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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第6話 副主任看守登場!!

 看守室。此処は一舎の看守が事務仕事をする部屋。

 ―――なのだが。

「……何でお前が居るんだよっ!!」
「あははー琴葉ちゃんだー。見付かっちゃったーアハハハハハ」
「気色悪いわ……」

 九〇四番が看守室内をぐるぐるぐるぐると歩いて居た。
 反射的に手錠を掛け、何となく近くにあった縄で縛り上げる。このまま房に放り投げても良いのでは、と言う考えになったが、面倒臭いので、廊下に置いていこうかなと考える。

 この部屋に置いてある物には、全て硬化魔法―――物体を硬くする魔法―――、固定魔法―――物体が置いてある場所の座標を決め、其処の座標に物体を固定する魔法―――を掛けてあるため、破壊も出来ないし、動かすことも出来ない。魔法を掛けた人が許した者以外には、だが。

「で、何か収穫はあったの?」
「……抑も、どの引き出しも開かないんだけど」

 なので、九〇四番がどれだけ引き出しをガタガタしても、引き出しは絶対に開かないのだ。
 勝ち誇った笑みを浮かべていると、いきなり目の前に居る九〇四番の顔が引き攣る。……変顔の披露をしてとは誰も言っていないのだが。

「どうしたの?」

 問うが、答えない。口の端がピクピクと痙攣していて、何かに怯えているのだろうか? 怯えるモノ何て、置いていない筈なのだが。

 すると、ふっと視界に影が入り込み、直後首に腕が回される。
 看守服……と言う事は、看守か。

「琴葉ぁ?」

 甘ったるい声と甘い息が、右耳に掛けられる。…………マズいマズいマズい!! 九〇四番に耳が弱いのがバレたら終わる!!

「そこの囚人くんにした特殊プレイを、僕にもしてくれるかなぁ?」
「ヒッ……ぁ………」

 …………あ。九〇四番が此方をガン見している。顔に熱が集まっていくのも分かる。おかしな声が出たのも分かる。反射的に口を押さえたが、間に合わなかったのも分かる。
 右を向くと、其処にはニヤニヤと笑う、一舎の副主任看守・黒崎要(くろさきかなめ)が居た。
 …………サァと音を立てそうなくらいの勢いで、顔に集まった熱が何処かへ消える。多分、今は真っ青な顔をしていると思う。

「……や、止めろ! この変態! 変態はそこのクソ野郎だけで十分!!」
「え、ひど……」
「違うでしょう? 琴葉。君がして欲しいって言ったからしてるだけ」
「~~~~~~!!!! やっ、やめろ! 離せ!! ……ひゃっ!?」
「囚人くーん、チョット貰うね~」
「やめっ、はなせっ!! …………え、あ、何処触って……わあああぁぁぁぁぁあああ!?!?」
「そんな反応もすっごく可愛いよ。食べてしまいたいくらい」
「へっ!? や、だめ…………あああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」


[暫くお待ち下さい]


 疲れたな。クソ変態め、後で打っ殺してやる。

「琴葉ちゃんも、大変なんだね」
「同情するな!!」


  ◆ ◆ ◆


 全く、朝から散々だったな。
 巡回中、また九〇四番達が盛り上がっていた。だが、何時もと違い、房の前に要がいる。

「でねでね? 琴葉はすっごく甘えん坊で、泣き虫で、可愛いんだよ~!」
100「マジか……」
904「琴葉ちゃん、彼氏とかいるの?」
「いない!」
4「へぇ。良いことを聞いたな」
89「イケメン担当と変態担当、琴葉ちゃんに手は出しちゃ駄目だよと言うかヘンな事しちゃ駄目だよ」
904「何を疑わてるのかな? 俺達」
89「……………………」
「で、其処に居るのはバレているんだよぉ? 琴葉」

 ゲ、バレたし。
 咄嗟に通路の角に隠れたが、そう言えば黒崎家は魔法で有名な家だと思い出す。索敵魔法等が、世界最先端レベルの実力があるらしい。"黒崎家の御陰で、ストーカー被害が格段と減りました!"とニュースで見た気がする。

 でも、黒崎家のお坊ちゃま(要)もストーカーな気がするのだけど。

「何……?」通路の角から頭を少し出しながら反応する。
 すると、ニヤリと要は笑みを浮かべ、

「琴葉って、身長の割に胸あるよね」

 …………顔に熱が集まる。次の瞬間には要との間を駆け抜け、ヤツの鳩尾を蹴っていた。

「御前、マジ最低ッ! セクハラで訴えてやる!! クズ! クズ要!! ……って、貴様等もまじまじと見るな変態!!」

 こんなに要がいらないと思った日は無い。

「クズメ!! セクハラ(じじい)!! クソ看守!! 死ね!!」

 "身長が小さい"だったら、「御前より小さいだけだ!」で終わりにしたのに。…………って、一般的に見て一六三センチって小さいのか?
 要改めクズメをゲシゲシと踏み付けていると、私を見詰めて黙っている事に気付く。思わず脚を止め、何? と小首を傾げる。

 すると、クズメはすぐにニヤリと笑い、

「黒なんだぁ」

 と言った。

 看守服のズボンが乾かなかったからと言う普通の理由で、久し振りにスカートを穿いたのが間違えだった。反射的にスカートの裾を抑え、声にならない叫びを上げる。

「へぇ……大人っぽーい!」
「大人の女性って感じだねー!!」
「誘っているのか?」
「…………エロ琴葉」

 囚人共はこんな事を言い始める。
 確かに此奴等は一八から二〇歳と言う、色々してみたい時期なのだろう。だが、だが…………!!


「『エクスプロージョン』」

 
 ―――房内は木っ端微塵に破壊された。

 許すわけないでしょうが。


 
 

 
後書き
[数分後の看守室]
琴葉「…………」ムスッ
看守A「……どうしました?」
琴葉「…………」ムスッ
看守B「……あの、主任?」
琴葉「…………」ムスッ
看守A「……そろそろ、無言で副主任の写真に釘を刺して、金槌で打つの、止めません?」
琴葉「…………」ムスッ
看守B「……って、いけません主任! それ、囚人の資料です!!」
要「(今入るのは止めておこーっと)」←爆裂魔法に巻き込まれたためボロボロ 
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