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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第48話:クライシスウォーゲーム

 
前書き
どれだけ本気でも上手くいかない時もある。

ディアボロモンの圧倒的戦闘力の前に為す術無く敗北したメタルグレイモン。

メイクラックモンVMに進化し、暴走したメイクーモンがくれた時間で太一達は残された希望に藁にも縋る思いだった。 

 
現実世界に戻ったアグモンは冷蔵庫にあるお菓子や残りのケーキを平らげてエネルギー補給に務める。

敵が究極体に進化した今、ディアボロモンと戦うにはウォーグレイモンの力が必要なのだ。

今のうちに太一はヤマトとタケルのいる島根の家に再び電話をかけた。

「もしもし、太一か?悪かったな婆ちゃんが。婆ちゃんマイペースだから」

「そんなことどうでもいいから、ヤマト。これから俺が話すことを落ち着いて聞いてくれ」

「は?どうした?太一…そんな深刻そうな声を出して」

深刻そうなではなく実際深刻な状況なのだ。

全く集まらない仲間達に怒鳴り散らしたい気持ちを抑えながら必死に平静な声を出す。

「ネットの中でな、新種デジモンの卵が産まれたんだ。そして俺達がそいつと戦ったんだけど、そいつ生まれてからたったの数時間で究極体に進化しちまったんだ」

「何だって?」

ヤマトは思わず自分の耳を疑った。

たった数時間で究極体にまで進化するとは。

「アグモン達を向かわせたけど返り討ちに遭っちまった。今は家でエネルギーを補給させてる」

「最悪な状況だな」

「ああ、最悪だ。まあ、それだけならまだ、ただの最悪で片付けられたんだけどな」

「まだ何かあるのか?」

「そうだ」

敵が究極体に進化し、アグモンが返り討ちにされたことがただの最悪でしかないとは更に厄介なことがあるというのか?

「…それで?何があったらアグモンが返り討ちされた以上の最悪な事態になるんだ?」

「………メイクーモンが暗黒進化して完全体に進化して暴走した。」

「は?」

最初、ヤマトは太一が何を言っているのか理解出来なかった。

いや、理解したくなかっただけなのかもしれない。

「今、暗黒進化したメイクーモンが新種のデジモンを標的にしているから、今はまだ何も起こってない。でもあいつも暗黒進化したメイクーモンも、どっちも放っておいたら大変なことになるのは確実だ。いくら強くても完全体だし、メイクーモンがあいつにやられる可能性だってある」

「そうか…」

太一から全ての事情を聞いたヤマトは現状の状況に頭を抱えたくなった。

「すぐにパソコンをネットに繋げて、デジヴァイスをセットしてくれ。自動的にゲンナイの爺さんが案内してくれるはずだ」

「いやでも、ここ島根だし…パソコンなんて…」

「島根中を探し回ればパソコンの1台2台あるだろ!!さっさと探してこい!!!」

ヤマトの弱気な発言にとうとう太一は怒りを爆発させてパソコン捜索を促す。

「わ、分かった…」

今までにない太一の怒りようにヤマトは驚きながらも受話器から聞こえてきた太一の怒声に驚いているタケルの手を引いてパソコンを探し出した。

「太一さん…ヤマトさんに当たってもどうにもなりませんよ」

「分かってる」

「…メールが来てますね。メタルグレイモンの身を案じるメールとあいつとメイクーモンに対してのメール」

「大方、あいつやメイクーモンが怖いとかだろ?」

「ええ…まあ…」

「…デジモンのこと何も知らないくせによ」

「太一さん…」

芽心の不安そうな声に太一は振り返った。

「大丈夫…大丈夫だ。あいつをぶっ倒してメイクーモンも助ける。絶対に…」

「ぷはー、御馳走様ー。」

お腹一杯食べたアグモンが満足そうにお腹を擦りながら立ち上がった。

「太一、僕もう行けるよ!!」

「…どうやらメイクーモンとあいつはアメリカに戦いながら移動しているようですね。」

「速いな…」

画面にメイクラックモンVMとディアボロモンの戦いが映っている。

2体共尋常でないスピードで戦っている。

しかしやはり究極体と完全体の力の差は簡単には埋められないようで徐々に追い詰められている。

「このままだとメイクーモンがやられるのも時間の問題ですね」

「ああ、分かってる。大輔達はまだ到着しねえのかよ」

「多分、交通にも影響が出てるんじゃないんですか?」

「どれどれ…あ、本当だ。渋滞になってる。戦いの影響で信号がおかしくなってやがるんだ」

芽心の言葉に太一は外を見遣ると確かにかなりの渋滞になっている。

「大輔と賢はもう仕方ねえな。積極的に協力しようとしてくれるだけマシか…アグモン。行けるか?」

「おう、任せろ太一!!」

「アグモン、メイちゃんを助けて…」

「任せといて」

頼もしい笑みを浮かべるアグモンに芽心も微笑んだ。

アグモンは再びネット世界に飛び込む。

「アグモン、もしかしたらメイクーモンとも戦うことになるかもしれない。今の内に進化だ」

「分かった。アグモンワープ進化、ウォーグレイモン!!」

究極体に進化して一気に戦場に…。

そこではディアボロモンに嬲られ始めたメイクラックモンVMの姿があった。

ディアボロモンが爪でメイクラックモンVMを引き裂こうとするが。

「止めろ!!メイクーモンに手を出すな!!」

即座にウォーグレイモンが割り込んでディアボロモンを蹴り飛ばす。

「メイクーモン…大丈夫……っ!?」

「ガアアアアアア!!」

メイクラックモンVMは爪でウォーグレイモンに攻撃を仕掛けてきた。

「メイクーモン!!止めるんだ、僕が分からないのか!?」

両腕の装甲でメイクラックモンVMの攻撃を捌くウォーグレイモン。

そして起き上がったディアボロモンは全身を丸くして体当たりをウォーグレイモンとメイクラックモンVMに繰り出す。

「ガア!?」

「くっ!?」

咄嗟に避けるウォーグレイモンとメイクラックモンVMに対してディアボロモンは元に戻るとエネルギー弾を乱射する。

「ブレイブトルネード!!」

高速回転し、エネルギー弾を砕きながらディアボロモンの右腕を吹き飛ばす。

「どうだ!?」

ディアボロモンは無くなった右腕を見遣ると、自身のデータ粒子をクラモンに変化させ、自身の損傷箇所に引き寄せると右腕を再構築した。

「再生した!?なら、ガイア…」

「ガアッ!!」

「うわっ!?」

真横から蹴り飛ばされたウォーグレイモン。

そのままメイクラックモンVMはディアボロモンに向かっていく。

しかしディアボロモンはメイクラックモンVMに興味を失ったのかウォーグレイモンの方に向かっていく。

当然、ディアボロモンを標的にしているメイクラックモンVMもそちらに向かい、ウォーグレイモンは増援が来るまでディアボロモンとメイクラックモンVMを相手にすることになる。

「やべえ…ウォーグレイモンだけじゃどこまで保つか…」

「待たせたな!!」

「デジヴァイス、接続したよ。」

「本当か!?なら今すぐ向かってくれ!!ウォーグレイモンだけじゃあいつとメイクーモンを相手にするのは厳しいんだよ」

「ああ、分かった。行くぞ!!」

「ガブモンワープ進化、メタルガルルモン!!」

戦闘の最中なので直ぐに加勢出来るようにガブモンを究極体に進化させて戦場に向かわせる。

そしてウォーグレイモンはディアボロモンを殴り飛ばし、こちらに迫るメイクラックモンVMを背負い投げの要領で投げ飛ばす。

「はあ…はあ…」

ディアボロモンとメイクラックモンVMの猛攻でウォーグレイモンは既にドラモンキラーと背中のブレイブシールドを失っている。

ディアボロモンがエネルギー弾を放ち、ウォーグレイモンを狙おうとするが。

「ガルルトマホーク!!」

真横からメタルガルルモンが放ったミサイルがディアボロモンに直撃し、吹き飛ばした。

「メタルガルルモン…!!」

「すまない遅くなった。あいつらが…」

「ああ…」

メタルガルルモンがウォーグレイモンを庇うように立ち、ディアボロモンとメイクラックモンVMを見つめる。

「ウォーグレイモン、まだ戦えるか?」

「ああ…問題ない!!」

深く深呼吸し、体に力を入れるとウォーグレイモンとメタルガルルモンは一気に飛び出した。

「ごめんメイクーモン!!」

ディアボロモンに集中するためにはまずメイクラックモンVMをどうにかしなければならないため、ウォーグレイモンはメイクラックモンVMを殴り飛ばし、遠くへ吹き飛ばす。

元に戻したらしっかりと謝罪しようと決めた。

ウォーグレイモンはディアボロモンに狙いを定めてメタルガルルモンと共に突撃。

ディアボロモンのエネルギー弾をウォーグレイモンは最低限の動きで回避する。

「(あいつの反応するタイミングは既に体で覚えた。後は…)」

急接近したウォーグレイモンの拳がディアボロモンの顔面を捉える。

「グレイスクロスフリーザー!!」

続いてメタルガルルモンが吹き飛ぶディアボロモンにミサイルの嵐を見舞う。

ディアボロモンはそれを俊敏な動きでかわしていくが、ウォーグレイモンは通常よりも遥かに小さいエネルギー弾を作り出す。

「ガイアフォース!!」

掌サイズのエネルギー弾を投擲し、着地する直前のディアボロモンに直撃させた。

「よし、とどめだ!!」

ウォーグレイモンとメタルガルルモンがとどめを刺そうとディアボロモンに必殺技を放とうとした時であった。

ディアボロモンの必殺技が2体に炸裂したのは。

「な…?」

「…え?」

体に走る激痛。

ディアボロモンは目の前にいる、何故ディアボロモンの攻撃が自分達の真上で?

「な、何でもう1体いやがるんだ!?」

太一が叫ぶが、もう1体のディアボロモンは更にもう1体の自分を作り出した。

「自己増殖能力だ…」

顔色を失った光子郎が呟く。

「自己増殖って、おい…そんなのアリかよ!?」

太一の叫びは全員共通の思いだった。

エネルギー弾の数は多くなり、それが終わってディアボロモンが別の場所に向かった時にはウォーグレイモンとメタルガルルモンはボロボロの状態で浮かんでいた。

メイクラックモンVMは標的のディアボロモンを追いかけていく。

「メイちゃん!!戻ってきてメイちゃん!!」

暴走したメイクラックモンVMに芽心の言葉は届かなかった。

「畜生、増えるなんてアリかよ!?」

「アポカリモンの方がまだ常識的な能力でしたね…ウォーグレイモンとメタルガルルモンのダメージも深刻ですね…。」

「畜生……」

「あ、メールが届いてますね。“惜しかった”とか“あんなの勝てるわけない”とか“諦めた方がいい”とかありますよ」

「自分達が無関係だからそんなのんびりとしたこと言えんだろうが…」

正直そんなメールは今の太一には何の慰めにもならなかった。

寧ろ苛立ちが増すばかりである。

するとディアボロモンからメールが届く。

“トケイ ヲ モッテイル ノハ ダーレダ?”

「時計…」

すると、パソコンには00:10:00:00から始まったカウントダウンと増殖していくディアボロモンが映し出された。

「ま、また増えやがった…」

ヤマトが目を見開きながら呟く。

「この数字は何なんですか…?」

「嫌な予感がしやがる…」

芽心も太一も嫌な予感を感じていた。

「どうしよう…」

「「?」」

光子郎がとても焦った表情で呟く。

「ペンタゴンに潜り込んだ台湾の中学生が知らせてくれたんですが、今から30分前、アメリカの軍事基地から核ミサイルが発射されたそうです。」

「ええ!?」

「核ミサイル!?」

それは勿論、言うまでもなくディアボロモンの仕業であり、パソコンに表示されているカウントダウンはミサイルが目的地に辿り着くまでの時間であることを理解する。

「ど、どうすればいいんですか?」

「核ミサイルはどうやら1発。ピースキーパーという名前のようです。射程は20000km、ほぼ地球全体ですね。最高速度は15000マイルアワー。」

「時速何kmだ?」

「(マッハ23)って書いてありますね。」

「マッハ…」

「23…」

「でも、目的地はどこか分かりません。今、どこを飛んでいるのかも分かりません。ただ、世界中のどこかでは爆発します、9分後に…」

太一達はその絶望的な状況にただ、呆然としていた。

光子郎は世界中から届く声援メールをどんどん読みあげていく。

「頑張れって…こいつら全部倒せるわけないだろ。」

「メイちゃん…」

「あ…」

太一はハッとなった。ディアボロモンのいるところには…メイクラックモンVMが向かっている。

あんなディアボロモンが増殖している場所に向かってるということは…。

「まずい…」

「メイクーモンのことも心配ですが、まずはこれを聞いてください。核ミサイルは信管さえ作動させなければ爆発しないそうです。もしこれがゲームなら、時計を持ってる奴は1体だけです。そいつを倒せば、信管は作動しないはずです。」

「どうやって時計を持っている奴を捜すんですか…?」

芽心の問いに光子郎は言いにくそうに口を開いた。

「それは1体ずつ倒して行くしか…」

ディアボロモンに対抗出来るウォーグレイモンとメタルガルルモンはボロボロで本来の力など出せないだろう。

しかもディアボロモンは今この瞬間にも増え続けている。

「そんなことしてたら、日が暮れちまう!!」

「でも…それしか方法は無いでしょう?」

「……………」

光子郎の言葉に太一は何も言えなかった。

「太一、太一。しっかりしろ、太一!任せておけ…メイクーモンを助けて、あいつを倒す!!」

「ウォーグレイモン…」

「奴のいる場所は分かるか?」

「メタルガルルモン…」

傷だらけの体を引き摺りながらも力強い目を此方に向ける2体。

「皆…今から奴のアドレスを送ります!!」

「頼む…」

光子郎がディアボロモンのアドレスを打ち込むと、ネットの中にディアボロモンが居る場所へと通じる入り口が開かれた。

「やるしかないか…」

「太一さん…」

「大丈夫…大丈夫だ芽心ちゃん。ウォーグレイモンならきっとメイクーモンを助けてあいつを倒してくれる」

「はい…ごめんなさい太一さん。メイちゃんが暴走しなきゃこんなことに…」

「そんなことねえよ。メイクーモンが暴走するなんて誰も予想なんかつかねえ、あんまり自分を責めるなよ」

「……はい」

「今は信じるしかないんだ……奇跡が起きるのを願うしか…」

太一は奇跡が起きることを願ってパソコンの画面にウォーグレイモンを見守った。

そして一方では何とか渋滞などの混乱から抜け出して及川宅の付近まで走っている大輔と賢の姿があった。 
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