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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
3章 穏やかな日々
  25話 春の到来!?

 
前書き
 はい、どうも、白泉です!最近調子がよく、バンバン書いてます!

 ではでは、前回は気になる序章でしたが、いよいよ本題に入っていきます!

 それでは、さっそくどうぞ!
 

 
 SAOにいくつかある牧場系の街の一つ、36層“アラガンド”。周辺であまり稼ぎの良いフィールド、そしてモンスターがいないため、ほとんどプレイヤーもおらず、さびれたような雰囲気だ。

 その中にある、この街唯一の宿屋兼レストラン、“踊り狂う雌鶏亭”。名前は少々恐ろしいが、NPCレストランの中ではリアの中で指十本の中に入るほど、かなり気に入っている店だ。味に加え、リアとツカサにとって、さびれているところが何よりもありがたい。


 草を食べている牛がいる牧草地を囲む柵の脇を通り過ぎると、一軒の建物が見えてくる。その奥にはある程度の湖があり、非常に景観がいい。

 その建物の入り口の上にかけられた、年季の入った木の看板。そこには一羽の雌鶏が描かれている。リアは迷わず扉を開けた。

 家具はすべて木製で統一されていて、アットホームな雰囲気だった。所々置いてある鉢植えの植物が、一面茶色の店内に生き生きとしたアクセントを与えている。だが、客は全くいず、ガラガラだ。…いや、背の高い鉢植えの陰に、一人のプレイヤーが座っていた。茶色いフード付きマントをすっぽりとかぶっていて顔は見えないが、ダボッとしたマントでも隠し切れぬ胸のふくらみで女性だとわかる。

 
 リアはゆっくりと彼女に歩み寄ると、その相席に腰を下ろした。

「や、アスナ」

 アスナは名前を呼ばれると顔を上げ、フードをとった。栗色の艶やかな髪が零れ落ち、ハシバミ色の瞳が店の明かりを照り返した。リアは思わずその眩しさに少し目を細める。

「ごめんね、急に呼び出して」
「いいよ、別に。でも、いいの?今私が攻略組との接触は禁じられてるのぐらい、知ってるでしょ?」

 お冷を持ってきたNPCのウェイトレスにサンドイッチとショートケーキ、そして紅茶を注文しながらいうと、アスナは珍しく少々悪い顔になる。

「ただ私は友達に会ってるだけよ」
「アスナの口からそんな言葉を聞く日がくるだなんて思わなかったね」

 リアは思わずニヤリとした。こういうアスナはまったくもって嫌いではない。


「それで?何かあったの?」

 ただ要件を促しただけなのに、途端にアスナはいままで見せたことのない顔をした。わずかに紅潮する頬に、瞳はきらきらと煌めき、どこか照れたような、恥ずかしげな顔。

 思わずリアはアスナの顔をまじまじと見てしまう。しかし、やがて合点がついた。…この顔は、所謂“乙女の顔”だ。

「ねぇ、まさかキリトが好きとか、そういうこと?」

 
 いきなりのドストライクだったせいか、アスナの耳まで赤くなる。少しもじもじしていたが、小さくうなずいた。

「う、うん…そうなの」
「へえぇ」

 盆を運んできたNPCからサンドイッチとケーキの皿、そして紅茶のカップを受け取りつつ、外目から見れば、ただ単に驚いているようにしか見れない。…だが、リアの内心は、さまざまな色がまじりあい、ひどく汚い色で一面塗りたくられていた。


「いつから?」
「…その、一緒に昼寝したとき、かな」
「ああ…そういえばキリトがそんなことしたって言ってたっけ」

 平静を保ちつつ、サンドイッチにかぶりつきながらリアが普通に返すと…

「き、キリトくんが!?なんて言ってた!?」

 いきなりアスナが席を立って前かがみになりがっついてきたため、サンドイッチがつまり、思わずリアはむせた。

「ごほっ、ごほっ!…ごほっ、別に、ただアスナとこういう成り行きで昼寝してきたって。まぁ、あと、“やっぱりギルドの副団長だなんて大変なんだろうな”なんてのんきに言ってただけだよ」
「ほかには!?何か悪いこと言ってた?」
「いや、キリトは陰口言うタイプじゃないし。ほんとにそれだけだよ」
「よ、よかったぁ…」

 アスナは胸をなでおろしながら再びストンと座った。リアはコーヒーを一口飲み下す。

「それにしても、まさかあの攻略の鬼がうちの従弟に熱を上げるとはね」
「い、いいじゃない!別に!」
「いや、悪いなんて一言も言ってないけど?」
「ご、ごめん…」

 アスナの感情の起伏が激しい。よけいに居心地が悪くて、胸がふさがったように苦しくなる。

「それで?私をここに呼んだのは?」
「あのね、実は…」

 リアは箱入り娘のアスナが、攻略と同じように恋愛にも突進型で、まさか自分の家に招いて手料理の夕食をふるまい、そして2人きりのパーティーを組むところまでこじつけているとは思いもしなかったので、かなりの驚きだった。そして、本当の本題は、

「明日一緒に迷宮区に行く約束をしてて。それでその…キリトくんのこと、教えてほしいの」
「なるほどね。それにしても、随分肉食系だったんだね、アスナ」
「だって、伝えなきゃ伝わらないじゃない」

 恐らく、アスナはただ単に自分の考えを口に出しただけだったのだろう。だが、その言葉は妙にリアにずきりと刺さった。

「…伝えなきゃ、伝わらない、か…」

 妙に頭の中をぐるぐると回る。アスナが怪訝そうな顔をした。
「リア?」
「…ん?ああ、ごめん。なんでもない。それで、キリトの何が知りたい?」
「す、好きなタイプとか…」

 リアは少し考えこむ。頭に浮かぶ、少々女顔の真っ黒くろすけ。

「うーん、割合ぐいぐい引っ張ってくれる感じの人が好きっぽいね。あとは、基本的に上品系の人かな。詳しくは聞いたことはないけど、そんな感じがする。だから、アスナとかは結構ツボにはまるんじゃないかな?」
「ほんとに!?」
「うん」

 アスナの眼がきらきらと輝く。…あまり迂闊なことは言えないなとリアは心の中で思った。機嫌取りでうまいことをいって、もし失敗したときに悲惨なことになりそうだ。流石に、体にレイピアによる大量の風穴を体に開けたくはない。

「それと、キリトは基本的に結構食い意地が張ってるからね。胃袋をつかんだらもうこっちのものだと思うな。明日のお昼も、何か作って持ってって、食べさせなよ」
「分かった!キリトくんの好き嫌いはわかる?」
「ん~…確か嫌いなものはほとんどなかった気がする。好きなのは、あー、辛い物だね」
「辛い物?」

 アスナが首をかしげる。

「うん。めちゃくちゃ辛い物がいけるし、好きなんだよ。小学生のころから、よく大量のマスタードを食パンにはさんで食べてたぐらい」
「えっ」

 アスナの反応は至極当たり前だろう。正直、リアもキリトのほかにそんなことをする人間を見たことがない。昔はよく、キリトが味音痴なのではないかと疑ったくらいだ。
 
「まぁ、攻略中にササっと食べられるように、食べやすくて、それで結構香辛料を利かせたものがいいんじゃないかな?それと、いかにも手間暇かけてます!って感じじゃなくて、ある程度簡単に作れますみたいな感じにするといいかも」

 リアの言葉をアスナは真剣にうなずきながら聞きつつ、ホロキーボードを展開させ、指を走らせている。リアが言ったことをメモしているのだろう。いかにも優等生っぽい。


 そこからはアスナに根掘り葉掘り聞かれ、キリトのプライバシーを侵害しない程度の教えてやる。アスナはリアの話を一言一句聞き逃すまいと集中しているようだ。その真剣な面持ちを見ると、心臓が時折鈍い痛みを放つ。




 「伝えなければ、伝わらない」。先ほどアスナの言った言葉が、リアの脳裏によみがえる。なら、どうするべき、なのか?


 恐らく、聞きたいことはすべて訊ききったのだろう、アスナはホロキーボードを片付けたようで、すっかり冷めているだろうコーヒーカップをとった。

「これで全部?」
「ええ。本当にありがとう、リア」
「いいよ、気にしないで」

 気を付けていたのに、考えることに気を取られて微妙に片言で、硬い言い方になってしまう。聡いアスナは敏感にそれを感じ取った。

「どうかしたの、リア?」


 ずっと悩み続けていたが、こうなっては早急に言うか、言わないかのどちらかを選ばなくてはならない。結局、リアが選択したのは…言う方だった。


「ツカサ君のことは、本当にもういいの?」

「…え?」

 あまりにも唐突過ぎて、アスナはフリーズしている。

「前に、ツカサ君に、告白…したんだよね」
「…気づいてたんだ」


「ツカサ君の様子が変だから、聞いちゃって」

 そして、以前から訊かなければいけないと思っていたことを、口にした。

「…アスナは、私を恨んでる?」
「え?」

 まったく予想していなかった言葉なのだろう、アスナは眼を見開いたまま硬直する。リアはアスナにかまわず続けて言う。
 

「私さえいなければ、今頃はきっと…」

 ツカサ君の隣を歩いていたのは、アスナだった。たったそれだけの言葉なのに、リアは最後まで言うことができなかった。どうしても、のどが張り付いて、声が出ない。なぜなのかは、リアが一番わかっていた。

「あのね、ツカサさんに告白したときに言われたの」

『今の俺がここにいられるのはリアのおかげで、何よりも、誰よりも俺にとって一番大切なのは、リアなんだ。自分の命とも、比べられないぐらいに…だから、いつになるかはわからないけど、リアが俺を必要としなくなるその時まで、ずっと…ずっと、隣にいようと思ってる。』

「私はシリアで、2人が何を見てきたのか、体験してきたのか、何も知らない。だけど、リアがいなかったら、きっと今ツカサさんは、ここにはいなかったんじゃないかって。それに、ツカサさんは、本当にリアしか見てないんだなって分かったの。だからこそ、すっぱりとあきらめられて、こうして新しい人を好きになれた。恨むなんて、とんでもない、むしろ」

 

 アスナは、そこで言葉を切ると、まるでほころぶ一凛の百合のような笑みを浮かべた。


「ありがとう、リア」



『ありがとう、りあ姉!』
 不意に脳裏にそう言って満面の笑みを浮かべた幼い日のキリトがよぎった。従弟というそこまで近い関係ではないものの、基本的に機械好きで趣味嗜好がよく合い、それに加え家も近く、リアの母親が仕事の時は毎回キリトの家に預けられていたため、非常に仲が良かった。

 以前、キリトの使っていたパソコンの調子が悪くなり、一度リアがそれを直してやったことがある。その時に、キリトにそうやって礼を言われたのだ。

 なぜ今、遠い昔の小さな記憶が思い出されたのか、よくわからない。だが、不思議ともう先ほどまであった胸の痞えはなくなっていた。


 リアもつられ微笑を浮かべた。

「そんなこと言われたら、なんとしてでもキリトとくっつけなきゃね」
「え!?」

 アスナの頬がみるみる紅潮する。リアはニヤリと笑った。

「アスナってすぐ赤くなるよねぇ」
「そ、そんなことないよ!」
「わー、照れてるー!」
「うるさーい!」

 
 空になった2つのカップは、2人の間のテーブルの上で、仲良く寄り添っていた。






 
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?今回のオリジナル編のコンセプトとしては、この小説、“ファンタジア”の一つの重要な要点の、「リアとツカサの関係の移り変わり」を書きたいなと思います。そのため、何気ない話に思えても、結構重要な話であります…!今回はリアのほうに視点を置いてみましたが、次はツカサのほうに行きたいと思います。


 

 そういうわけで、次回もお楽しみに! 
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