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レーヴァティン

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第八十話 繁栄の中でその九

「みぐるみ剥ぐまではしていない」
「持っている金がすってんてんになったらね」
「それで返すな」
「そこでさらに金を貸したり服まで剥せるのがね」
「ヤクザ屋さんだな」
「そうだね、他人をとことんまでむしゃぶり尽くすのがだよ」
 まさにとだ、女も語った。
「本物のヤクザ屋さんだよ」
「本物の外道がな」
「まだ普通に賭場やテキ屋やってるならいいさ」
 柄は悪くとも、というのだ。
「それじゃあね、だからあたしもだよ」
「この店にいたな」
「そうだよ、けれどね」
「今日でだな」
「終わりだね、名残惜しいけれど時が来たんだね」
 女の口調はしみじみさえしていた、饅頭や団子を食いつつもそうした口調になっている。
「それじゃあね」
「頭に挨拶をしてか」
「出るよ」
 この賭場、店をというのだ。
「そしてあんたと一緒に行くよ」
「もう十人いる」
「ああ、じゃああたしを入れたら」
「最後の一人だ」
「なら次は水戸に行くといいよ」
「納豆の街か」
「そこで真顔で言うんだね」
 水戸を納豆の街と言った英雄にどうかという顔で突っ込みを入れた。
「冗談じゃなくて」
「水戸といえばそうだな」
「それはそうだけれどね」
 女も何だかんで水戸イコール納豆は否定しなかった。
「水戸っていえばそうだね」
「そうだな、納豆だな」
「その納豆の街に最後の一人がいるみたいだよ」
「そうか、あの街にか」
「そう聞いたらだね」
「次は水戸だ」
 この街に行くことをだ、英雄は決めた。
「あそこに行ってだ」
「そうしてだね」
「最後の一人を仲間に入れてだ」
「そこから世界を救うんだね」
「この島を統一してな」
「そうしてだね」
「世界も救う、魔神を倒してな」
 海にいるこの世界を脅かしているという存在もというのだ。
「そうする」
「わかったよ、じゃあ一緒に行こうね」
「これからな、それでだが」
「あたしのことだね」
「職業は聞いた」
 博打打ちというそれはというのだ。
「しかし名前は聞いていないな」
「安城桜子っていうんだよ」
「安城か」
「桜子でいいさ」
 その女、安城桜子はこう英雄に返した。
「八条大学社会学部の二回生だよ」
「やはり俺達の大学にいるか」
「東京から出て来てるんだよ」
「そうか、江戸からか」
「昔で言うな、高校まであそこにいたんだよ」
「そして高校を卒業してか」
「大学こっちに合格したからな」
 それでというのだ。
「今はこっちにいるんだよ」
「神戸はどうだ」
「関西自体があれだよ、異文化感じたよ」 
 笑ってだ、桜子は英雄にこう返した。
「蕎麦も何もかもが味が違ってな」
「同じ料理でもだな」
「蕎麦、ざるとかせいろのつゆだってな」
「大阪のものとは違うな」
「それでだよ、何だって思ったよ」 
 実際に食べてというのだ。 
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