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戦国異伝供書

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第十九話 急ぎ足その四

「空気は読めぬがな」
「それでもじゃな」
「悪い者ではない」
「このことは間違いない」
「我等に対しても邪なものはないか」
「あ奴はただ真面目で空気を読まぬだけじゃ」
 それが石田だというのだ。
「そこをわかってな」
「我等も接するべきか」
「とかく角が立つ、平壊者と思うだけでなくな」
「そうしたところもあらためて見て」
「それで付き合っていくか」
「権六殿もそう言っておられるではないか」
 浅野も言ってきた。
「そうであろう」
「権六殿もとかく言われておるがな」
「しかしいつも佐吉に笑って対されておられる」
「むしろ言われると喜ばれるな」
「そうであるな」
「権六殿は子路じゃな」
 こう言ったのは前田玄以だった。
「孔子の弟子の一人であった」
「ああ、あのか」
「孔子の弟子の中でも最も勇があり実直だったという」
「あの御仁が権六殿か」
「確かにその通りであるな」
「権六殿は子路の気質じゃ」
「その子路の気質であられるからじゃ」
 柴田にしてもというのだ。
「佐吉に何を言われようともな」
「過ちを言ってもらえたと思われてか」
「佐吉がそれを言ってくれたとわかっておられるから」
「だから喜ばれるか」
「そうであるか」
「権六殿は正邪もわかっておられる」
 武と頑固がやたら言われる者である、しかしそうしたものだけで信長も宿老に一人にし常に頼りにしている訳ではない、柴田にそうした資質がわるからこそ用いているのだ。
「あれで佐吉が悪意があったり讒言を言う様であるならら」
「即座に切り捨てておられるな」
「讒言なぞ権六殿の最も嫌うこと」
「そして根拠のないことや嘘も嫌われる」
「あれ以上まっすぐな御仁はおられぬ」
「人を見る目も持っておられるしのう」
「その権六殿がしかと聞かれるのじゃ」
 石田のその厳しい言葉をというのだ。
「そしてなおそうとされるであろう」
「だとすればな」
「あ奴の言葉は確か」
「まことに思ってのこと」
「そうであるな」
「そうじゃ、わしもあ奴の言葉に怒る時もあるが」
 場も雰囲気も読まず厳しいことでも止まらず言うからだ、それでとかく反発を感じるのは前田玄以も同じなのだ。
「悪意等はないのじゃ」
「それをわかってじゃな」
「そうしてあ奴と付き合うべき」
「我等はどうもあ奴の言葉に怒り過ぎか」
「そうであるか」
「そういうことじゃ、あ奴は腹は奇麗な者じゃ」
 小西がまた加藤清正達に話した。
「そのことをわかってな」
「これからも付き合っていくべきじゃな」
「邪険に思うことなく」
「そういうことじゃな」
「左様じゃ、ではな」
 これからはと言うのだった。
「その様にしていこうぞ」
「わかった、あ奴の言葉嫌わずに聞いて」
「我等も正していこう」
「あと桂松に言っておく」
 石田を止められまた彼が言うことを聞く数少ない者である大谷にというのだ。
「佐吉はあ奴の言うことは聞くからな」
「あと島左近の話もな」
「とかく我が強いが」
「しかし桂松の話は聞くし」
「それでじゃあな」
「お主から桂松に話すか」
「さもないとあ奴にとってもよくない」
 石田にとってもというのだ。 
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