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家までの道

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第二章

「それ位ですね」
「自転車でそれ位ですか」
「車持ってます?」
 業者は勝呂にこのことを聞いてきた。
「それで」
「はい、私も家内も免許を持っていて」
 勝呂は業者に免許のことから話した。
「軽四を一台持っています、ただ家内が買いものに使います」
「そうですか、じゃあバスがなくても問題ないですね」
 業者は勝呂の家の事情を聞いてこう述べた。
「それだと、ただ車道はわかりやすいですがこの辺り道が相当入り組んでいまして」
「そうみたいですね」
 勝呂は買おうと思っている家から駅までのマップを見た、周りには中学校や小学校もあるが家や公園、道がだ。
 相当に入り組んでいて迷路の様だった、それで言うのだった。
「これはかなり」
「ですから歩いて行かれることは慣れてからでないと」
「お勧め出来ないですか」
「自転車も。とにかくこの地域道が入り組んでいるんですよ」
 業者は勝呂にこのことも話した。
「土地の人ならともかく慣れていないと」
「迷いますか」
「本当にそうなりますから」
 そこまで道が入り組んでいるからだというのだ。
「少しずつ慣れて下さい、間違ってもいきなり家から駅まで歩いたり自転車で行ったら」
「迷いますか」
「そうなりますから」
 だからだというのだ。
「この家、この地域の他の家を買われる場合は気をつけて下さい」
「近くにスーパーもコンビニもあるのに」
 見ればそれぞれ車ですぐの場所にある。
「道は入り組んでいますか」
「あとバスが少なくなっています」
「この二つに、ですか」
「注意して下さいね」
 契約して家を買うのならとだ、業者は勝呂に忠告する様に話した。事前に問題点を話したのはこの業者の良心だった。
 勝呂はここまで話してどうしかものかと考えだした、だがここでこれまで黙っていた勝呂の妻である由美、口を開くと白い八重歯が出てはっきりとした目と長い白いものが見当たらない奇麗な黒髪の彼女が言ってきた。肌はもう中年だが奇麗で皺も殆どない。夫と比べると小柄だがスタイルは崩れていない。
 その彼女が夫の横から業者に言った。
「お願いします」
「正式に契約されますか」
「まず実際にお家を見てですが」
 実物をというのだ。
「安いですし駅まで車で十分なら」
「バスで、ですね」
「いいですよ」
「そうですか」
「おい、考えてみないか」
 勝呂は即断に近い妻を止める様にして横から言った。 
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