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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第24話:不器用

ヴァンデモンを倒しても尚、未だ晴れないお台場を包み込む霧。

「畜生!!」

霧が晴れない理由が分からない苛立ちに任せて、太一が唯一残っていたヴァンデモンの仮面を蹴り飛ばした。

乾いた音が響く中、子供達は暗い顔になる。

「………」

マグナモンは少しの沈黙の後、一気に飛翔して、周囲の空間を急速圧縮し、瞬間膨張させた。

「シャイニングゴールドソーラーストーム!!」

超広範囲に向けて放たれた黄金のレーザー光は霧を吹き飛ばしたが、すぐに元通りになってしまう。

「やはり、力技ではどうにもならないか…」

少しの間だけ霧を吹き飛ばしただけと言う結果に気落ちしながらマグナモンはブイモンに退化した。

チビモンに退化するかなと思ったが、1年間もの戦いはブイモンを予想以上に強くしていたようだ。

「悪い、霧を吹き飛ばせなかった。」

「いや、少しの間だけとは言え、霧を吹き飛ばせただけでも大したものだよ……選ばれし子供は…あれ、全員いませんね?」

「え?あ、光子郎さんだ!!今、光子郎さんはどこにいるんだろ?」

賢の言葉に大輔はヴァンデモンとの戦いで全員が揃っていないことを思い出した。

そう言えばここにいない光子郎は一体どこにいるのだろうか?

「その前に私、着替えたい…」

「俺も親父が気になる」

「僕も家が…」

「じゃあ、光子郎君は私が捜しに…」

「その必要はなさそうだ。どうやら最後の1人はフジテレビにいる。」

空が光子郎の捜索を買って出ようとした時、悠紀夫のデジヴァイスの反応キャッチする機能が搭載されたパソコンの画面に光子郎らしき反応が映し出されていた。

「光子郎の奴、フジテレビにいたのか?何やってんだあいつは?」

太一が1人だけテレビ局にいる光子郎の反応があるポイントを呆れたように見つめていた。

「フジテレビはヴァンデモンが拠点の1つにしていた。恐らく霧の結界の中心部だと言うことじゃないのか?」

テイルモンの推測に全員が納得した。

多分、光子郎は霧の結界の中心部のフジテレビの調査をしていたのだろう。

「あ、あははは!!俺は分かってたぜ!!光子郎が何の理由もなくフジテレビに行くわけねえもんな」

「お兄ちゃん、白々しいよ」

冷たい目で太一を見遣るヒカリ。

明らかに光子郎を疑っていた太一に妹であるヒカリは気付いていた。

「うぐぐ…」

「まあ、ヒカリちゃん。太一さんの早とちりは今に始まったことじゃないし。そんなことよりヒカリちゃんの家族の無事を確認しに行こうぜ」

「うん」

唸る太一を無視して大輔はヒカリにヒカリの家族達の安否の確認を促し、ヒカリも頷いて歩き出した。

「…………」

助かったが、太一は微妙な表情で大輔とヒカリの後ろ姿を見守った。

「まあ、元気出せお兄ちゃん」

「そうそう、生きてればいいことあるわよお兄ちゃん」

ヤマトと空が慈愛に満ちた目を太一に向けながら肩に手を置いた。

「うるせえやい!!」

太一の叫びに子供達に笑いが出た。

「む?」

「どうしたんですか?」

悠紀夫のパソコンにメールの着信があり、悠紀夫は再びパソコンを開いてメールの内容を確認する。

「……どうやら、ゲンナイさんからのメールだ。ヴァンデモンを倒すヒントだそうだよ」

「ヴァンデモンを倒すヒント?ヴァンデモンはとっくに……」

「いや、大輔。ヴァンデモンがまだ生きているならこの霧が未だに晴れないことに納得が行く。まずはメールを読んでくれませんか?」

賢に促された悠紀夫はメールを読み始めた。

「ああ、“初めに蝙蝠の群れが空を覆った。続いて人々がアンデットデジモンの王の名を唱えた。そして時が獣の数字を刻んだ時、アンデッドデジモンは獣の正体を現した。天使達がその守るべき者の最も愛する人へ光と希望の矢を放ち、聖騎士が守るべき者の最も信頼する者に奇跡の光を放った時、奇跡が起きた”と書いてある」

何が何だかさっぱりといった風に首を傾げる子供達。

しかし悠紀夫はパソコンを閉じて子供の達に向き直ると、ゆっくりと口を開いた。

「確かに今は何のことか分からないが、何れ分かるかもしれない。みんな、一応このヒントを頭に入れておいてくれ」

【はい!!】

「(浩樹……お前の帰る場所をあんな悪魔の好きにはさせない。俺には戦う力はないが、俺に出来るやり方であの子達と共に戦う…)」

ロンドンにいる親友の帰る場所を自分なりのやり方で守ると決めた悠紀夫はヤマト達を車に乗せるとフジテレビに向かった。

残りの面子はビッグサイトに行き、バケモン等の見張りを蹴散らした。

「…本当に眠ってるんだな」

「うん…」

部屋に飛び込んだ子供達が目にした光景の異様さに全員が言葉を失った。

捕らわれた人々は、冷たい床の上に寝かせられていたのである。

きちんと整列させられている様は、どこか供物を並べているような印象を与えた。

「お母さん…お父さん…」

「すまないヒカリ。私がヴァンデモンの野望に力を貸したせい…あだっ!?」

不安そうに両親を見つめるヒカリにテイルモンは辛そうな表情で謝罪…しようとした瞬間に脳天に衝撃が走り、間抜けな声を出してしまう。

テイルモンの目から星が飛び散り、脳天から痛みと熱が徐々に広がって行く。

誰に何をされたのかは振り向けば直ぐに分かる。

ブイモンが利き腕ではない方の腕をプラプラさせながら呆れたような顔をしていたからだ。

「だ、大丈夫?テイルモン?」

「あ、ああ…いきなり何をするんだお前は!?」

「お前こそ何してんだ馬鹿」

「ば、馬鹿!?」

顔を真っ赤にして殴りかかるがブイモンは難なくそれをかわしながら口を開いた。

「こういう時こそお前がヒカリに見せなきゃいけない物があるだろ」

「見せなきゃいけない物?」

再び殴り掛かろうとした手を止めて訝しげにブイモンを見つめるテイルモン。

「笑えよ」

「え?」

「今、ヒカリに見せなきゃいけないのはそんな顔じゃないだろ?ヒカリを安心させるために必要な顔は笑顔だろうが、言葉だってそう、謝るんじゃなくて安心させるための言葉を言えよ…ヴァンデモンがこの世界に来るのは必然みたいなもんだ。どうせお前がいなくてもヴァンデモンはこの世界に来たに決まってるし。」

「………」

「今はウィザーモンのこととか色々あって辛いだろうけどさ。まあ、愚痴ぐらいならいくらでも聞くぞ?取って置きの苺チョコを肴に苺牛乳飲んでさ」

「だから甘い物摂り過ぎるなってあれほど…」

大輔が額に手を置いたが、ブイモンはテイルモンの頭に手を置いて構わず話を続けた。

「まあ、とにかくそのしょんぼりした顔は止めろ。元々酷い顔が更に酷くなるぞ~。それ以上酷くなったら、流石に他人のふりしちまうぜ?」

「な、何ですって~!?」

「おっと、さよなら~」

顔を真っ赤にして怒鳴るテイルモンから脱兎の如く逃げ出したブイモン。

テイルモンは息を荒くしながらブイモンが触れた部分に触れた。

そこにはまだブイモンの手の感触が残っている。

「何よ…馬鹿…」

元気づけるためにあんなことを言ってくれたくらいは分かる。

嬉しいような恥ずかしいような感情がテイルモンの中で渦巻いていた。 
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