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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE153 SAOサバイバーバトル!そして恥を晒すオズマ!

SAOサバイバーバトル……!それは、サービス開始から1年半ほどが経つALOにおいて初となる、実際の現実での賞金が掛かった夢と陰謀を孕んだバトル大会!その大会の優勝者へ与えられる賞金は200万円……それは、オズマの様に必要最低限の労働しかしない者にとっては決して手の届かぬ、溜める事などは敵わぬ大金であった!by立木ナレ



SAOサバイバーバトル大会の開催日が近くなり、俺はALOにログインして頻繁にデュエルのイベントに参加していた。今日もALOでは古参のプレイヤーや実力の高さで知られるプレイヤーを相手に腕試しをするが、今のところ全勝。

だが―――

俺「問題はアイツらだよな……」

今回の大会に望むにあたり、俺が特に要注意すべき相手はSAO時代に攻略の鬼と呼ばれた閃光のアスナだった。
本来であれば最も警戒すべき相手はキリトのはずだが、そのキリトはSAO時代のステータスをリセットして弱体化して日が浅く、少なくとも今ならステータスの差で俺の敵にならない相手になっていた。最大の強敵が弱体化している事は俺にとって願ったり叶ったりだが、その次に立ちはだかる強敵はその嫁のアスナとなるわけだ。

俺「SAO時代にはアスナとは剣を交えた事は無いしな……」

ブツブツとそんな事を呟きながら、俺はその日のデュエルをすべて終えて仲間達の溜まり場になっているだろう場所に向かって飛ぶ。
ALOでエギルが早速商人プレイヤーとして店を始めるらしく、ひとまず今現在は仮店舗を借りていた。どことなく現実のダイシー・カフェのような雰囲気を思わせる小さな仮店舗を見つけると、俺はそこで停止し、直立した状態で地上に向かって真下に落下して着地した。
ドアノブに手を掛けて扉を開けると、店のカウンターでグラスを磨いている巨漢のノームとなったエギルの聞き慣れたバリトン声が張り上がる。

エギル「いらっしゃい。今日も精が出るなオズマ」

俺「取りあえずワイン頼む。ここなら問題ねーだろ」

現実のダイシー・カフェでは絶対に年齢を理由に酒を出さないエギルだったが、VRMMO内の酒は全てノンアルコールの酒なので年齢云々は問題にならない、最もリアルで酒を飲んでいる者としてはノンアルコールの酒は味気なく飲み甲斐がないのだが。

エギル「あんま気は進まねぇが、ちょいと待ってな」

俺がカウンターに座ろうとすると、案の定すでにテーブル席に集まっていたSAO時代の顔も知り連中が俺の名を呼ぶ。

クライン「どこ座ってんだよ、こっちこいよオズマよぉ!」

俺「相変わらず賑やかなこったな」

テーブル席には俺に声を掛けてきたクラインの他に、相変わらず周囲に女を侍らせているキリト、他にシリカとリズベット、そしてキリトの妹のリーファが集まっていた。
キリトの頭の上には自称キリトとアスナの娘と言うALOのAIピクシーのユイが小さな姿で眠っている状態だった。

リズベット「そう言うアンタも、お金がかかったあの大会の為にデュエルしまくってるみたいじゃない」

俺「当然だ、200万円なんて大金は俺には手の届かねぇ高根の花だからな」

キリト「いや、お前一度その10倍の金額の大金をゲットしてるけどな……」

キリトは例のSAO時代のリアルマネーゲームの賞金の事をあげて若干呆れ気味の表情でそう苦言を呈していた。

クライン「ま、気持ちは分からなくもねーぜ。なんたって200万だもんなぁ~。もう……何に使うか今から考えたら楽しみで楽しみでよ……」

キリト「まだ大会は始まってすらないだろクライン、そんな間抜け面で浮かれ呆けてホントに大丈夫なのかぁ?」

俺以外の参加希望者のクラインが今から200万円を得た事の事を考えて、夢に浸って表情をだらしなく歪ませて、キリトから辛辣なツッコミが入った。

俺「てか、キリトはやっぱり参加しねーんだな?」

キリト「ああ、参加したところでまともに戦えそうにないからな」

俺が改めてそれとなしに確認してみると、キリトはキッパリと参加しない意思を明確に肯定した。

リーファ「私は出るだけ出てみたらッて言ってみたんですけどね。お兄ちゃんったらステータス以前にそもそも今回の大会自体に興味ないんですって」

キリト「まあな、なんて言うかさ。SAO生還者って境遇をネタに見世物にされてる感じがして良い気がしないんだよなぁ……」

キリトは複雑そうな表情で眉をひそめながらそう呟いていた。折角こいつなら優勝を狙えるレベルで200万円と言う大金を掴むチャンスだってのにな。だが、どちらにせよキャラステータスをリセットしたんじゃどうにもならねぇしな。
すると今度はキリトの言葉に対してリズが腕を組んで、固い表情で首を縦に振りながら言う。

リズベット「あ~、アタシも分かるわそれ!」

その口調は妙に怒りを孕んだような言い方だった。

リズベット「ホントこっちは大迷惑よね!SAO生還者ってだけで腫物扱い、興味本位で根掘り葉掘り聞いてくる奴だっている始末……特に、昨日放課後に来てたあの自称フリーライターの奴!アイツホント腹立つわよ!」

俺「なんだよ、すっかりご機嫌斜めってか?」

リズ達SAO生還者たちが通う帰還者学校にマスコミの人間が来たようで、リズはその事で何か気に障ることがあったらしく露骨に不機嫌そうな表情で声を荒げていた。
するとリズを何とか宥めていたシリカがリズの代わりに俺に答える。

シリカ「ええ、昨日の放課後に変なフリーライターって言う人が来まして、私たちの学校の生徒たちに対してSAOの事で色々としつこく取材を申し出てきたんですよ」

キリト「ああ、あの胡散臭いポニーテール男か」

シリカやキリトもそのフリーライターを見たらしいが、どちらもあまりいい印象を抱いていなかったようでキリトは微妙に不快そうな表情で、シリカは悲しげな表情を浮かべていた。

リーファ「ねぇお兄ちゃん。そいつってどんな奴だったの?無神経にSAO生還者の人達に根掘り葉掘り何を聞こうとしてたの!?」

キリト「色々と嫌な事だよ、向こうの世界で誰か親しい友達を殺されなかったかとか、もしかして他のプレイヤーを殺しちゃったりしなかったとか、他にも黒の剣士……俺の事も探してたみたいだな」

クライン「ったく、トラウマ抱えてる奴だっていっぱいいるってのによぉ!それを好き勝手に記事のネタにしようなんて腹立つぜ!」

リーファ「ホントですよね!もしアタシがそいつの顔見たら竹刀で面打ちの一発くらい食らわせてやるんだから!」

クラインとリーファは帰還者学校の生徒ではないが(そもそもクラインは社会人)、キリト達がフリーライターに強引な取材にあった事に腹を立てて、共に憤慨気味だった。
と言うか、俺は俺でそれよりも他に気になっていた事がある、こいつらの内の誰かが知ってないか聞いてみるか。

俺「最近さ、アスナの奴ログインしてねぇよな?アイツは今回のSAOサバイバーバトルには出ねぇのかな?」

俺がそう会話に入り込むと、キリト達帰還者学校組の連中は、そろって苦笑いを浮かべながら口をそろえて話し始める。

キリト「ああ、アスナは学校の定期テストが間近……って言うか丁度試験日と大会の開催期間が重なってるから絶対に無理だって言ってたんだよ」

俺「学校の定期テストだって……?」

それって、俺も小学生の頃にしょっちゅう受けさせられた面倒極まりないあれだよな?なんでそのテストと大会の開催期間が被るとアスナは大会に出られなくなるんだ?
俺にはその理由が全く分からないのだが、シリカもリズも、そしてリーファやクラインまでもが納得しているような表情を浮かべて、俺だけ置いてけぼり状態だった。

シリカ「私のクラスにも大会に参加したいのにテストを理由に諦めてる子が何人もいて凄く悔しそうにしてますからね~」

リズ「ホント、時期が悪いわよね~。特にアスナなんて良家の令嬢で、親の躾が厳しいもんだから、テストの二週間くらいも前から家庭教師に付きっきりで勉強付けでALOに中々ログインしてられないだから同情するわよ」

何を言ってるんだろうかこいつらは?テストを理由にALOの大会出場を諦める?いったい学校のテストとALOで行われるゲーム大会に何の関係があるんだ?
アスナが良家の令嬢だと言うのは以前に聞いたことがあるが、それでどうしてテストの二週間前は家庭教師なんてのが付きっきりになりアスナはALOにログインできない状況になるってんだ?


オズマ……完全理解不能!小学校卒業以来、一切学校に通っていないオズマにとって、中高生にとっての定期テストの重要性……テスト前のテスト勉強期間は理解不能! by立木ナレ


クライン「定期テストかぁ~。嫌な思い出だぜ全く……今も残業で忙しい時期はしょっちゅうあるけどよ、学生の頃は学生の頃でテスト間近になる度に勉強漬けでウンザリしてたよ俺も」

リーファ「私も、スポーツ推薦とは言えテストの一週間くらい前になると部活動は皆休止状態になっちゃって、試験で赤点が多いと追試で合格するまで部活に参加出来ないからハラハラしちゃうんですよね~」


俺以外の連中は妙にテストに関する苦労の話で意気投合し、話が盛り上がっているようだが俺にはやっぱり全く訳が分からないが、ひとまずアスナも今回のSAOサバイバーバトル大会には不参加と言う事か。黒の剣士キリトだけでなく、閃光のアスナまで不参加とは、こうなればもう俺の優勝を脅かすほぼ皆無なんじゃないか?
SAO時代に俺とキリトともう一人のユニークスキル使いのヒースクリフは最早この世の人間ではなくALOに現れるはずがない。
最終決戦でユニークスキル使いである事を明かしたエルダもALOでアカウントを作ったと言う話は聞かない。
俺の目の前のもう一人の参加者のクラインは刀使いとしての腕前は本物だが、キリトやアスナに比べればその脅威は低い。

俺「いける……200万円……取れるぞ!」

キリト「これで8500円かよ……随分と美味い仕事が世の中には転がってるもんだな……」

いつの間にか、キリト達はテストの話を終えて、ネット番組を眺めていた。俺はキリトが言った美味しい仕事という言葉に気を惹かれてキリト達と共にそのネット番組に目を向ける。

リーファ「何言ってんのよお兄ちゃん!あんないい加減なのダメだよ絶対に!」

クライン「ホントだぜ!8500円なんて俺が8時間みっちり働いて稼ぐ金と大差ねぇぞ!なんだよ3時間適当なことやっただけじゃねぇかアイツら!」

が、リーファとクラインが妙に不服そうな様子だった。番組の内容が気に食わないよ言うよりも、番組に映ってる連中に対して腹を立ててる様子だった。

そして次の瞬間、マイクを持ったリポーターの顔を見て、俺はその番組が何なのかを知ってしまう事になるのだった。

リポーター「ここ、東京都台東区山谷では、都が民間企業に対して委託しているホームレス支援事業と称し、実働僅か1分程度で8500円と言う疑惑の実態を調査した結果、清掃業務とは名ばかりのバスでの移動と、煙草の休憩、挙句には仕事をしている様子を装う写真撮影の上に、本来の終業時間よりも3時間以上も早く、午前中に切り上げて20人余りの労働者達に税金で賄われている8500円の給料を渡すと言う実態が判明しました!」

俺「昨日の奴かよ……!」

それはまさに前日、俺達にとって美味しい楽な仕事の実態を取材しに来たマスコミ連中の女リポーターで、間違いなく昨日の俺達の様子を撮影、放送している番組だった。
そして、宙に浮かぶスクリーンに映し出されている映像は早速、税金で賄われている事業で楽に金を稼いでいる労働者達への半ば強引な取材風景が映し出される。

恭史郎「ぐちゃぐちゃやかましいんだよあーん!」

真っ先に映し出されたのは、我が祖父の小田桐恭史郎!俺の祖父の、金に意地汚い姿がこうもあっさりキリト達にお披露目されてしまった……

恭史郎「取材がしたきゃ謝礼払いやがれ!先払いで最低1万だ!それが払えねーならマイクもカメラも向けてんじゃねー!」

リポーター「このお仕事は税金で賄われている事業ですよね?国民の税金でお給料をもらっていると言う自覚はあるんですか!?」

まさに昨日俺の目の前で繰り広げられた爺さんとリポーターのやり取りで、それを見たキリト達の反応は当然好ましいわけがなく。

リズベット「なにあの爺さん?あんな楽でいい加減な仕事で8500円も貰っておいて、今度は取材の人達に対して謝礼とかどんだけ根性腐ってんのよ!子供や孫の顔が見てみたいわよ!」

お生憎だな、孫ならすぐそばにここにいるんだがな。

シリカ「一生懸命……あの人達よりも真面目に働いてるのに、あの人達よりもお給料が安い人なんて沢山いるのにあんまりです!」

シリカも珍しく、ご立腹気味に声を上げて、頭の上のSAO時代からのペットモンスターであるピナも同調するように泣き声を挙げていた。

リーファ「ホント、あんな大人にだけは絶対になりたくないです!都から請け負った事業であんないい加減な事業をやってる民間企業も酷いけど、それを分かったうえで平気な顔でお金貰ってるあの人たちも最低ですよ!」

リーファが言う、絶対になりたくない大人、最低な人間には俺も含まれてるのか……


キリト達から発せられる言葉は苦言、不満、罵声!そしてオズマは思い出す、あの取材では自分も……バッチリと映されてしまっていた事に!


俺「おい、チャンネル変えろ!」

キリト「おいおいどうしたんだよ急に?まだ終わってないんだぜ」

これ以上これを見続けられれば高確率で俺が取材を受けた様子までこいつらに見られてしまう事を危篤した俺は大声でチャンネルを変えるように言いつける。
だが、連中はこの番組の続きが妙に気になっているようで誰も俺の言う事に応じる事は無く、俺がチャンネルを変えようにも、このVR空間の番組のチャンネルを変えるにはこのスクリーンを展開している奴が主導権をにぎっているので、俺が無理矢理買える事も出来ないまま―――

リポーター「まだお若いですよね?学校はどうしてらっしゃるんですか?親御さんたちはこの事をご存じなんですか!?」

俺「学校は小学校卒業してから行ってねぇし、親父も爺さんも知ってるけど、特に文句何て言わねーよ!てか、余計なお世話だっての!」


キリト「…………」

リーファ「…………」

リズベット「…………」

シリカ「…………」

ついに、俺が取材を受けている様子がネット番組に放送されて、それを目の当たりにしたキリト達は唖然とその光景を口を開けて無言で呆けてみる事になったのだった。

クライン「って、オズマじゃねぇか!オメ、何でテレビに出ちまってんだよ!?」

唯一、クラインだけは俺がテレビに出ているのをまるで羨ましがるように大声ではしゃいでいるが、これは決して羨ましい事などではない。

リポーター「それはご家庭の方に何か問題があると言う事なんでしょうか?学校に行くことを許されずに働く様に言われて―――あ、待ってください!」

結局最後まで、俺がその場から逃げる瞬間までバッチリとキリト達に見られる羽目になった。呆然と番組を見ているキリト達を尻目に俺は、声を掛けられる前にその場からログアウトしたのだった。


そして、オズマがログアウトした直後……!


リーファ「オズマさんって……少し前まで、イケメンな上に実はすごい優しい人だって思ってたのに……もしかして、言っちゃ悪いけど……普段はダメ人間?」

キリト「妹よ、絶対に本人の前でその言葉を言ってやるな」 
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