| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第79話:悩み相談蜜蜂

 
前書き
ハニービーモンよ、どうしてこうなった 

 
デュナスモンに完膚無きまでに叩きのめされ、敗れたブラックウォーグレイモンは山奥で修行していた。

本当は野生のデジモンと戦って経験を積もうとしたのだが、100本のダークタワーで作られた存在であるためか、ブラックウォーグレイモンが放つ力が半端ではなくデジモン達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出してしまうため、こうして山奥に籠もって修行していた。

「これでは駄目だ。奴は強い…パワーもスピードも俺より遥かに上。このまま修行を続けても奴を超えられる気がせん」

どうやらブラックウォーグレイモンは修行に行き詰まってしまったようだ。

それはそうだろう、1人での修行では限界があるのだから。

「よう、若えの…随分悩んでるみてえじゃねえか」

「む?」

後ろから声が聞こえて振り返ると先程は無かったはずの喫茶店と蜜蜂を思わせるデジモンのハニービーモン。

「お前が兄貴達の言っていたブラックウォーグレイモンか……迷惑のかからねえ場所で修行とは感心だな」

「何の用だ?」

「何、簡単な話だ。ブラックウォーグレイモン、俺はお前に興味があるんだ」

「興味だと?」

「兄貴達が一目置く程のお前の実力を確かめたくなったのさ」

「俺と戦うつもりか?」

ブラックウォーグレイモンはハニービーモンを見つめる。見た目で実力を判断するつもりはないが、ハニービーモンの実力は精々高く見積もっても完全体レベルだろう。

本来のハニービーモンと言うデジモンの戦闘力を考えれば規格外の実力だが。

「そうさ、俺もまたお前と同じ“追い掛ける者”だからな。お前が兄貴の親友のパートナーデジモンの“追い掛ける者”に相応しいか見てやるぜ…ああ、そうそう…事前に忠告してやるが…気を抜いたら…お前………死ぬぜ?」

「っ!!」

次の瞬間、ハニービーモンの全身から放たれる強烈な殺気にブラックウォーグレイモンは即座に構えた。

「(こいつ…強い…宿す力は俺より遥かに劣るはずなのに…何だこの異様な迫力は…!?)」

「ふん、見た目に惑わされないその感覚…大事にしとけ。それじゃあ始めるぜ…」

ハニービーモンも構えを取る。

片や成熟期のアーマー体、片や100本のダークタワーデジモン。

どちらが勝つかなど子供でも分かる実力差が両者には存在するが、ハニービーモンの放つ殺気と気迫がブラックウォーグレイモンの本能に警告させる。

ハニービーモンを侮ってはならぬと。

「ちょ、ハニービーモン!?…君、本当に大丈夫なんだろうね!!?」

「「店長!!」」

ハニービーモンとブラックウォーグレイモンの攻防を見守るチャックモン達。

ハニービーモンは危なげなくブラックウォーグレイモンの攻撃をかわし、小柄な体と高速移動を活かしたヒット&アウェイ戦法でブラックウォーグレイモンに攻撃を当てていく。

「ちっ!!」

「オラオラオラ!!」

小柄なハニービーモンでは何度殴ろうと蹴ろうがブラックウォーグレイモンに大したダメージは与えられない。

しかしハニービーモンは視認が困難な程に薄めた毒鱗粉を散布し、少しずつブラックウォーグレイモンの肉体を蝕ませていく。

「へっ、兄貴達が噂にしてるからどんな強者かと思ったらこの程度とはがっかりだぜ!!」

「何!?」

「お前は自分の体の異変にまだ気付かねえのか?」

「体…?…!?」

言われたことでようやくブラックウォーグレイモンは気付いた。

体が痺れて体が思うように動かないことに。

「戦いはパワーとスピードだけじゃねえ!!それを活かす頭がねえと本当の実力は発揮出来ねえのよ!!パラライズスティング!!」

頭の麻痺毒針をブラックウォーグレイモンの喉元に突き付ける。

「っ…」

「試してみるか?俺がお前の喉をぶち抜くのが先か、お前が俺を引き裂くのが先かをよお…」

不敵な表情で言うハニービーモン。

ブラックウォーグレイモンは全身から力を抜いた。

「俺の負けだ…」

万全の状態なら何とかなったかもしれないが、麻痺毒によって満足に動けない状態ではどうしようもないとブラックウォーグレイモンは敗北を認めた。

「へっへー、俺の勝ちだぜ。まだまだ若い奴には負けねえよ」

「俺はパワーとスピードにのみ目が行っていた。お前の言う通りそれを活かす知識が無ければ真の強者には勝てんと言うことを思い知らされたぞ」

「素直で結構だ。おーいお前ら飯にするぞ。せっかくだ、お前も食っていけ」

「「「ええ!?」」」

「何か文句あんのか?」

「「「いいえ」」」

顔に影がかかり、笑顔のはずなのに凄い迫力のハニービーモンにチャックモン達は首を横に振った。

ブラックウォーグレイモンを店の中に招き入れ、サンドイッチを出した。

「さあ、食え」

「…頂こう……美味いな」

サンドイッチを口にするブラックウォーグレイモン。

チャックモン達は少し離れた場所で食事を摂っていた。

「お前と戦ったことで俺にはまだまだ足りない物があると痛感させられた。感謝する」

「お前はパワーとスピードは充分だ。ただそれを活かすための知識が不足してるだけだからな」

「そうか……強いのだな…」

「俺もまだまだ未熟者さ。俺は今でも兄貴の背中を追い掛けてる。兄貴は人間だが、俺は未だに近付くことさえ出来てねえ。」

「そんなにそいつは強いのか?」

「力とスピードはデジモンの俺の方が強い。でもな、兄貴が強えのはそんな目に見える物じゃねえ。心が強えのさ…」

「心…奴が俺を生かした理由の1つか…ハニービーモン。俺を負かした強者のお前に1つ聞く。心とは何なのだ?」

「心とは何か…か…それは俺にも良く…いや、もしかしたら誰にも明確な答えなんて出せねえのかもなあ」

「普通のデジモンである……お前にも……分からない事なのか……」

「まあ、心がある分俺達は恵まれてるってことは分かる。色んな物を見聞きして美味い物食い美味い飲み物を飲む。そして色んな出会いをして感じることが出来る。そして勝負に負けたら悔しい、憧れの存在がいたらそれを目指して自分を突き動かす原動力になる。その原動力があることは多分恵まれてるってことだと思うぞ。少なくても色んなデジモンを見て、心を持たないマシーン型デジモンとか見てると俺はそう思う」

「何故だ?」

「マシーン型デジモンは基本的に与えられた命令しかこなさねえ。まあ、あいつらの存在意義を考えれば仕方ねえのかもしれねえがな。でも美味い物食っても何も感じねえ、出会いに何も感じられねえのは損だと俺は思ったね。心があるから俺達は考え、悩み、そして成長していく。」

「心があるから考え、悩み…成長していく…か…」

「ブラックウォーグレイモン、悩み苦しむことは確かに辛いかもしれねえがな。それで得られる強さがあるのも確かだ。お前は心がある。お前には他のダークタワーデジモンにはない成長って言う可能性が与えられたんだ。その可能性を大事にしな」

「そうだな……心…俺に与えられた可能性…少し信じてみるとしよう。お前に会えて良かった」

「ふっ」

ハニービーモンとブラックウォーグレイモンの会話を聞きながらチャックモンは頬をポリポリと掻いていた。

目の前にあんな凄まじい力を放っているデジモン相手に良く平常運転のままでいられるものだ。

というか日に日に図太くなっていくな我が相棒は…見習いたい、あのゴールドデジゾイド並みのメンタル。

「おーい、チャックモン。デザートのアイス」

ハニービーモンにデザートのアイスを出すように言われた。

「お前、甘いのは好きか?」

「嫌いではない」

「そうか、バニラアイスだ」

「はいはい」

チャックモンはエプロンを取り出して厨房に向かう。

「(ふふふ…僕のお手製アイスクリームはただのアイスクリームじゃない。厳選した材料と現実世界で勉強した調理法と僕の冷気を合わせることで空前絶後の美味しさを誇るのさ。アイスクリームの濃厚なバニラの味とシャクッとする氷の感触を味わうがいい。ん?何だって?か、勘違いしないでよね!!僕は店員としてお客様をもてなさなきゃいけないという使命を思い出しただけさ!!断じてアイスクリーム作りに集中することで思考を放棄してるわけじゃないんだからね!!)」

「とまあ、まずお前はそのだだ漏れなパワーを抑える方法を身に付けた方がいいな。俺がお前の動きを予測出来たのもお前のパワーがだだ漏れで何をするのか分かったからだからな。何なら今日からうちで働け、三食昼寝付きで修行をつけてやるぞ」

「そうか、ではしばらく世話になる」

「(僕達の店に最強の用心棒が出来ちゃったよ)」

喫茶店・MITSUBACHIに最強の用心棒のブラックウォーグレイモンが爆誕した。












おまけ

時系列は無印前。

今日はヒカリの誕生日と言うことで、ヒカリの誕生日を大輔達は祝うことになった。

「「ハッピーバースデー!!誕生日おめでとう!!ヒカリ(ちゃん)!!」」

「ありがとう2人共!!」

誕生日を祝ってくれる大輔とブイモンにヒカリは満面の笑顔を浮かべる。

「俺、ヒカリちゃんのためにケーキ焼いたぜ!……形が悪いけどさ」

「そんなことないよ!凄く嬉しい!ありがとう大輔君!!…大輔君、大好き!!」

大輔のヒカリへのプレゼントは手作りのバースデーケーキだった。

形は不恰好だが、一生懸命さが伝わってくるプレゼントだ。

そしてブイモンは、沢山の駄菓子だった。

「ヒカリ、俺は沢山の駄菓子をやるぞ!これは新商品のジャンボブ○ックサンダー。チョコクッキーをチョコでコーティングした駄菓子なんだ。美味いぜえ!!」

「ありがとうブイモン!!…でも、これどうやって手に入れたの?」

「普通に俺が買ったけど?」

「大騒ぎにならなかった?」

「大丈夫だ。あのお婆ちゃん。凄く肝が据わってた」

「そ、そうなんだ」

とにかくヒカリは大輔とブイモンからのプレゼントを嬉しそうに見つめるヒカリ。

そしてそんな大輔達を微笑ましそうに見守る大輔の両親だった。

因みに大輔の父親からは可愛い服を頂き、大輔の母親からは…。

「はいヒカリちゃん、これは私からのプレゼントよ」

「ありがとう…開けていい?」

「勿論よ」

ヒカリは丁寧にプレゼントの包装紙を解いて、中身を確認する。

「わあ、チビモン。チビモンのぬいぐるみ!!」

大輔の母親からのプレゼントはブイモンの幼年期のチビモンぬいぐるみである。

勿論売っている訳がないので、大輔母の手作りだろう。

「ヒカリちゃん、チビモンを気に入っていたしね。だからチビモンのぬいぐるみを作ったのよ」

「ありがとう!!」

ヒカリはチビモンぬいぐるみをギュッと抱き締める。

因みに1年後、白いハツカネズミ擬きデジモンが自分を差し置いてヒカリの睡眠のお供になっているチビモンぬいぐるみを見て激しく嫉妬するのは言うまでもないだろう。 
 

 
後書き
ハニービーモンはブラックウォーグレイモンに勝っちゃいましたが、あれは初見だから通じたのであり、まともにやり合ったら普通にハニービーモンは勝てません。  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧