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異世界転移した最強の俺、追放されたSSS級冒険者(美少女)を拾う

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数分の遅れ

 集合場所というのは、目的地である場所の森……そこから少し外れた所だった。
 地元の人間でもあまり来ないような……というよりは来てもあまり意味のないような場所を集合場所にしていた。
 つまり地物と人は知っているが、そこの場所を待ち合わせにするというイメージがすぐにわかないような場所、であるらしい。

 他にも近くに白い煙を吹くキノコなどがあって、時期によっては白い霧が周囲にかかっているようになったりもするというのもあり、あまり近づかないらしい。
 そのため、その場所であればこの都市の人達や敵にも気づかれにくいのでは、と理由でそれを決めたらしい。
 場所はこのアイル神官長と一部の人物たちの身で三日前に決められ、昨日全員に伝えられたらしい。

 しかも腕に覚えのある冒険者たちが、だ。
 “予知の巫女”達全員も場所を予知した後はできうる限り接触を避け、情報が流れないようにもした、らしい。
 先ほどから体を震わせながら、アイル神官長がそう説明的な意味でお話をしてくれた。

 もっとも彼にとっては説明というよりは、自分の今の状況が信じられず、これまでの状況を口に出して整理しているのかもしれない。
 すぐ横でキャサリンも真っ青になって微動だにしなくなっている。
 と、そこでエリカが、

「……腕のいい冒険者を集めたというのは本当のようね。何人か知っているし、今まで一緒にパーティを組んだことのある人物もいる。でも……彼らこんな簡単に? 奇襲とはいえ……」
「エリカが知っているこの人物は、そう簡単に倒せないのか?」

 俺が聞くとエリカは頷く。

「魔法でも弓の使い手としても、実力は折り紙付き。……まさか仲間だと思っている人物の中に、敵の手下がいた、とか?」
「そうすると今日昼間に会ったような、あの冒険者たちみたいなことになっているのか?」
「ありえるかも。でもそれなら一番厄介そうな私達が来るまで待たなかったの?」
「すでにいる人数だけで倒してしまっても戦力がそげるから、か? というかもしかして俺達、約束の時間に遅れたのか?」

 俺はそこであることに気づいてそう呟くと、アイル神官長が相変わらず青い顔をしながら、

「はい、壁の外に結界を張るなど、少しゆっくりしましたから。といってもわずか数分遅れる程度であったかと」
「となると少し前に襲われたのか。だが敵は周囲にはいなそうだよな……もう少し索敵範囲を広げてもいいが、そうすると敵の探知網に引っかかったりするか?」
「……いつの間に索敵を?」
「いや、目の前に倒れている人がいっぱいいたので」
「……」
「それでこれからどうするのですか?」

 俺がそうアイル神官長に聞くと、

「やることは変わりません」

 絞り出すようにそう答えたので俺はルーシーに、

「それでルーシー、俺の方で回復するか? それとも新しい杖を試したいか?」
「! 杖を試したいかも。これからちょっと? 危険そうな敵にと戦うわけだし、どんなふうになるのか確認したいかな」
「じゃあよろしく」
「は~い、“女神の祝福(ミラクル・レイ)”」

 そう言ってルーシーが杖を高く掲げるとともに光があふれて……倒れている人たち全員に向かって降り注ぐ。
 すると倒れていた人たちが一斉に小さく声をあげてから、何人かは起き上がろうとする。
 その光景にアイル神官長とキャサリンは唖然とした表情になり、ルーシーはどや顔で、そして……エリカはいつものように頭を抱えたのだった。

 
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