを入れられたり、ナイフを全身に刺されたり、ハエにたかられたり、汚い男共にたかられたりするんだよ!? それに、例え死んでも生き返らされて、その後も精神崩壊するまで死んで生き返ってを繰り返すんだよ!? やめた方が良いやめた方が良い!!」

 九〇四番め、余計なことを……
 私の拷問方法は、自分がされたら嫌な事をし続けるだけだからな。やっていることが完全にアウトだが、どっちにしろ生き返るし、怪我しても元に戻されるし、拷問で精神崩壊しても、終わったら戻るし。

「そうだよ。……さっき、君は僕達が"何でそれで名の通った殺し屋になれたんだ?"って聞いた。それについては……」

 下の方が話し始めたが、それを遮って上の方が怒鳴る。

「お前、何を仕組みやがった!」

 バレたか。
 後ろで"何言ってんだ此奴等"みたいな、微妙な表情をしている囚人共にも聞こえるように、私は言う。

「ちょーっと、操作してみたんだ。そしたら、簡単に気合いとパワーだけで、攻撃はスカばかりのカスメイドと、魔力スカスカの、ショボメイドになったって訳さ。プフッ!」
「クッソうぜええええええぇぇぇぇえええ!!」

 カスメイドが突っ掛かってくる。こうやって見ると、背高いな。がたいも良いし、パシリにぴったり―――

「今失礼なこと考えただろ?」
「知らん」

 これは失礼なことと言うのか?


 さて、此奴等如何為よう。
 ま、もう夜だし、私より弱いことは確定したから、適当に隣の房―――誰も使っていない―――に突っ込んでおこうっと。報告は明日で良いだろ。爆裂魔法で打ち開けられた穴も直さなきゃいけないし。

 私が踵を返して、隣の房の鉄格子を開けようとすると、後ろから殺気が。カスメイドの方だ。

 案の定私目掛けて振りかざされていた拳を受け流し、その勢いを利用して一回転させ、床に打ち付ける。床にヒビが入るが、もう知らない。

 房の中で、九〇四番達が揃って「あーあ」と言っていたところから、何かしたら殴られるのは当たり前の様な意識でも芽生えてきたのだろうか。そうだとしたら、脱獄しないでくれ。

 
 

 
後書き
なんか、ネタが思い浮かばな……
メイド服男子、現実で見てみたいです。 
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