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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE134 倉崎と言うクズ その二

エルダとの話の後、俺は親父の原付に乗って自宅アパートに向かう。エギルの店は同じ台東区内にあるので原付でも精々10分そこそこの時間で行き来出来、あっと言う間に到着した。
だが、そのまま自分の部屋に入る前に、俺は尋ねなくちゃならない相手がいる。

俺「あんまし気は進まねーがな……」

相手は隣人の倉崎。茅場晶彦の大学時代の同級生であった男だ。エルダからは念のため奴が大学中退後も大学時代の同窓達――特に同じ重村ラボの者達と何か接触が無かったかを探る様に言われたのだった。
ぶっちゃけあの騒々しい下品なメタボの男と口を利くのは気が進まない、普段から俺の爺さんとやり合ってる事も有り特に気が進まないが――それでも、エルダと一対一で話すよりかは幾分かマシだと考える事にしよう。

そして、自宅アパート前に辿り着き原付を住人用の駐輪所に停めて早速その汚らしい喚き声が俺の耳に響き渡るのだった。

倉崎「何勝手に出歩こうとしてんだ爺!大人しくしろっつーの!耳も遠くなっちまったのかよ、えぇ!?」

俺「ま、ウチの爺さんとやり合ってるわけじゃないだけマシか……」

倉崎は爺と呼ぶ相手に対して怒鳴り散らしていたが相手は俺の爺さんでは無いようだった。室内から大声で尚も倉崎の喚き声が響き渡り続ける。

倉崎「テメーが勝手に外出て何か仕出かしたら俺がウダウダ言われるつったろうが!だからテメーは外に出るなつってんだよ!」

俺は倉崎の喚き声が響き渡り続ける部屋の前に立っていた。倉崎が住んでいると言っても部屋の表札に書かれている名前は倉崎ではなく、本来の借主である『神田川(かんだがわ)』だった。倉崎はあくまでこの神田川が借りている一室に上がり込んでいる居候に過ぎないのだが、この通り相手が認知症気味である事を良い事に横柄に振舞い続けている。

俺「倉崎さんよ~、居るだろ?つーかアンタの声駄々洩れだぞ~」

俺は部屋のチャイムを鳴らしながら倉崎を呼び出す。

倉崎「けっ、小田桐のクソ爺の孫か!ちょっと待ってろ!」

苛立たし気な声をあげながら倉崎は乱暴に部屋の扉を開けていた。部屋の扉から出てきたのは、ボサボサに乱れた髪型、不潔そうな無精ひげが目立ち、ダルダルの服を着たメタボ体形の男、倉崎正司(くらさきしょうじ)だった。

倉崎「んだよテメェ、テメーまで俺がうるせーとかガタガタ抜かしやがる気かぁ?爺に似てきちまったなぁ?」

俺「俺があの爺さんに似てたまるか……別にクレームつけに来たわけじゃねぇよ。少しばかし聞きたいことがあるだけだよ」

うるさいのはうるさいのだが、今更その事で文句を付けたところで改善されるわけがない事くらいは今までの爺さんとのやり取りで分かり切っている事だ。

倉崎「ったく、めんどくせー!あんまり長い話だったら追い出すからなテメー!」

ひとまず俺は倉崎の部屋――もとい神田川の部屋に入り込む事には成功した。予想はしていたが部屋の中は倉崎が食い散らかしただろうカップ麺の容器が辺りに散乱しており、その他にも使っているのかどうか分からないコードがごちゃごちゃと床に伸びており、ゴミ屋敷になりつつあるような部屋であり、空きっぱなしの二段式の押し入れの下段には布団が敷かれており、その中にこの部屋の本来の借主である老人の神田川が弱々しい姿で座り込んでいた。

倉崎「おい爺!しばらくこのガキと話あるからテメーはそこから一歩も出るんじゃねーぞ!勝手なことしやがったらテメェまたそこに閉じ込めちまうから覚悟しやがれよ!!それとな、上の段の俺の私物には絶対に触んじゃねーぞ!分かってんのか爺ぃ!?」

神田川「あ、あぁ……済まないね、ホント済まないね……」

弱々し声で済まないを繰り返し謝りながら神田川はゆっくりと押し入れの戸を閉めるのだった。

倉崎「ったく手間掛けさせやがって!尻拭いさせられるこっちの身にもなりやがれってんだ!」

俺「相変わらず無職の居候の身とは思えねーほどの横柄っぷりだなアンタは……」

俺がそう声を漏らすと倉崎はぶんぞりがえった態度で押し入れを指差しながら、今度は俺に向かって大声をあげる。

倉崎「無職でも居候でもねぇつってるだろ!俺はなぁ、この爺の住み込みの世話係なんだよ!コイツが余計な事仕出かさねーように管理するっつー仕事があるんだよ!」


自称……世話係!!それは単なる仮初の肩書!無論……何ら実績のない肩書!やる事と言えば……毎日昼と夜に適当な食事《乾パンや牛乳程度》を用意するくらいである!
常日頃から居候先の主を邪険に扱い…口汚く罵り…本来であれば彼の為に支給されているはずの生活保護費を搾取!自らの無職な生活を維持する為に徹底的に搾取する……それが、この倉崎と言うクズである!! by立木ナレ


神田川「ああ……飯、飯ぃ~」

倉崎が押し入れを指差していた矢先、その中にいる神田川の爺さんは呻き声交じりに飯と唸りながら、ゆっくりと押し入れの戸を開けて、のそのそと歩き出ようとしていた。

倉崎「勝手に出るんじゃねぇって言ったろうがぁ!!飯はさっき食っただろうがクソボケ爺がぁぁぁぁぁ!」

神田川「ひ、ひぃ…!す、済まん済まん……そ、そう言えばさっき食わせてもらったかのぉ?」

倉崎に怒鳴りつけられた神田川の爺さんは全身を震わせて怯えて、ひたすら謝り倒していた。倉崎は苛立たし気にドスドスとデカい足音を立てながら神田川の爺さんに近づき腕をガッシリと掴んで力づくで引っ張り押し入れに押し込んでいた。

倉崎「そこでじっとしてやがれ……動くんじゃねぇぞ!!言って聞かねぇってなら強硬手段だ!」

倉崎は怒鳴り散らしながら神田川の爺さんを押し入れに押し込んだ後、戸を閉めて――壁に立てかけてあった一枚の太めの樹のベニヤ板を運び、それを押し入れの戸の隣に置く。
ベニヤ板は倉崎が運びやすい様に二つの穴が開いてはいるが、丁度押し入れの戸と同じくらいのサイズ故に締め切った戸はこれで全く動かなくなってしまい、動く方の戸を動かしたところでベニヤ板によって塞がれている為、中にいる神田川の爺さんは完全に閉じ込められてしまったわけだった。

神田川「だ、出しておくれ……倉崎さん……こ、こんな暗くて狭い所に一人で……勘弁して遅れぇ」

倉崎「しばらくその中で反省しやがれボケ爺!」

押し入れに閉じ込める罰って、昭和のアニメとかで親が子供をお仕置きする上等手段だな……この場合はふてぶてしい居候が部屋主を理不尽に閉じ込めているだけだが。

俺「暗がりの中にあの爺さん一人で大丈夫かよ?」

倉崎「ぎゃはははっ!別に心配いらねーっての!ちゃんとLEDのスタンドライト位は設置してるからよ、あの爺が使い方分かってるかしらねーけどな!ぎゃははははははっ!!」

押し入れの中からは相変わらず神田川の爺さんの弱々しい声が助けを求めていた。哀れな爺さんだとは思うが、どうにも俺を含めて周辺住人たちはこの倉崎と神田川の関係を概ね知っていながら放置の状態だった。
最もこの山谷では、どいつもこいつも自分の生活の事で手いっぱいで他の奴がどんなトラブルを抱えていようが、身近でどんな事件が起きようが大抵は無関心だ。

そして俺自身も―――自分で言うのもなんだが、SAOでは目の前でPKされそうなプレイヤーを助けたり、リアルマネーゲームでもデレックを救おうとしたり、他にも我ながら大して得にもならないような人助けをしたもんだと思うが、この現実世界(リアル)じゃ打って変わってそんな事をやろうなんて気には微塵も起きなかった。
無論、リアルじゃ目の前で人が殺されそうになったり、死にそうになったりなんて事は早々に起きたりはしなってのもあるのだが―――仮に目の前でSAO時代に起きていたような事が実際にリアルで起きたとしても、オズマではない――小田桐弭間(おだぎりはずま)としての俺は恐らく自分には大したことは出来ないだろうと見て見ぬ振りなんだろう……事実、今だって目の前で認知症気味の爺さんがふてぶてしい居候の男に横柄に好き放題に振舞われ、押し入れに閉じ込められたところだと言うのに俺はそれを助けようなどと言う気は微塵も起きなかった。

倉崎「んで、オメーは何しに来やがったんだよ?」

俺「ああ、ようやく本題に入れそうだな」

そうだ、俺はこの倉崎に聞いてほしいことがあるとエルダに言われてきたのだが、神田川の爺さんによって中々本題に入れなかったところだ。
その神田川の爺さんは今は押し入れに閉じ込められてるし、これで心置きなく話が進められるから良しとしよう……

俺「アンタさ、大学時代の教師とか同級生とか先輩後輩連中と今も付き合いってあるか?」

倉崎「ああ~ん?いきなり人様の家に来ておいて、な~に急に妙な事聞いてきやがるんだテメェ?」

流石にこんな質問は予想してなかったのだろう、倉崎は見苦しい顔で眉をひそめて、更にその顔は見苦しく変貌していた。
ついでにお前の家じゃないだろうと言うツッコミは心の中に留めておく・

俺「俺の知り合いがSAO事件の首謀者の茅場の事に関して色々と調べててな……で、そいつが言うにはアンタさ、茅場の大学時代の同級生何だって?」

倉崎「けっ……どこのどいつか知らねーが、茅場絡みかよ!」

茅場の名前を聞いた途端に倉崎は更に不機嫌そうに舌打ちをした。

倉崎「ま、あんまし面白くねぇけど、確かに俺が東都大学時代の同級生で同じ重村ラボ所属だったんだよな……あの脳味噌が計算式で出来てそうな野郎はよぉ!!」

俺「それでだ……アンタって大学辞めてからも茅場とか――その他の大学時代の連中と付き合いがあるのか聞きたいんだよ」

倉崎「ねーよ!もともとあの連中とは学校以外では何の付き合いもねぇ連中だったからな!特に茅場の野郎なんかとは徹底的に縁を切りてぇと思ってたからな!」

倉崎は口やかましくそう言い吐き捨てていた。無論倉崎の言葉がすべて真実という確信は無いのだが、エルダは倉崎に関してはアスナの一件の関係性はほぼ皆無と見ているので詳しく探る必要はないだろうと俺も思っていた時だった。

倉崎「お、でも後輩の一人がよ。確かSAO事件の何ヶ月か前くれぇに連絡してきやがったぜ」

俺「後輩が連絡?」

倉崎は唐突に思い出したようにそう話し始める。その内容が重要な事なのか、些細な……同窓会だとかの話かは分からないが、聞くだけ聞くか。
そして妙に気になるのが、倉崎の表情が妙に愉快気に、ニタニタと下卑た笑みを浮かべている事だった。

倉崎「おうよ!大学時代の一年後輩の奴なんだけどよ……こいつが飛んだヘタレ童貞野郎でな!大学時代は毎日弄りまくって遊んだもんだぜ!ぎゃはははっ!!」

詳しくは分からないが、この倉崎の下卑た笑いからしてその後輩は相当倉崎に弄りまくれれたのだろう。
けど、そんな倉崎の事を恨んでいても仕方なさそうな後輩がなぜ倉崎に連絡を?

俺「その後輩、アンタに何のために連絡して来たんだよ」

倉崎「それがよ、アイツ俺が大学時代に研究してたウィルスのデータを売ってくれとか抜かしやがったわけよ!」

俺「アンタが研究してたウィルスのデータ?」

倉崎「おうよ!隠密性に特化したステルスウィルスでな―――大抵のウィルスセキュリティは突破しちまう優れものよ!ま、適合するAIが作れなかったから、とにかく合理的な行動が取れなくてよぉ、結局研究は途中で止めちまったけどな!」

俺「へぇ~……随分と大それたものを開発してたんだな」

それは間違いなく、エルダが言っていた適合するAiが作れずにお蔵入りになったと言う例のロクでもないウィルスだろう。
だが、それを売るように頼んできた後輩がいたとは……使い物のならないはずのウィルスを何故?

俺「誰から……いくらで売ったんだ?」

倉崎「それがなんとよぉ……10万円だぜ10万円!アイツ何考えてやがるか知らねーがあんなのを10万円で買ってくれるたぁ、お目でてぇ話だぜ全くよぉ~!」

得意気に大笑いする倉崎、そして倉崎は続けてそのウィルスを購入したと言う後輩の名前を口にするのだった。

倉崎「全く何がしてぇんだろうな……レクトに就職してすっかりお高く留まってやがるあの須郷ちゃんはよぉ~」

俺「レクトの……須郷だって?」

それは、エルダが訝しんでいた人物だった。レクトの須郷が倉崎からウィルスのデータを10万円で購入したと言う事実……これはもしや、ALOでの今のアスナの写真の一件どころか――下手をしたらSAO時代から何かしら関わりがあったのではないのか? 
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