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カブソ

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第一章

               カブソ
 八条学園高等部商業科に通い中学は地元で三年間同じクラスだった秋田麻友と山形葵はこの時学校が半日で終わり部活もなかったことを利用して大阪の道頓堀に出ていた。
 麻友は明るい顔立ちで大きな目がはっきりしている、腰までの髪の毛が奇麗なブロンドであるのはポーランド人の母親の血だ。大きな胸もそうである。背は一六〇程で黒いブレザーに白いブラウス、グレーと黒、白のタートンチェックのミニスカートに赤い大きなりぼんという制服だ。
 葵は麻友と同じ制服だが青いネクタイで首を飾っている。胸は一見麻友程ではないが実は脱ぐと凄いことはクラスでも話題になっている。胸の付け根まである黒髪を左右で三つ編みにしていて丸い感じの目をしている、黒い眉が真面目な印象を与える。背は麻友と同じ位だ。
 二人で道頓堀を歩いているがここで麻友が葵に言った。
「昔の道頓堀ってもっと違ったらしいね」
「外国の人が少なかったのよね」
「お母さんが言ってたわ」
 ポーランド人の母がというのだ。
「お母さんがこっちに来た時はね」
「その時はなのね」
「今よりずっと外国の人達がね」
「少なくて」
「もっと違う感じだったらしいわ」
 中国語それも北京語に広東語が聞こえ英語もアメリカ訛りのものがあればオーストラリア訛りもある。アラブ系と思われる女の人がタコ焼きを食べている。
 その街中を歩きつつだ、麻友は葵に言うのだ。
「日本人が殆どで」
「今も何だかんだで日本人多いけれどね」
「主流でね、あとね」
「あと?」
「昔はもっと吉本のカラーだったそうよ」
 葵にこのことも話した。
「どうもね」
「吉本って」
 関西を象徴する芸能プロの名前が出てだ、葵はこう返した、
「すぐそこじゃない」
「なんばグランド花月ね」
「歩いて行ける距離よ」
 まさに道頓堀から目と鼻の先だというのだ。
「だからね」
「吉本カラーも」
「普通でしょ」
「いや、それがね」
「昔はなの」
「もっと吉本強かったそうなの」
「昔の吉本っていったら」
 昔と聞いてだ、葵は麻友に考える顔になって答えた。二人共ここでひっかけ橋のところに来て声をかけられたが空気の様にあしらっている。
「やすきよいて巨人阪神の極盛期で」
「さんまさんもそうでね」
「紳助さんがいてサブローシローいて」
「あとねいくよくるよもいて」
 葵は女性漫才コンビの名前も出した。
「それでね」
「凄かったわね」
「あれだけ凄かったら」
「今は結構東京の事務所の方が元気だから」
「ダウンタウンとかがね」
「その分ね」
 どうかとだ、麻友も言った。
「それじゃあね」
「昔がもっと吉本の色が濃かったことも」
「当然ね」
「そうなるわね」
「確かに」
 麻友は葵のその言葉に頷いた。
「吉本の人材が凄かったわね」
「本当にね」
「何かお父さんが言うには」
 麻友は今度は父の名前を出してだ、腕を組んで考える顔になって話した。二人で蟹や河豚やくいだおれ親父の前を歩きながら。 
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