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戦国異伝供書

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第十九話 急ぎ足その十

「槍に弓矢、何よりもな」
「鉄砲をですな」
「持たせてな」
 そうしてというのだ。
「三河に進ませるぞ」
「そして木と縄もですな」
「それもじゃ、この時の為に用意しておったが」
「それもですな」
「持たせてじゃ」
「武田家と戦いまするな」
「三河口では引き分けた」
 信玄自ら率いる武田家との戦はだ、それに終わり信玄が兵を退けてそのうえで戦は終わった。そうした流れになった。
「しかしな」
「今度はですな」
「必ず勝つ、その為にな」
「木と縄もですな」
「使う、相手は馬を使うが」 
 武田の騎馬隊だ、その強さは信長もよく知っている。天下にその武名を知られた者達であるからだ。
「その馬にもな」
「勝てまするな」
「騎馬隊とて無敵ではない」 
 信長は鋭い目になって言った。
「それを見せる時じゃ」
「武田との戦では」
「上杉との戦でもそうじゃが」 
 上杉家も騎馬隊を使う、それでこう言ったのだ。
「騎馬隊は強い、しかし」
「無敵ではないのじゃ」
 だからこそというのだ。
「その為のものじゃ」
「木と縄は」
「用意させた、これで勝つぞ」
 こう言ってだ、信長は兵達に具足を着けさせ槍や鉄砲も持たせてだった。そのうえで尾張から三河に向かわせたが。
 夜に気配を感じてだ、こうも言った。
「これまで以上にな」
「真田の忍達がですな」
 慶次が言ってきた。
「いますな」
「お主にはわかるな」
「ははは、それがしは忍の術も心得ていますので」
 慶次は信長に笑って応えた、彼は傾奇者であると共に忍術も備えていてそちらも相当なものなのだ。
「ですから」
「そうじゃな、十勇士もおるが」
「他の者達もいますな」
「そうしてじゃ」
「我等の動きも見ていますな」
「いよいよ戦じゃ」
 その時が近付いているからだというのだ。
「だからな」
「ここはですな」
「真田の者達も増えている」
 武田の忍の軸である彼等がというのだ、武田の強さには彼等の存在もあるのだ。
「そうしてじゃ」
「我等のことを見て」
「全て伝えておる」
 彼等の主である信玄にというのだ。
「そうしておる」
「左様ですな」
「しかしじゃ」
「これまで通り気にせずに」
「軍を進めていく。そして慶次よ」
 信長は慶次にも声をかけた。
「お主と才蔵じゃが」
「暫くはですな」
「先陣を切ることはないであろう」
「そうした戦はしませぬな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「そうしたくともな」
「我慢してですな」
「じっとしておれ」
「左様ですか、そうした戦は」
「好きではないな」
「やはりそれがしは先陣か後詰か」
 そうしたというのだ。 
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