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言うことは何でも

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第一章

               言うことを何でも
 中西寛太は海上自衛隊曹候補学生の実習を終えて舞鶴の教育隊に戻った、後は舞鶴教育隊で三曹となる仕上げの教育を受けることになった。
 実際に彼はその教育課程に入り同期達と再び教育隊で一緒になったが。
 自由時間に自分が同期達と五人で寝起きしている部屋の椅子に座って外出の時に買った野球ゲームの攻略本で阪神のことをチェックしていると同じ部屋の笹木聖一郎が笑って言ってきた。眼鏡にスポーツ刈りが銀行員みたいな印象を見せている。背は一七四程で痩せた身体をしている。
「阪神去年何だよ」
「御前それ自分が名古屋出身だから言うんだよな」
「ああ、俺は中日ファンだよ」
 笹木もこう答えた。
「家も中日新聞だしな」
「中日の親会社だよな」
「もう二軍の選手の紹介も載っててな」
 中日新聞ではとだ、笹木は中西に話した。
「星野監督のインタヴューしょっちゅう掲載されてるよ」
「流石親会社だな」
「阪神電鉄だってそうだろ」
「ああ、あちこちに阪神の広告あるよ」
 実際にとだ、中西も答えた。
「駅でも電車の中でもな」
「それと一緒だよ、それでな」
「ああ、去年の阪神か」
「去年も最下位だっただろ」
「何言ってんだ、今年は優勝するぞ」
 中西は教育隊でもこう言うのだった。
「決まってるだろ」
「じゃあ打線打てよ」
 笹木は笑ってこのことを指摘した。
「打線全然打たねえじゃねえか」
「凄い助っ人入ったぞ」
 中西はデイリーの知識から言い返した。
「今年はあの助っ人が大活躍してな」
「グリーンウェルみたいにか?」
「誰だよ、それ」
 知っている名前だが中西は知らないふりをした。
「一体」
「忘れてないだろ、絶対」
「覚えてるよ」
 実際にとだ、中西も知らないふりを止めて開きなおって答えた。
「ひでえ奴だったな」
「中々来ないでやっと来たらすぐに帰ったよな」
「そのまま引退したよ」
「あいつみたいなのか?」
「あいつは最悪だよ」
 阪神ファンから見てとだ、中西は答えた。
「国際詐欺だよ」
「国際詐欺か?」
「そうだよ、あいつの名前はな」
「出すなよ」
「じゃあ出さないにしても打つ助っ人いたのかよ」
 笹木はこの現実を指摘した。
「バース以降」
「オマリーとかパチョレックとかな」
「けれど殆どいないだろ」
「けれど今度はな」
「そんな筈ないだろ」
 当時の阪神の助っ人はバッターがかなり多かった、しかし打つ助っ人が毎年おらずスカばかりと評判だった。
「どうせな」
「阪神は今年もか」
「助っ人が打たなくて打線が打たなくてな」
 それでというのだ。
「最下位だよ」
「言うな、本当に」
「じゃあ何年連続最下位だよ」
「三年だけれどな」
 その前は五位でそのさらに前は二年連続だった、もう何年もAクラス入りしていない。
「けれど今年はな」
「優勝かよ」
「最下位から大逆転してな」
「なる筈ないだろ、今年はな」
 笹木も二〇〇一年のペナントの話をした。 
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