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河童退治

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第一章

                河童退治
 加藤清正はこれまでの功が認められ肥後の半分を治める大名となった。
 彼は肥後に入ってすぐに領地の統治に入った、だが。
 彼はすぐにだ、肥後の民達の訴えを聞いて苦い顔で言った。
「まさかな」
「はい、河童がここまで多いとは」
「そしてしきりに悪さをして民達を困らせているとは」
「思いませんでしたな」
 家臣達も清正に言った。
「賊がいるとは思っていましたが」
「国人共が中々言うことを聞かぬとも」
「そして薩摩、大隅の島津家も気になりますし」
「色々難しいとは思っていましたが」
「しかし河童はな」
 どうにもと言うのだった。
「思いもしなかったわ」
「ですな、とかくあちこちの川や池は河童のものです」
「その数およそ九千だとか」
「特に筑後の川に多いです」
「その棟梁は九千坊といいますな」
「九千の河童か」
 実にとだ、清正は言った。
「そしてその棟梁だから九千坊か」
「左様ですな」
「西国一の河童だとか」
「その九千坊がやりたい放題しております」
「これは困ったことですな」
「しかしこの国を治めるにはじゃ」
 まさにとだ、清正は家臣達に述べた。
「河童共を何とかしてじゃ」
「そしてですな」
「川や池の治水をせねばなりませんな」
「何があろうとも」
「そうじゃ、人に悪さをさせぬ為にも」
 民達の願いを聞いてというのだ。
「何とかするぞ」
「では戦ですな」
「すぐに兵を集めてですな」
「出陣しますな」
「民に告げるのじゃ」
 血気に逸る家臣達にだった、清正は穏やかな声で告げた。
「国中から猿を集めよとな」
「猿ですか」
「猿をなのですか」
「集めるのですか」
「そうせよというのですか」
「そうじゃ、猿を集めるのじゃ」
 出陣し成敗するのではなく、というのだ。
「よいな」
「あの、どういうことなのでしょうか」
「何故ここで猿なのでしょうか」
「一体」
「どうしてなのか」
 家臣達はいぶかしまざるを得なかった、何故ここで猿なのかとだ。
 それで皆首を傾げさせたが清正の考えは変わらなかった。
 すぐに猿達が集められた、そのかなりの数の猿達を見てだった。清正は確かな顔で家臣達に言った。
「よし、これよりこの猿達をじゃ」
「どうするのでしょうか」
「一体」
「かなりの数ですが」
「河童共に負けないまでに」
「わし自ら率いて出陣させる」
 猿達をというのだ。
「筑後川、そして他の川や湖にな」
「領内のですか」
「そこにですか」
「出陣しますか」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦うぞ」
「あの、兵達ではないのですか」
「出陣するのは」
「違うのですか」
「兵達はよい、わし一人が猿を率いてじゃ」
 そしてというのだ。 
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