八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十九話 武力と暴力その十四
「そうしたこともありました」
「そうだったんですね」
「鉄仮面とベルサイユ宮殿の他にです」
「あの王様にはそうしたお話がありますか」
「そして火刑法廷もありましたし」
「確か魔女狩りでしたね」
火刑法廷は僕も知っている、ルイ十四世の頃の大疑獄事件だ。
「何か毒殺やら黒魔術やらの話で」
「その裏に大掛かりな犯罪結社もあり」
取り調べの中でわかってきたことだ。
「大変な騒ぎになったとか」
「それはなりますね」
僕もこのことは当然だと思った。
「犯罪結社とか裏にあったら」
「些細な教会での懺悔からはじまった事件ですが」
「懺悔からですか」
「本来懺悔室での告白は他言出来ません」
だから懺悔出来るのだ、秘密を守るのも神に仕える者の務めか。
「しかし告白を聞いた神父が驚いてです」
「懺悔のその内容にですね」
「フランス政府に通報してです」
「大規模な取り調べになったんですね」
「その結果ラ=ヴォアザンという老婆が一連の毒や黒魔術の首謀者とわかったのですが」
「それで大規模な捜査が行われたんですね」
「はい、そしてです」
その結果というのだ。
「多くの関係者が逮捕され取り調べられ」
「処罰されたんでしたね」
「ラ=ヴォアザンは火刑となりました」
火炙りだ、魔女にすべき処刑がそのまま行われたのだ。
「異端審問では火刑になった魔女は実はです」
「ほぼ全ての人が無実でしたね」
「本物の魔女があの様な稚拙な取り調べにかかる筈がないです」
魔女とわかる筈がないというのだ。
「むしろ魔術でその前に逃げています」
「実際にマザー=シプトンとか逃げていますからね」
イギリスにいたという不思議な予言者でもあった老婆だ、その外見はあの老婆の魔女そのままだったらしい。
「そんな大層な魔術が使えるなら」
「本物の魔女は逃げていました、ですが」
「ラ=ヴォワザンはです」
「数少ない火刑になった正真正銘の魔女ですね」
「私はそうだったと思います」
毒薬を使って多くの人を殺してきた、まさに魔女だ。
「箒で空を飛んだりしないだけで」
「毒に秀でたタイプの魔女だったんですね」
「悪魔と会ったかどうかまではわかりませんが」
それでもというのだ。
「彼女はです」
「明らかにですね」
「魔女でした」
そうだったというのだ。
「そうとしか思えないです」
「そうだったんですね」
「当時フランスではもう魔女狩りは過去のものになろうとしていましたが」
とはいっても欧州では今でもたまに魔女狩り騒動があるらしい、中南米でもだ。日本人からしてみれば信じられないことだけれど。
「そこで、です」
「正真正銘の魔女狩りがですか」
「行われることになりました」
「まるでミレディーですね」
つい三銃士の登場人物を思い出してしまった。
「それじゃあ」
「むしろミレディーより遥かに悪質ですね」
「ラ=ヴォワザンは悪事の数と桁が違いますからね」
その毒で多くの人が死んでいるからだ。顧客にはルイ十四世の寵妃までいたというから余計に驚くべきことだ。
「ですから」
「実在の魔女の方が悪いですか」
「事実は小説なり奇といいますが」
「ミレディーよりもですね」
「あの魔女は悪かったと思います」
ラ=ヴォワザンという魔女はというのだ。
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