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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE149 事件の後に・・・再開するSAO生還者たち

西暦2025年5月……東京都台東区山谷。オズマこと小田切弭間は父の時生、祖父の恭史郎と共に友人の柏木充の実家のノミ家を訪れていた……by立木ナレ


恭史郎「だぁ―――!!ダメだ駄目だ駄目だ!ミココノチカラダメじゃねーか!あのオヤジミココノチカラに大金次む見てぇな事言ってやがったから俺もそれに賭けたってのに負けてるじゃねーか!俺まで巻き添えで大損させやがてクソったれがぁぁぁ!!」

俺の祖父、小田桐恭史郎は今日も競馬に負けたようで、テレビに向かって賭けた馬に対して罵詈雑言の言葉を浴びせ喚きまくってた。
爺さん以外にも賭けに破れた中高年の男達が喚き声を挙げ続ける。ここにいる者達の大半は定職に就く事無く、日雇いの労働でその日暮らしの生活費を稼いでいる者や、囲い屋などの斡旋の元で生活保護を受給している者などなどで、奴らはなけなしの金をギャンブルで擦ってしまったのであった。

時生「あんたの言う大損って精々3000円くらいのもんだろうがよ?だいたい何でミココノチカラなんて冴えねぇ馬に賭けちまったんだよ?最近はあれだろ、マックロサキーってのが勝ってるんじゃな掛かったのかよ?」

恭史郎「黙れバカ息子が!俺は確かに前に競馬場に行った時に見たんだよ!次はミココノチカラにワシの人生を掛けるだとか言ってたオヤジがいやがったんだよ!だから何か勝算があるんじゃねーかって俺は思ってたのに飛んだほら吹きじゃねぇか!!」

俺「あ~あ、楽で稼げる日雇いの仕事ってのは、中々簡単にはあり付けねぇもんなんだな~」

当然、俺は爺さんの賭けの敗北などに興味は無く、そんな関係のない独り言をボヤいていた。結局、俺はあれから手元に残っていた20万円も既に殆どが日々の生活や遊びに消えて、今は仕方なく以前と同じ、地元山谷の日雇い労働やバイトで日々の生活費を稼ぐ日々だった。

最も、それも必要最低限の……気が向いた時に仕方ないと考えながらやる程度であったがな。

時生「つーか弭間よぉ。」

親父は爺さんの相手を程々に、煙草を加えながら、眠たそうな表情を俺に向けてくる。

時生「オメーはやっぱり通わねぇんだな。SAO帰還者とか言われてるガキ共が通う例の帰還者学校とか言われてる学校によぉ」

俺「んな、解りきった事聞くなよ。中学もロクに言ってなかった俺が今更なんでそんな行くんだよ……」

俺がめんどくさそうに目を背けて答えると、親父もそれ以上は特に関心が無さそうで、煙草を大きく吹かし、何も聞く事は無かった。

親父が言った帰還者学校と言うのは、デスゲーム、ソードアート・オンラインから生還した6000人のプレイヤーの内、ゲーム中高生相当の年齢の連中の為に急ごしらえに西東京市に設立された学校の事だった。
キリトやアスナ……俺以外の同年代のSAO帰還者達は今頃その帰還者学校とか言う所に通っているようだが、そもそも小学校を卒業してからまともに学校に登校していなかった俺が今更学校に通う気になど慣れず、俺はこうして以前と変わらぬ日雇い労働とバイトを適当にこなす日々に戻っているわけだった。

ALOにログインするとキリトとか、他のSAO時代の知り合い共に学校に通う事を進められるのだが、俺の答えは何時だってNO。これからも今更学校に通うなんて正気の沙汰じゃない事を言う事は無いだろう。

そもそもあの学校はただの学校ではなく、俺からして見りゃ政府が俺達SAO帰還者を犯罪者予備軍と見なし、一箇所に集めて管理する事を目的にした収容所みたいなところでもある。
事実キリト達が言うには、あの帰還者学校に入学して以来、月に一度のカウンセリングとアミュスフィアによる脳波の測定があると愚痴っていたっけな。

ちなみにALOの方は一月下旬……俺とキリトが世界樹に侵入したあの一件の直後に、須郷による事件が発覚すると同時に、アスナを始めとした300人ほどのSAO帰還者達はようやく現実世界に解放された。
しかし事件の影響によってALOの運営は一時中止となり、存続そのものが危ぶまれたのだったが、事件後、ALO運営会社のレクトはユーミルとか言うベンチャー企業から運営中止に追い込まれたALOの全ゲームデータをレクトから無料同然で譲り受け、最近になって再び大幅なアップデートと共に運営が再開されたばかりだった。

俺「にしても、アイツ――茅場の事はやるせねぇな……アイツを法で裁けねぇなんてな……」

時生「仕方ねーだろ。4000人を死に追いやったマッドサイエンティストはもうこの世の人じゃねぇんだからよ」

俺「……だとしても、やっぱり許せねぇ。奴が仏になろうが悪霊になろうが、アイツは4000人の命を……生身の人間を頭のネジのぶっ飛んだゲームの舞台の上で、実験動物同然の扱いで殺しやがったんだからな……!」

2024年11月のソードアート・オンラインの崩壊と当時に、茅場晶彦は死亡していた。その事が明らかになったのは今から二カ月前の――2025年の3月の事だった。

時生「茅場とか言う奴が潜伏してたのは、長野県の人里離れた森の奥の山荘だったらしいな」

俺「ああ、二年間も警察の目をまんまと欺き続けたわけだ。奴のナーヴギアには案の定、HPが0になっても脳が焼かれる仕掛けはないわ、自由にログアウト出来るわだったって事もな」

もっとも、SAOでは血盟騎士団の団長のヒースクリフとしてログインしている時間は連続で最長で一週間以上の時もあったらしく、その間奴の身体の世話をしていたのは、茅場の東都大学時代の後輩の神代と言う、俺もエルダが持ってきた写真で顔だけは見た女だった。

俺「倉崎の野郎が言うには……須郷は大学時代にその神代って女に惚れてたが、神代は茅場の女だったから結局、茅場に研究者としても恋愛でも負けたとかで、倉崎の奴が爆笑しながら話してやがったな。」

時生「後輩いびりが趣味だったとは、その須郷とか言う奴が歪んだ原因の一つは奴にあったってわけか」

最も、倉崎は須郷が逮捕された事を知っても、まるで罪悪感や責任感など皆無な様子で、後で神代似の女が出てるエロ本でも持って言ってやるだとかゲラゲラと下品に笑いながら語っていたがな。

キリトはその神代と言う女に色んな手を尽くして会ったらしい。俺としては、最終的に茅場に手を貸した神代と言う女に対しても、どんな経緯があったかは知らないが4000人の生身の人間を死なせた男の共犯者と言う認識なので文句や恨み言の一言くらいは言ってやりたい気分だった。

俺「茅場と言い、その神代とか言う女と言い……あのSAO事件で結局法的に裁かれた奴は誰もいねぇんだよ」

時生「気の滅入る話はその辺にしとけって」

親父は俺の肩をやや乱暴にバンバンと叩くと、空になった俺の透明のコップにビールを注ぎ込む。

時生「今日だっけか?あのダイシー・カフェって店でオフ会ってのがあるのはよ」

俺「ああ、エギル店じゃ、酒は飲ませてもらえないだろうけどな……歩いて行ける距離だし、暇潰しに行ってくるかな」


※ ※ ※


エギルの店ダイシー・カフェのドアには手書きの文字で【本日貸切】と書きなぐられていた。俺が店に入ると、SAO時代に散々見知った顔の連中が既に大して広くない店内にぎっしりと溢れていた。

リズ「なによ、遅いわね~。アンタの家ってこの店の近くなんじゃなかったの?」

俺「出会い頭に文句ダラダラかよ……」

帰還者学校から帰って来たばかりなのだろう、制服姿のリズベットが進み出て早速小言を口にしてきた。

俺「ま、キリトとアスナよりかは早く来てるから良いだろ?」

リズ「当然でしょ、主役には最後に来てもらうのが定番だからアイツにはワザとちょっと遅い時間を伝えておいたんだから。それとキリトの妹のリーファ……直葉も来るって言ってたわよ」

俺「つうか、今日のオフ会を企画したのはお前とキリトとエギルだって聞いたけどよ、それってキリトが本当に話に加わって進めてたのかよ……」

リズ「あはは、なわけないじゃな~い!キリトの知らないところで話進めまくったからアイツがきっと一番驚くんじゃない?」

リズはオッサンのような豪快な笑い声をあげて、のうのうとそう答えたのだった。そんなリズと俺のどうでもいい会話の中に、久々に聞く事になる、久々に会う事になる、調子づいたそいつが現れる。

ユッチ「オズマさぁ~ん!待ってたっすよオズマさぁ~ん!!」

リズ「あ、アンタの可愛い弟分が早速来たわよ」

俺「あれが俺の弟分だって……これ以上面倒な家族はいらねぇよ……」

既に祖父と親父だけで面倒な家族は両手に収まり切らない規模になっている。ここにユッチが加わるなんて想像するのも恐ろしい……

ユッチ「さっ、さ、オズマさんこっちに来てくださいよぉ~。話したい事がいっぱいあるんすから~」

ユッチはニタニタとしただらしない笑顔を俺に見せつけて、俺の手を掴みそのままカウンターの椅子まで俺を運び座らせる。

ユッチ「いやぁ~、ホントずっと会いたかったすよオズマさ~ん。元気してたっすかオズマさん?」

俺「お前の元気だけで充分腹いっぱいだ――つか、お前が俺に話したい事ってのは……」

ユッチ「いやぁ~、どうしても直に話したくって~」

俺「前に伝えた事あったろ、あの金はもうとっくに無くなっちまたってな」

そう、ユッチが俺に話したいと言うのは言うまでも無く俺がSAOのリアルマネーゲームで得た2000万円の話の事だった。
既にあの金の殆どはディンゴの弟の治療費に渡してしまったと言う事は総務省の役人を通じて伝えたはずなのだが―――

ユッチ「あっはっはっ!オズマさんったら冗談きっついすよぉ~。2000万円なんて大金が数か月かそこらで無くなるわけないじゃないっすかぁ~」

この通りユッチは俺の話を冗談だとしか思っておらず、今日もこうして会うなり早々に、同じギルドメンバーでありながらこの場にいないレイナやエルダの事には全く触れる事無く、金の話に目を輝かせていた。

俺「つうか、その内の1000万円はそもそも最初からディンゴの取り分だってお前も知ってるだろろうが……」

ユッチ「やだなぁ~、オズマさんが金の延べ棒を二本持ってて、オズマさんがあのマネーゲームをクリアしたんだから2000万円全部がオズマさんの物って事で良いじゃないっすかぁ~!んで、2000万円はいったい何に使うか決まってるんっすか?」

俺「全然聞いちゃいねぇな」

ユッチ「2000万円あれば、女の子をあんな事やこ~んな事もし放題じゃないっすかぁ~。最新型のパソコンとかスマホとか、何だって買えちゃうっすよぉ~」


ユッチ……有頂天に語る!!まるで2000万円を自分の金であるかのように浮かれまくり、その大金……実際には既にオズマの元にはほとんど残っていない大金をどのように使うか、その事を妄想し、現実世界にいながら夢の中に浸り続けるのであった!! by立木ナレ


俺が適当にユッチの夢妄想話を聞き流してしばらく時間が経つと、この場にいない―――ワザと集合時間を遅らされて伝えられている主役たちがやって来たのだろう。
キリトを先頭に、アスナとリーファが続いて店内に足を踏み入れて、顔を見せると。店の中の連中は一斉に歓声、拍手、口笛を盛大に巻き起こす。

俺「ほら、お前もクラッカー鳴らせよ」

ユッチ「ちぇ~、キリトの野郎が主役ってのが何かつまんないっすよねぇ~」

さっきまで浮かれ切った顔で金の使い道の話をしていたユッチは、キリトの顔を見た途端に、不貞腐れたような表情になった。
ともかく俺とユッチは同時にクラッカーを鳴らした。

キリト「―――おいおい、俺達遅刻はしてないぞ」

呆気にとられてキリトはそう言ったのだった。そんなキリトにリズベットが近寄り出て言う。

リズ「へっへ、主役は最後に登場するものですからね。あんた達にはちょっと遅い時間を伝えたのよん。さ、入った入った!」

キリト達三人も店内に引っ張り込み、キリトを店の奥の小さなステージに押し上げてドアが閉まる。直後に店の中のBGMが途切れて、照明が絞られ、本日の主役のキリトにスポットライトが浴びせられるのだった。

 
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