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麗しのヴァンパイア

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第八十九話

                   第八十九話  たった一文字
 美奈子は華奈子にビクトル=ユゴーの話をさらにした。
「沢山の作品を書いてきて」
「それでなのね」
「そう、今もよく読まれていて」
 それでというのだ。
「日本語訳の本もあって」
「学校の図書館にもあるわね」
「私もそれ読んだの、ただね」
「ただ?」
「学校の図書館にある本は子供用みたいよ」
 そうした本だというのだ。
「難しい部分を省略したね」
「そうした本なの」
「だから一冊の本にまとめてるけれど」
「実際は違うのね」
「ああ無情は分厚い本に四冊あるらしいの」
「四冊もあるの」
「そう、凄く長いでしょ」
 美奈子は小学生の活字の本に対する単位から華奈子に話した。
「それだけあるのよ」
「そんなにあったら読むのに凄い時間かかりそうね」
「先生が言うにはしかも文章が暗いらしいの」
「暗いの」
「それで怒られてるみたいだって」
「何か読みにくそうね」
 ここまで聞いてだ、華奈子はどうかという顔になって美奈子に返した。
「あたしそうした本は駄目なのよ」
「華奈子は明るい作品好きだからね」
「小説でも漫画でもね」
「ハッピーエンドのお話好きよね」
「文章も明るくてね」
 それでとだ、華奈子も答えた。
「そうした作品が好きだからね」
「じゃあああ無情は」
「暗いんだったら」
「暗いけれどね」
 それでもとだ、美奈子は話した。
「それでも展開は痛快でね」
「そうなの」
「ヒロインのピンチを助けたり」
 主人公のジャン=バルジャンがコゼットを救い出したりするのだ、他にはジャン=バルジャンが危機を乗り越える場面も多い。
「そうした展開が多くてハッピーエンドよ」
「それだけ聞くと面白そうなのに」
「それが文章がね」
 日本語訳のそれがというのだ。
「どうもね」
「暗いからなのね」
「そうした作品になってるみたいなの」
 長くて暗い作品になっているというのだ。
 美奈子は華奈子にユゴーの代表作の一つから話をはじめた、それは決して華奈子にとって好きになりそうなものではなかったが華奈子は確かに聞いた。


第八十九話   完


                   2018・9・19 
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