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戦国異伝供書

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第十九話 急ぎ足その一

               第十九話  急ぎ足
 織田家は毛利家を降してからすぐに東に向かった、武具さえまともに持たず飯を道中に用意させてだった。
 ひたすら東に進んだ、石田はその中で大谷に言った。
「うむ、飯の手配がな」
「万全に行き届いておるな」
 大谷も石田に応えて述べた。
「お陰でじゃ」
「兵達は飯を焚かずに飯を食ってな」
「そうして進めていけておる」
「普通の行軍の倍の速さじゃ」
 織田家の今の速さはというのだ。
「飯を食ってすぐに進む」
「それが出来ておるしのう」
「その分速い、しかしな」
「道中で一日三度の飯を用意させることはな」
「随分と考えた」
 何処で飯を出させるか、それをというのだ。
「武具を脱いだ者がどれだけ歩けるか」
「そこから考えてじゃな」
「大体一刻で二里は歩く」
 それ位と考えてというのだ。
「そこから計算してじゃ」
「飯を用意させたな」
「そうすると上手くいった」
「そうであるな」
「そしてじゃ、この度は急いでおるが」
「お主の計算通りにいっておるな」
「そのことにほっとしておる、それでな」
 石田は大谷にさらに言った、今軍勢は備中から備前を経て播磨に入っている。
「道もよいからな」
「そのこともあってな」
「進むのが速い、この調子でいけば」
「徳川殿をお救い出来るな」
「その筈じゃ、戦に間に合う」
「若し間に合わなければ」
 家康が武田家に負けて滅べばというのだ。
「我等も危ういな」
「尾張と三河の境辺りでの戦となる」
「左様じゃな」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「当家は大きな盟友を失うしのう」
「これまで徳川殿にどれだけ助けられたか」
「そのことも思うとな」
 どうしてもというのだ。
「我等はな」
「徳川殿をお助けしなければならない」
「必ずな、だからこそ」
「飯の手配も考えたな」
「計算してな、これでな」
「まずは都に入り」
「岐阜に行ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「尾張まで行くのじゃ」
「道は一つじゃな」
「そうじゃ、そして尾張で海から運んだ武具を受け取り」
「そのうえでな」
「武具を着けてじゃ」
「三河に入るな」
「そうなる」
 まさにと言うのだった、そうした話をしつつだった。石田達も東に進んでいた。その足は極めて速く。
 瞬く間に播磨も出て摂津に入った、そこからさらにだった。
 都に入った、既に落ち着きを取り戻していたが信長は言った。
「今はな」
「はい、通り過ぎ」
「そうしてですな」
「休みませぬな」
「それはせぬ」
 こう家臣達に告げた。 
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