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戦国異伝供書

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第十九話 急ぎ足その七

「鶏肉に山菜に茸、野菜に魚とな」
「色々入っていますが」
「どうもこれといってですな」
「どんな鍋とは言えませぬな」
「どうにも」
「兵達もこれを食しておるのじゃな」
 信長は諸将にこのことを尋ねた。
「わしは大返しの間鍋があるのなら食わせてやれと言ったが」
「それで、です」
 長束が言ってきた。
「それがしがここでと思いまして」
「佐吉と共に手配させたのか」
「はい、しかし鍋の具はです」
「特にこだわらなかったか」
「何でも買うと伝えたところ」
 そうすればというのだ。
「この通りのものとなりました、どうも鍋ごとにです」
「入っておるものが違うか」
「雉や鴨が入っている鍋もあれば」
 そうした鍋もあるというのだ。
「茸や山菜の種類もです」
「色々か」
「そうなっています」
「左様か、毒のあるものでなければな」
 信長は茸を念頭に置いて長束に話した。
「それでよい」
「左様ですか」
「これも中々美味い」
 だからいいというのだ。
「ならばな」
「今宵は、ですな」
「この鍋を食ってな」
 そうしてというのだ。
「たらふくな、その後でな」
「休まれますな」
「そうする、それでお主達はな」
 諸将にあらためて話した。
「酒も飲め」
「今宵もですか」
「飲んでよいですか」
「それも」
「酒も手配しておるのじゃ」
 石田も長束も既にそちらも手配させたのだ、石田は酒のことまで考えて道中に用意させていたのだ。
「それならなば」
「今宵は飲み」
「そうして英気を養い」
「また明日ですな」
「進んでもらう、だがわしはな」 
 信長自身はというと。
「飲めぬからな」
「だからですか」
「それはよいですか」
「酒は」
「まあ一杯だけじゃ」
 杯でというのだ。
「飲むとしてもな」
「やはりそうですか」
「殿は酒についてはですな」
「今宵も一杯だけで宜しいですか」
「それ以上飲むとな」
 どうにもというのだ。
「頭が痛くなるからな」
「殿は昔からですな」
 林もこう言ってきた。
「酒については」
「一杯でじゃ」
 まさにそれだけでというのだ。
「いいからな」
「我等はですか」
「好きなだけ飲んでいい」
「左様ですか」
「いつも通りな、若し二日酔いになればな」
 その時はというと。 
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