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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と強化合宿編
  NO.083 最悪の結末

 
前書き
更新します。 

 



合宿施設では切島や上鳴などがブラドに「行かせてください!」と何度も言っていた。
だがブラドはそれでも許可はしなかった。
なんで一応は安全な場所にいるのに自ら死地に飛び込んでいかせようと思う事か。
まして相澤の戦闘許可が下りたとはいえまだ一生徒に過ぎないのだ。
大事な生徒達を行かせるわけにはいかないという判断である。
と、そこに部屋の外から何者かの気配を感じて、

「きっと相澤先生だぜ! 直談判だ!」
「いや、違う!」

瞬間、扉は炎で燃やされ吹き飛びそこから荼毘が姿を現した。
荼毘がまた炎を出そうとしているがそんな事など許さないとばかりにブラドが個性『操血』を使って血のベールで荼毘を抑え込むことに成功する。

「ここまで攻め込んでくるとはいい度胸だな、ヴィラン! 舐めているのか?」
「そりゃ舐められるだろうな、思った通りの言動で笑えるよ。そもそもだ、後手に回った時点でお前らは負けてんだよ」

荼毘は語る。
ヒーロー育成の最高峰である雄英高校。
そしてヒーローの頂点に君臨するオールマイト。
この二つが合わさったことで強力な地盤が出来ている。
だが、それを脅かされれば途端に地盤はもろくなってヒーロー社会にも影響を及ぼすほどの大事になると。

「……何度も襲撃を許す杜撰な管理体制。―――そして挙句に『生徒を犯罪集団に奪われる弱さ』……」
「「「「ッ!?」」」」

その場の一同はその言葉で動揺する。
荼毘の言葉が正しいのならば誰かがもうすでに誘拐されていることになるからである。
そしてA組の面々はすぐにとある顔を連想した。

「まさか、緑谷を!?」
「そーいうことかよ。ぶっ飛ばすぞてめぇ!?」
「ふっ……見ていろ。少数精鋭でお前らの事をずたずたにして―――……」
「無駄だブラドッ!」

荼毘が最後まで言い切る前に相澤が姿を現して荼毘をコテンパンに打ちのめしていた。
全員が相澤の登場に安どの笑みを零す。

「こいつは煽るだけでなんも情報は出さねぇよ。見ろ、どういう個性か知らんがこいつはニセモノだ。さっきも一回戦ったからな」
「イレイザー! お前、何をしていた!」
「悪い。戦闘許可を取りに行ったんだが途中で洸汰君と……そして少しやばめの爆豪を緑谷に託されたんでな……」

それで全員は洸汰の隣で青い顔になって荒い息を吐いている爆豪を目撃する。

「爆豪!! おい、大丈夫か!?」
「切島。下手に動かすな。洸汰君の話によれば爆豪はヴィランに腕を切られちまって大量出血で高熱を発症しているからな」
「腕を!? で、でも……これってもしかして」
「ああ。緑谷がなんとか繋げたらしい……だが今すぐにでも安静にさせないと命に関わる。ブラド、警察と救急はもう呼んであるのか……?」
「ああ」
「わかった。俺はもう一度現場に向かってケガをしている奴らを連れてくる……」
「先生! それじゃ俺達も!」
「ダメだ」

それで相澤は今の状況を手早く説明して、すぐに出ていった。
生徒達はそれで悔しそうにしていたのは言うまでもない。








場面はMr.コンプレスが出久と常闇を奪ったところから始まる。

「返せ? 嫌だね。せっかくここまでの事をしたんだからこれくらいの報酬はないとやってられないな」
「どけ!」

飯田と障子がいる場所をどかして轟が氷を展開するがまるで猿みたいにMr.コンプレスは何度もはねて氷の柱を交わしていく。

「我々はただ凝り固まった価値観に対して『それだけじゃないよ』という道を示したいだけだよ。今の子たちは価値観に道を選ばされて自由な選択性を失っているからね」

そう言いながらMr.コンプレスは空へと跳んで何度も跳ねていく。

「わざわざ話しかけてくるなんて……舐めてんだろ!?」
「もともとエンターテイナーなものなんでね。当初の目的通りに緑谷さんは貰っちゃったよ。常闇君もムーンフィッシュを倒すほどの凶悪性を秘めている。だからついでにって感じだね」
「緑谷君と常闇君を返すんだ!!」

飯田が叫ぶ。
轟はお茶子に円場を預けて全力の大氷河を展開するが、それでもMr.コンプレスはまたしても簡単に避けてしまう。

「悪いね。もともと戦闘能力は低いんでね。だから雄英生徒なんかと戦ってられるか。
『開闢行動隊!目標の回収を成功! 短い間だったがこれで幕引きだ。予定通りに五分後に指定された地点へと合流せよ』……というわけだ。チャオ♪」
「幕引き、だって!?」
「ダメだ! させねぇ! 絶対に逃がすな!!」

それで全員はMr.コンプレスの後を追っていく。




Mr.コンプレスの指定した合流地点にはすでに本体の荼毘と、そして荼毘の分身を作っていた男・トゥワイスがいた。
作戦成功に陽気に話し合っている中で、しかしそこにはA組の生徒の青山が茂みに隠れて息をひそめていた。
傍らにはガスマスクをして気絶している耳郎に葉隠の姿もある。

「(みんな、戦っている……ぼ、僕はどうすれば……!)」

一回だが茂みから顔を出してしまった青山は運悪く荼毘と目が合ってしまった。
それで近づいてくる荼毘。
だが、トゥワイスが荼毘に話しかける。

「あー、そういえばよー。脳無って奴を呼ばなくてもいいのか? お前の声だけに反応する仕様だろ?」
「……いけねぇ、忘れてた。だからなんのために戦闘に参加しなかったのかって感じだな」

荼毘はそれでもう青山には興味を無くして脳無を呼び戻す。



その脳無とは今現在B組の泡瀬と八百万の二人を追いかけていた。
体中から大量の凶器を出して今か今かと切り刻まんとし迫ってくる。
もう泡瀬は泣きそうになりながらもなんとか八百万を抱えて必死に走っていた。
だがついにその凶器が二人に届きそうになった時に、その脳無は急に動きを止めて撤退を始める。

「な、なんだったんだ……?」
「…………」

呆然とする泡瀬とは対照的に八百万は深く考えていた。
戦闘行動をやめたという事は、もしかして飯田が殺されたか、もしくはそれ以外の目標が完遂できたのか?

「(まさしく最悪な状況! でも、百! 最善を推し量りなさい!)」

八百万はあるものを創造する。

「泡瀬さん、“これ”をあの脳無に個性で結合してください!」
「な、なんで!?」
「いいですから! 手遅れになる前に!」
「あー、もう分かったよ!」

それで泡瀬は今だにのそのそと歩いて撤退している脳無に己の個性である『溶接』で“それ”を張り付けた。

「これでいいんだな!?」
「はい。ありがとうございます……」
「とにかく逃げるぞ!」

これ以上は出来ることはないと八百万も感じて大人しく撤退をするのであった。






広間ではスピナーとマグネも虎とマンダレイと拮抗した戦いをしていたが、

「よし。これでお終いか。眼鏡君を殺せないのが心残りだが仕方がないな……」
「逃げるわよ」
「逃がさんぞ!」

虎が追撃を駆けようとするが、そこに突如として黒い霧が出現する。

「お、ちょうどよかったみたいだな」
「ええ……。お二人はもう潜ってください」

スピナーとマグネはその霧にすぐに入ってしまい、いなくなってしまった。

「くッ!!」
「逃がしちゃった……」

悔しがる二人。
そして未だに通信に反応してくれないラグドールの心配をしたのであった。






Mr.コンプレスを追いかけている一同。

「くっ! 意外に早い!」
「飯田! お前だけでも先行しろ! すぐに追いつく!」
「いえ、轟ちゃん。それはダメよ。ヴィランの狙いの一つには飯田ちゃんの抹殺も含まれているのよ!? 下手に一人にしてなにかあったら……」
「では、どうする!? 緑谷に常闇がこのままでは!」
「デクちゃんだったらこんな時!」

お茶子がそういう弱音を吐いてしまう。
そうだ、いつも出久の機転の速さでいつも助けられていた。
だが、今その出久はヴィランの手に落ちている。
だから頼れない!

「(考えろ! 考えろ! こういう時デクちゃんはどうするか!)」

お茶子は必死に考えた。
そして自分なりの最適を思いつく。

「飯田君! 轟君と障子君の手を持って全力疾走して! 私が二人を軽くするから! これなら飯田君も一人にならないで済むから! 頃合いになったら私も解除する!」
「それが、最適か……」
「麗日……頼む!」
「うん! その代わり必ずデクちゃん達を!」
「ああ!」

それで軽くなった二人を持った飯田が今出せる全力疾走をする。

「いくぞ! レシプロバースト!!」

今切らずにいつ出すのだという思いで飯田はレシプロバーストを展開して二人を抱えたまま疾走した。

「おおおおおおおおおーーーーーー!!!!」
「なっ!?」

Mr.コンプレスはそれで驚いている。
まさか自身の速さに追いついてくるなんて思いもせずに。
そして飯田は加速もそこそこに時間制限がある中でMr.コンプレスの頭上へと跳びあがった。

「麗日君! 今だ!!」
「解除!!」

飯田の叫びにお茶子はすぐに個性を解除する。
そしてMr.コンプレスの背中を踏みつけて飯田は地面へと落下していく。
だが、タイミングが悪かった。
墜落した場所がよもや開闢行動隊の集合場所とは思うまいという感じで。
荼毘達もそんなMr.コンプレスと生徒達の登場に驚きの表情をする。
だが、荼毘はすぐに行動に移す。

「Mr.、避けろ」
「了解」

Mr.コンプレスは己の事自体を球体にして荼毘の放つ炎を回避する。
だが、それに晒された三人はたまったものではない。
なんとか轟は避けることに成功するが、飯田は足を、障子は腕を燃やされて火傷を負う。
特に飯田はひどい。
限界ギリギリまでの足の酷使でさらには火傷でもう走ることもままならないだろう。
だが、なんとか追いついた。
せめて出久と常闇の二人を取り返すまでは我慢しないとという気持ちで飯田は踏ん張っていた。
そしてそこにいたヴィラン達と戦闘を開始する轟達をよそにMr.コンプレスは球体から元の姿に戻って、

「やれやれ……やっぱりただじゃ逃がしてくれないようだね」
「緑谷は?」
「ほれ、この通り……あれ?」

Mr.コンプレスがポケットから球体を出そうとしたのだがそれがないことに気づく。

「二人とも、撤退するぞ! 今の行為で確信した。なんの個性かは分からんが俺たちに見せびらかしていたものは、右ポケットに入っていたこれが緑谷に常闇だろう?」

障子がいつの間にか二人の入っているであろう球体をMr.コンプレスから奪っていたのだ。

「でかした! 飯田! いけるか!?」
「ああ!」

それで逃げ出そうとする三人であったが、そこに黒い霧が姿を現した。
ヴィラン連合の黒霧であったのだ。

「時間どおりですね。撤退しますよ」
「おい、だが目標は……」
「大丈夫ですよ。フフフ……走り出すほどに嬉しかったのでしょうね。そんな君たちにプレゼントを上げようか。俺の悪い癖でね。マジックの基本で人にそれを見せびらかすときっていうのは―――――……見せたくないモノ(トリック)がある時だぜ?」

Mr.コンプレスの口には出久と常闇の閉じ込められている球体があった。

「ッ!?」

瞬間、障子の持っていた球体はもとの形に戻る。
そこには轟の放った氷が出現したのだ。

「ダミーを用意していたのさ。それを意気揚々と掻っ攫っていく光景はおかしかったぜ。とにかくこれでお後がよろしいようで――――……」

Mr.コンプレスも黒霧の影の中に入っていこうとして、突如としてどこからともなくレーザーが伸びてきてMr.コンプレスの仮面を破壊して二人の球体を宙に浮かす。
青山が勇気を振り絞って茂みの中から放ったのだ。
そこを三人はすかさず走り出すが、飯田は足の火傷が祟って転んでしまう。

「ッ!」

障子はなんとか常闇の球体を手に取ることに成功するが、轟は出久の球体を取る寸前に先に荼毘が掴んでしまい、

「哀しいなぁ……轟焦凍」
「くそっ!」
「確認だ。“解除”しろ」
「ったく、なんだよ今のレーザーは……俺のショーが台無しだよ」

そう言いつつ個性を解除する。
そこには気絶している出久の姿が出てきて、すかさず荼毘は出久の首を掴んでいた。

「問題なし……」
「緑谷ぁぁぁ!!!!」
「緑谷君!!」
「緑谷!!」

三人の叫び声も虚しく出久は陰に包まれてそのまま連れ去られてしまった……。






こうして完全敗北してしまったのだ……。
その後はブラドの連絡によって警察やその他の機関が到着した。
生徒の40名のうち、ヴィランのガスの攻撃によって意識不明の重体が15名。
重・軽症者12名。
無傷で済んだのは12名だった。
そして……最後に行方不明一人。
六人のプロヒーローは一人が頭の傷で重体。
一名が大量の血痕を残して行方不明。

ヴィラン側は三名の現行犯逮捕。
彼らを残して他のヴィランは全員姿を消してしまった。

…………こうして楽しいことになるはずだった合宿は最悪の結果に終わってしまったのだ。















「うっ……ここは?」

出久はふと目を覚ました。
暗い部屋の中で、しかし誰かの気配を感じる。

「――――やぁ、緑谷出久さん。初めましてだね」
「あなたは……!」
「そうだよ。僕がおそらく君が知っているだろうオールフォーワンだ……」

出久は最悪の対面を果たしていた。

 
 

 
後書き
一気に書き上げました。5000文字を超えたのは初めてかも。

最後に出久とAFOを合わせて合宿編は終わりとなります。 
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