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戦国異伝供書

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第十八話 道を走りその七

「そしてじゃ」
「武田家を倒して降しますか」
「そして上杉家も攻めて」
「あの二つの家をどうにかしますか」
「左様じゃ、では今はな」
 備中高松城を見て言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「このまま水攻めを続けていき」
「毛利家から使者が来るのを待ちますか」
「そうしますか」
「うむ、間もなく来る」
 それだけにというのだ。
「だからここは焦らぬ、しかしな」
「東に向かう手筈はですな」
「既に整えておりますし」
「ならば東に向かう用意も」
「しておきますか」
「その様にしておけ、止まったままと半歩踏み出すのでは全く違う」
 だからだというのだ。
「それでじゃ」
「はい、半歩でも踏み出しておきますな」
「今から」
「そして毛利家と講和すれば」
「そこからすぐにですな」
「東に向かう」
「その時ですが」
 佐久間がここで言ってきた。
「東に向かう時に攻められては」
「背をじゃな」
「はい、そうなれば危ういですが」
「毛利家はそれはせぬ家じゃ」
 信長は佐久間にまずはこう答えた。
「確かに謀は使う、しかし一度結んだ約はじゃ」
「破りませぬか」
「そうした家じゃ、しかも急いで東に向かう」
 それこそ武具も別に運ばせて一路都に向かうまでだ。
「宇喜多家も備前に置くしな」
「だからですか」
「安心せよ、播磨まで入れば問題ない。それに」
「やはり後詰はですな」
「置く」
 このことは忘れていないのだった、信長もこれは当然の備えとわかっている。如何なる場合もこれまで戦っていた相手が後ろにいるならだ。
「お主をな」
「それがしをですか」
「退きはお主じゃ」
 かかれ、つまり先陣は柴田でのきつまり後詰は佐久間だ。だからこそというのだ。
「万全の備えで頼むぞ」
「わかり申した」
「一気に東に向かうがな」
 それでもというのだ。
「後詰はしかと置く、しかしお主達もな」
「急いで、ですな」
「東に向かえ、武田や上杉との戦ではお主にも頑張ってもらう」
 佐久間、彼にもというのだ。
「だからな」
「おg詰めをしつつも」
「急ぐのじゃ」
「そうさせてもらいます」
 佐久間は信長に確かな声で答えた、そしてだった。
 秘かに東に向かう用意をさせつつ毛利家から降る話をしに来る使者を待っていた、そしてその使者は実際に来てだった。
 講和の話を持って来た、信長は開城と周防そして長門二国の安堵を言ったが元就はそれを受け入れた。こうしてだった。
 毛利家との戦は終わった、それを受けてだった。
 織田家はすぐに東に向かった、その際だ。
 足軽達は東に向かいつつだ、こんなことを言い合った。
「いや、腰の刀とな」
「あとはほぼ武具なしで進むとは」
「これはまた凄いのう」
「殿も凄いことをされる」
「全くじゃ」
「道中ではいつも飯が用意されておってな」
 石田達の手配である。 
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