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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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ブルネイでティータイムを

「やれやれ、厄介な事になってきたなぁ」

「そうデスか?その割にはdarling楽しそうデスけど」

 どうやら、ニヤニヤ笑っていたらしい。

「電話の相手は噂のMr.CraftyFoxデスか?」

Crafty Fox……悪賢い狐って、あんまりにも似合い過ぎだろ。さっきの壬生森の電話を受けて、金剛に皆を集めるように声掛けを頼んだ。さっさと戻ってきたコイツは、

『取り敢えずティータイムにしましょう!』

 と宣言して、お茶の支度を始めた。と言っても、俺のは相変わらずコーヒーだが。

「そういやお前は直接会った事はねぇんだったか?」

 初めて奴がウチを訪れた時にも、別の鎮守府に遠征してて居なかったんだったか。

「トラックの騒動の時に、チラッと見かけた位ですネー。darlingの言う通り、『化け狐が人の皮を被った』みたいな胡散臭さでしたヨ。あの人が私のオリジナルを連れているなんて、信じられないネー……というより、あの根暗女が私のオリジナルとは思えませんでした」

 そう言いながら肩を竦める金剛。あれ、ホントは扶桑じゃないよね?と当時聞かれたのはいい思い出だ。艦娘ってのは過ごした環境が影響で性格や好みが変化するが、生まれた直後(建造された直後)ってのは大体、コピーマスターであるオリジナルの性格や嗜好を受け継いでいる。

 当然、『提督LOVE勢筆頭』なんて呼ばれる位だから金剛は提督に惚れやすいのだが、それでも好ましくない男は居るらしく、壬生森の第一印象的にはウチの金剛からするとストライクゾーンに掠りもしないタイプらしい。

※俺は万人受けするタイプらしいが、『恋愛SLG的に言えば提督はキチンと惚れられた皆さんを攻略してますんで、別に体質的な物では無いですから!』と太鼓判を押された(明石に)。解せぬ。

「ましてや、あの金剛は野郎の部下じゃねぇらしいぞ?」

「え、そうなんデスか?ですけど指揮には従って……」

「まぁその間には、男女の複雑な事情がこんがらがって転がってるらしいぞ?」

「Oh……それは他人が口出しも手出しもする事じゃないネー」

「だろ?誰だって薮蛇は嫌なモンさ」

 俺も気になってあの金剛の出所を探った事がある。『書類上は』戦時下で最初の金剛のマスターシップが沈んだので急遽新造された事になってはいるが、その左手の薬指にルビーの指輪が填められていたのを見たから書類は改竄された物だとすぐに判った。あの指輪は当時、試験的に導入されたケッコンカッコカリのシステム用の指輪であり、壬生森の指輪は奴が持っていたのをこの目で確かめている。つまりは、アレは誰かの秘書艦だったのを奴が引き取ったんだ……それも、壬生森のせいで戦死したであろう提督の、だ。




「鎮守府にも色々あんのさ。好き嫌いで集まってる訳じゃねぇからな」

 大学のサークルじゃねぇんだぞ?と釘を刺す。

「hmm……でも、何があったら私がああなるのか想像も出来ないネー」

「それよりも問題は……コイツだ」

 トントンと大淀が俺に手渡したファイルを指差すと、金剛も手に取ってペラペラと捲っていく。

「あ~、確か最近騒がれてた黒い空母『フー・ファイター』デスね?」

「おいおい、フー・ファイター(foo fighter)は変な光球とか未確認飛行物体の事だろ?別物だ」

「ノンノン、違うよdarling。誰だか解らない正体不明の敵だからフー・ファイター(who fighter)ね」

「あぁ、成る程な。まぁ呼び方は何でもいい……兎に角、そいつを狩る為に狐野郎の艦隊がこっちに出張って来るんだとよ」

「あれ?でもその空母沈んだって聞いたヨ?」

「その情報自体、かなり古いらしいな。なんでも、同じ個体が元気に他の艦隊襲ってるのが観測されたらしい」

「Why?敵の新たな量産型、ってオチは無いデスか?」

「……装甲空母にまで改装した五航戦2隻を相手取って、艦 載機をほぼ全滅させる奴が量産型なら、俺達ゃとっくに滅んでるよ」

 事実、それをやられた艦隊からの報告書もあるから事実かどうかは疑いようもない。

「いつからニライカナイ艦隊はゴーストバスターズに転職したノ?」

「案外俺達の方がゴーストバスターズかも知れんぞ?深海棲艦は未だに曾ての艦の悪霊説があるしな。奴等はもっと質の悪い……そうだな、ヴァンパイアハンターってトコか?」

 俺が茶化してそう言うと、ハンと金剛が鼻を鳴らした。

「darling、海の上のヴァンパイアはロイヤルネイビーのヴァンパイアだけで十分ネー。その他のヴァンパイアもウィッチもモンスターも、私達の手で鮫の餌にしてやるヨ?」

「その意気だ、頼りにしてるぜ?筆頭秘書艦殿」

 多少物騒だなぁと思いつつ、少しぬるくなったコーヒーを啜る。




 コーヒーを飲み干した丁度いいタイミングで、資料を纏めに行っていた大淀が戻ってきた。

「提督、ニライカナイ泊地より資料が届きました!」

「ん、サンキュ。人数分コピーして、会議室に運んどいてくれや」

「えぇと……何人分ですか?」

「俺と金剛、大淀だろ……それに戦艦から武蔵と比叡に、それから……」

 と、会議に声を掛けた艦娘を列挙していく。

・武蔵、比叡(戦艦組代表)

・赤城、翔鶴、瑞鶴(空母代表)

・青葉(重巡代表&諜報班班長)

・神通(軽巡代表)

・北上(雷巡代表)

・時雨、夕立(駆逐艦代表)

・伊58(潜水艦代表)

・明石(バックアップ担当)



「……だから15部、ってトコだな。予備も含めて20位用意しといてくれや」

「つくづく、霧島さんが居ないのが悔やまれますね」

 苦々しげに呟く大淀。金剛4姉妹の末妹にして『艦隊の頭脳』とも呼ばれる霧島は、ウチの鎮守府でもその分析能力で的確な作戦プランを立てる優秀な作戦参謀……なんだが、間の悪い事に他の鎮守府に短期で出向しており、不在。

「ま、組長が居なくても何とかするさ」

「……提督」

「あんだよ?」

「霧島さんの前では『組長』って呼ぶの、止めてくださいね?彼女気にしてるんですから」

「へいへい」

 そんな霧島にも悪いクセというか、欠点がある。それは、『一度キレると我を忘れる』という点だ。その口の汚さと鬼気迫る表情、暴れっぷりが『インテリヤ〇ザ』にしか見えないとの事で、誰が言い出したか『霧島組長』というアダ名が付いていた。

「こういう時にゃあ頼りになるんだがなぁ……ま、居ないモンは仕方ねぇやな。居る奴等で何とかするさ」

 どっこらせ、と椅子から立ち上がり会議室へと向かう。いよいよ、化け物狩りの作戦会議と行こうか。 
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