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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第14話:8月1日

 
前書き
色々すっ飛ばします。 

 
1999年、8月1日。

その年の夏は地球全体がおかしかった。

東南アジアではまったく雨が降らず、水田が枯れ…中東では大雨による洪水が発生…アメリカでは記録的な冷夏となっていた。

サマーキャンプにいた7人は何も知らずにいた。

それが誰も知らない世界での冒険の始まりになることを…。

そして…。

「う~」

「ヒカリちゃん、拗ねない拗ねない」

ソファーに座りながらムスッとしているヒカリに苦笑しながら甘い蜂蜜ミルクを作ってあげた大輔。

大輔お手製蜂蜜ミルクの入ったカップを受け取って中身を啜るヒカリ。

「………やっぱり美味しい」

絶妙な甘さにヒカリは思わず唸る。

どうすればこの甘さになるのかさっぱり分からない。

ヒカリも大輔の真似をして作ったりしているが、甘過ぎたり、蜂蜜が足りなかったりとあまり大輔程絶妙な調整が出来ない。

どうにか大輔の技を盗めないかと大輔の作業を睨むように見ているのだが…中々上手くいかないようだ。

「大輔君の蜂蜜ミルクはどうやったらこんなに美味しくなるの?」

「え?そりゃあ…普通に…」

ヒカリのいきなりの問いに大輔は疑問符を浮かべながら答えた。

「普通じゃ、出来ないもん」

何度も練習を繰り返しているのに大輔の蜂蜜ミルクの味には近付けない。その秘密は何なのか?

「まあ、今はゆっくり休んで風邪を治せよヒカリちゃん」

「はーい」

「ヒカリー、このクッキー食べていいよな~?モグモグ…」

尋ねる前にクッキーを食べているブイモン。

普通は食べる前に聞くものである。

「え?ああ!?それ、私が楽しみに取っておいたマカデミアナッツクッキー!?どうして食べちゃうのブイモン!?」

「そこにクッキーがあったからだ!!」

「そ、そんなあ…ブイモンの鬼ぃ…」

風邪が治ったら食べようと楽しみに取っておいたクッキーをブイモンの胃袋に取り込まれる結果となってしまったヒカリ。

流石に不憫だと思ったのか、大輔はいつか美味しいパンケーキを御馳走しようと決めた。

「いつかヒカリちゃんにパンケーキ作ってあげるからな?」

「本当に?じゃあ、メープルシロップね?」

「分かった」

「俺はチョコ…」

「お前はおやつ抜きだ馬鹿!!」

「ええー!?」

おやつ抜き宣言をする大輔に驚愕するブイモン。何処までも残酷な宣言にブイモンが目を見開く。

ヒカリはそれを見て意地悪く微笑んだ。

…食べ物の恨みは恐ろしいのである。

「それにしても運がないよなヒカリちゃん。折角のサマーキャンプに行けないなんて」

「むう、サマーキャンプに行きたかったのにどうして風邪を引いちゃうのかな…?」

「そりゃあれだ。ヒカリが貧弱だから…」

「ブイモン、少し黙ろうな」

「あ痛っ!?」

失礼過ぎる発言をするブイモンに大輔が拳骨を落とす。

確かにヒカリは風邪を引きやすいがそこまで貧弱ではない。

「痛てて…それにしても最近さあ、異常気象が起きすぎじゃないか?」

頭にタンコブを作ったブイモンが真剣な表情で言う。

真剣な表情で気持ちもそれに相応しいものなんだろうが、見た目が間抜けすぎてギャグにしか見えない。

「だよね、東南アジアでは全く雨が降らなくて、水田が枯れて…中東では大雨による洪水…アメリカでは記録的な冷夏だって」

ヒカリもヒカリで今の現実世界がおかしいことに気付いており、多分デジタルワールドの状態が悪化しているのだろうと予想を立てる。

「…取り敢えず、今は様子を見ようぜ。焦ったって仕方ないしさ。ヒカリちゃん、今日の昼飯は何がいい?消化がいいのだけだけどさ」

「ミルク粥!!一度食べてみたい」

「ミルク粥か…レシピレシピ…パソコン借りるよ」

パソコンを起動させ、ミルク粥のレシピを検索。

「…これなら作れるかも、冷蔵庫開けるよ」

「どうぞ」

ヒカリからの了承を受け、大輔は冷蔵庫を開けると材料はしっかりあった。

人参、玉葱、南瓜、ベーコン、ブイヨン、牛乳、ご飯、チーズ、塩。

「大輔~俺も食べたい」

「お前が風邪引いたらな。代わりに果物でも食ってろ」

「鬼ぃ~」

ブイモンは冷蔵庫から果物を数種類を遠慮なく持って行き、ひんやりとした感覚を楽しみながら食べ始めた。

そしてそれを横目で見ながら、大輔はヒカリのためのミルク粥作りの作業を開始した。

「まずは…玉葱、人参、南瓜を刻んで。耐熱皿に置いた後に少し電子レンジにかけてと…」

レシピ通りに忠実に作っていく大輔。

大体料理と言うものはレシピに忠実に、基本さえ守れば美味しく作れて食べられる物である。

変に自己流アレンジを加えるから見た目何だこりゃあになり、味は破壊地獄みたいになるのである。

慣れないうちはレシピに忠実、基本を大事にと言うのが大輔の信条である。

「…ご飯を加えて煮込む。塩で味を整えて、最後にチーズ…よし、ヒカリちゃん。後少しで出来るから」

「うん、良い匂い…大輔君がずっとお家にいてくれればいいのに」

卵粥とか普通のお粥は食べ飽きたので、大輔みたいに色んな味のお粥を作ってくれるのは本当にありがたい。

大輔はヒカリの無茶な発言に苦笑した。

「あはは、あのさヒカリちゃん、俺もヒカリちゃんが心配だけどさ。ずっとヒカリちゃんの家にいるのは無理だってば」

「だよねえ…」

当然の返答に溜め息を吐くヒカリ。

そこでブイモンが爆弾を投下した。

少なくてもメタルグレイモンのギガデストロイヤーかスカルグレイモンのオブリビオンバード級の物を。

「ヒカリが大人になって大輔のお嫁さんになれば大輔の料理を毎日食べられるぞ?」

「「え?」」

「俺は知ってるんだぞ?好きな奴同士は結婚って誓いをして一緒に暮らすんだって、嫌いじゃないなら一緒に暮らせば良いじゃんか。勿論ちゃんと一緒に暮らせるくらいにデカくなってからだけどさ」

「おい、ブイモン。変なこと言うなよな?」

「そうだよお」

ブイモンの言葉を聞いたら変に恥ずかしくなり、大輔もヒカリも声が上擦っている。

取り敢えずヒカリにお粥をよそって差し出した。

「はい、少し早いけど召し上がれ」

少し早い昼食だが、食べた後に直ぐに寝るのもあれだしと思い、食べさせることにした。

「頂きま…」

その時、玄関辺りから間の抜けた音…腹の虫の音が聞こえた。

「「…ブイモン」」

「俺じゃない!!音の出所は向こうだよ!!」

ブイモンが指差した先にはピンク色の物体を抱えたサマーキャンプに出掛けたはずのヒカリの兄の太一の姿があったのだった。 
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