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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第一話 現状把握

 箱から取り出した宝石をしばらく見つめ続ける。
 だがいつまでもこうしているわけにはいかない。
 涙を拭い、意識を切り替える。
 すでに俺はこの地に降り立ったのだ。

 まずは現状把握が最優先
 まだこの世界が並行世界であることしかわかっていないのだ。
 それに

「……並行世界に跳んだ影響か?」

 先ほどから全身に何とも言えない違和感がある。
 俺の体は普通の人の体ではないのだ。
 早いうちやっておいて損はない。

 目を閉じ、自身の内面に意識を向ける。
 魔術回路を1本起動し、自身の体を解析する。
 まずは自分の戦力である魔術回路。

 ―――魔術回路528本確認
 ―――動作可能回路264正常
 ―――封印回路264正常 封印も問題なし
 ―――魔力量正常

 次に肉体
 ―――身体外面の損傷個所なし
 ―――神経、内臓等内面も損傷個所なし
 ―――体内『全て遠き理想郷(アヴァロン)』正常動作中
 ―――吸血衝動抑制問題なし
 ―――身体機能の異常なし

 ―――警告1 肉体面の差異あり 肉体年齢、約9歳

「……なんでさ」

 どう考えてもおかしいだろこれ。
 怪我が治って、魔力が満たされてるのはおそらく遠坂とアルトのおかげだろう。
 でも明らかに成人していたはずなのに、気がついたら9歳って……
 全身の違和感の正体もこれで説明がつく。
 急激な肉体の変化のせいで足の長さや体の感覚に違和感があったのだ。
 さらに今いる場所がビルの屋上という事もあって視点の変化があまり気にならなかったのだ。

 まあ、肉体に関してはこれからの課題ということにしておくとしてだ。
 この世界がどういう世界なのかもわからない。
 金銭に関してはカバンに入っていた貴金属類。
 これはどこかで換金しないと使うのは難しいだろう。
 他にある物といえば赤竜布(せきりゅうふ)ぐらいである。

 ちなみにこの赤竜布だが、吸血鬼の俺がアーチャーのように聖骸布を纏えないので用意したもので
 竜の因子を持つセイバーの血と遠坂の宝石を使って作成した赤い外套である。
 構造もアーチャーの上下分かれているのと違い、深紅のコートである。
 またセイバーの竜の因子の血のおかげで対魔力が聖骸布より高い。
 さらに特殊な構造しており防刃防弾にも優れている。

 だがなによりの疑問は528本の魔術回路を持っていながら対魔力が全然上がらない俺なんだが

 そして、他にも問題はある。
 それが服装
 着ているものすべてがサイズが合っていない。赤竜布に至っては引きずっている。
 そして、血が渇いてドス黒く変色している。

 とりあえずボディアーマーは脱ぎ、赤竜布で包み、カバンの中へ
 あとは……

「……いいか。なんとかなるさ」

 悩んでもはじまらない。
 街に降りようとカバンを持ちあげると

「……手紙?」

 カバンの下に何かが入っているのか多少膨らんだ封筒がある。
 封筒をとり、中を確認する。
 中には手紙とアミュレットが入っていた。
 
 とりあえず手紙を読み始める。
 この字は遠坂の字だな

 ―――この手紙を読んでるってことは無事たどり着いたんでしょ。
 体に関してはごめんなさいね。私の宝石剣じゃ計算より穴が小さ過ぎたみたい。
 だから大師父に幼児化をお願いする羽目になったけど、特に異常はないはずよ

「なるほど、遠坂の呪いのう……」

 本当は、うっかりと続けるつもりだったのだが

 ―――あとこの手紙を読んでいる時に変な発言なんかしてないでしょうね?
 今はまだ不完全だけど、完成したら会いに行くつもりなんだから
 あんまり変なこと言ってると捻じ切るわよ

 禍々しい文字に反射的に口を閉じた。
 特に「捻じ切るわよ」のところ。
 どこを? どのように? どうやって?
 いろいろ問いただしたくはあるが遠坂なら本当やりかねない、というかやる。
 知らず知らずのうちに出た冷や汗をぬぐい読み進める。

 ―――ここからが本題だけど、この世界の吸血鬼と私達の世界の吸血鬼では概念が大きく違うわ。
 だからいくつか修正力が働いてるからよく頭に叩き込んでなさい。
 でも安心しなさい。
 吸血衝動は今まで通り『全て遠き理想郷(アヴァロン)』で抑えることができるから。

 そこから先はこの世界の吸血鬼にことが書かれている。
 要約すると大きな違いとしては
 ・吸血鬼の概念が違うので修正力で血を誰かに与えても吸血鬼にはならない。
 単純に高濃度の魔力が込められた液体にすぎない。
 ・ただし相手を噛んだ場合、相手は死徒、または死者になる。
 この二つである。

 そして最後には

 ―――あんたのことだからトラブルに巻き込まれるだろうけど、うまく立ち回りなさい。
 念のため魔力殺しのアミュレットを入れてるから
 それと私達のことはいいからそっちで彼女でも作って、あんたも幸せになんなさい。

「……幸せになりなさいか」

 俺にはもったいないぐらいの言葉だ。
 自身が目指す正義の味方。
 それがなんなのかはまだわからないけど遠坂の言葉は忘れないようにしよう。

 それにしても『全て遠き理想郷(アヴァロン)』で吸血衝動を抑える事が出来るのが変わらないというのは助かる。
 とはいえ絶対とは言えない。
 魔力が切れれば『全て遠き理想郷(アヴァロン)』は動作しないのだ。

 自分の現状把握としてはこんなものだろう。
 あとは実際に動いてみないとわからないことが多い。
 魔力殺しのアミュレットを首にかけ、手紙もカバンにしまい。
 扉に向かう。
 この街がどんな街なのか知る由もない。
 だが

「少し楽しみでもあるかな」

 俺の気持ちはとても軽かった。 
 

 
後書き
 続いて第二話です。

 ではでは



 少々修正 
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