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空の黒騎士

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第二章

「だからな」
「ここはですね」
「何とかですね」
「不時着するぞ、不時着出来れば」
 それでというのだ。
「助かる、もうフランスも連合軍の手に落ちているんだ」
「それならですね」
「後は友軍に助けてもらえますね」
「そうだ、ここは友軍頼みだ」
 こう言ってだ、フランクは不時着に入った。その中で彼等の機体は徐々に降下していくがその彼等の横にだ。
 戦闘を続けているドライセの機体が来た、彼の機体はフランク達の機を撃墜した後も他の機体を狙っていたがアメリカ軍の数があまりにも多く多勢に無勢で彼等の機体以外は撃墜出来ないでいた。それで敵を狙っていてだ。
 たまたま彼等の機体の横に来た、その黒いフォッケウルフを見てだ。
 ボンズはバーンにだ、こう言った。
「撃ってやるか?」
「丁度横に来たからか」
「ああ、側面の銃からな」
 B-17にある銃の一つだ、機体の左右それぞれの扉を開けて撃つのだ。
「撃ってやるか」
「おい、相手は黒騎士だぞ」
 バーンはそのボンズに眉を顰めさせて応えた。
「爆撃機の銃なんかにな」
「当たるかっていうんだな」
「そうだ」
 それでというのだ。
「相手を考えろ、それにな」
「それに。何だ」
「黒騎士は自分が一度攻撃して墜ちていく相手は攻撃しないんだ」
「あれっ、そういえば俺達の機体もだな」
「そうだろ、騎士道精神なんだろうな」
「手負いの相手は攻撃しないか」
「正々堂々とだろうな、そんな相手に攻撃するのか?」 
 バーンはボンズにこう問うた、
「そうするのか?」
「やられっぱなしでいられるか、それじゃあな」
「やるのか」
「ああ、やってやる」
 こう言ってだ、ボンズは意固地になってだった。
 側面の銃について攻撃した、だがその銃撃は。
 ドライセの機体に見事なまでにあっさりとかわされた、バーンはそれを見てボンズに対して言った。
「ほら見ろ、相手が相手だ」
「爆撃機の機銃をただ撃ってもか」
「当たるか、二百六十機撃墜のエースだぞ」
 そこまでの相手だからだというのだ。
「当たるか」
「だからか」
「ああ、それに一度攻撃して墜ちるしかない相手はな」
 そうした騎士道精神を守っている相手だからだというのだ。
「そんなことするな、だから大人しくな」
「ここは墜ちてか」
「そうして助けてもらうぞ」
「そうするか」
 ボンズもここで遂に諦めた、そうしてフランクが操縦して不時着するその際の衝撃に備えた。幸い彼等は無事に不時着出来て後は通信により誘導していた友軍に助けられて事なきを得た。
 彼等を撃墜したドライセは結局この時は一機だけだった、だが彼はすぐにこう言われたのだった。
「夜にですか」
「ああ、そっちに回ってくれるか」
 基地司令は若々しい短い金髪と黒い瞳の青年に告げた。
「知っているだろう、我々は夜も爆撃を受けている」
「だからですか」
「今昼の方は数が足りているが」 
 しかしというのだ。
「夜の方はな」
「足りていないからですか」
「だからだ」
「私はこれからはですか」
「夜間爆撃の迎撃に行ってくれ」
 こう告げてだ、ドライセは乗機はそのままで夜間戦闘に回された。フォッケウルフは本来は夜間戦闘機ではないが今のドイツはそうも言ってはいられない状況だった。ドライセが夜間戦も出来るということでそちらに回された。 
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