ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~
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FILE132 アスナの抵抗・・・復活のガチャモン&モック!
妖精王オベイロンの手により、SAOクリア後も仮想世界から抜け出す事は敵わぬまま、世界樹の鳥籠の中に捕らわれていたアスナはオベイロンの隙を付き一時的に鳥籠から脱出、その先で目の当たりにした非人道的な人体実験を目の当たりにし、それの止めようとしたがナメクジのアバターを使いログインしていた研究員たちに阻まれて失敗…更に、SAO時代にアスナが聞き覚えのある忌まわしき声が響き渡り、それは姿を現したのであった!
それは二人分の声、その姿は片方は身体の半分が緑色でもう片方が灰色と言うアンバランスな体色…もう片方も体の半分が赤色でもう片方が灰色……そう、その二人はSAO時代、ソードアート・オンラインのマスコットキャラを自称しプレイヤー達を翻弄し苦しめた忌まわしき存在…ガチャモンとモックであった!by立木ナレ
ガチャモン「ガチャガチャモンモン、ガチャモンで~す!」
モック「私、ガチャモンの相棒のモックですぞぉ~!」
アスナ「な、なんで―――あんた達がここに…ここにいるのよ!?」
SAO時代にどんな凶悪で醜悪なモンスターよりも……危険で狂気的なPKプレイヤーよりも忌むべき者たちの出現にアスナは驚愕し、震える声を絞り出していた。
だが、ガチャモンとモックはSAO時代と全く変わらぬ振る舞いで、ナメクジたちの触手によってその身を拘束されているアスナに顔を同時に近づける。
どれだけ大はしゃぎしていようと、一切変わらぬ表情はアスナにかつての薄気味悪さを思い出させる―――
モック「ぐほほっ!我々がなぜここにいるか?――――ですってガチャモン!」
ガチャモン「くすすっ!アスナさんってば相変わらず変な事を聞くね~」
ガチャモンとモックは互いに顔を見合わせて、表情こそ変わらぬものの、不快な笑い声をあげあっていた。その態度はアスナの神経を更に逆撫でさせて、彼女から激昂の声を発せさせることとなる。
アスナ「何がおかしいって言うの!?私は団長に―――茅場晶彦から聞いたのよ!最後の間際にSAOはもうじき崩壊するって―――あの言葉通りならSAOは既に存在しないはず…それなのに何であんた達がこの世界にいるって言うの!?」
ガチャモン「あ、茅場先生ったらそんなこと言っちゃってたんだね――ま、確かにSAOは存在そのものが消滅しちゃったのは僕らも知ってるよ」
モック「いやはや、儚いものですなガチャモン。長年の年月と巨額の費用、そして最終的にはアーガスの存続そのものを投げ打って作り上げたソードアート・オンラインが僅か2年余りの正式サービスで終了してしまうとは~」
ガチャモン「くすす、それもこれもやっぱり黒の剣士キリト君がイレギュラーだったからかな―――おおっと!アスナさんがお怒りのご様子だから説明するとね、SAOが消えようが僕らにとっちゃどうって事ないんだよ」
アスナ「なんですって……」
人差し指を目の前で振りながら得意気な様子で語るガチャモンに対してアスナは鋭い眼光で睨み続ける。
モック「えー、我々はSAOのデータを常日頃から解析し続けるにあたって、SAOはゲームクリアと同時に自動的に崩壊するように仕組まれている事にも突き止めていましてですな~、その際にゲームが完全に崩壊する前に避難先を事前に確保しておいたわけですぞ~」
アスナ「それが、この仮想世界……アルヴヘイム・オンラインだと言いたいわけ?」
ガチャモン「くすす、ある意味このALOの完成は僕らの功績によると言っても過言じゃないからね、そう言う点ではALOの正式サービスが開始された1年前の時点で僕らの本来のホームはALOでSAOにはあくまで出向中だったって感じで良いんじゃないかな?」
モック「ホントでしたらALOが完成された時点で我々もSAOからはおさらばしたかったですけどね~、ボスがSAOが存続するうちはSAOでの活動に従事しろなんておっしゃるもんですからな~、ホント人使いが荒い方ですよボスは~」
アスナ「ボス……やっぱりあの男ね!」
ガチャモンとモックが口にするボスと称する人物を既にアスナは知っていた。そしてそのボスと称される人物がSAOにガチャモンとモックを送り込み、SAOのデータ解析を命じると同時にプレイヤー達に様々な悪質な干渉を行っていた事をアスナはALOに捕らわれた事により初めて知ることになったのであった!
ガチャモン「さてと、お達しの通りボスはカンカンでお顔が真っ赤だからね、君達。そろそろアスナさんを鳥籠に戻してパスワード変更よろしくぅ~」
モック「10代の見女麗しい少女を目の当たりにして日ごろ溜まった情欲を発散したいのは山々でしょうが、それもアスナさんがボスにチクりでもしたらあんた達だって何されるか分かったもんじゃないでしょ?」
ガチャモン「そーそ、だからまっすぐ鳥籠にゴー!」
ナメクジ「はいはい、自分らは所詮下っ端ですよ――せめて、テレポートじゃなくて歩いて戻ろうよ。もうちょっと感触を味わいたいし」
ナメクジ「好きだねぇ、お前も」
ガチャモンとモックの命を受け、渋々その言葉に応じるナメクジたち。アスナを縛り上げている方のナメクジは、脚の無い身体をぬるりと動かし、格納室の入口の方に向き直った。
二匹とガチャモン&モックの視線が一瞬外れた瞬間、アスナは素早く右足を伸ばした。コンソールのスリットに差し込まれたままのカードキーを、指先で挟んで抜き取る。
同時にウインドウが消滅したが、ナメクジたちとガチャモン&モックはそれに気が付かなかったようだった。
そしていつの間にかまるで工事現場の作業員のような安全ヘルメットを被ったガチャモンとモックが先導し、『ピッピー』と笛を鳴らしながら先を歩き始める。
ガチャモン「はいはい、お遊びは程々にして進行開始!前に進め~」
モック「あ、そ~れ♪右良し、左良し、前方良し!」
ナメクジ「ほらほら、暴れちゃダメだよ」
ナメクジは改めてアスナの身体を持ち上げると、出口を目指してぬるぬると移動を始めた。
ガシャン、と音を立てて鳥籠の格子戸が閉まった。ナメクジは触手でナンバーロックを操作すると、それをアスナに向かって振った。
ナメクジ「じゃあねー、チャンスがあったらまた遊ぼうねー」
アスナ「あんた達の顔は二度と見たくないわ」
アスナは素っ気なく言い、反対側の格子まで歩いた。二匹は名残惜しそうにアスナを見ていたが、やがて体の向きを変え、枝の上を遠ざかって行った。
そしてその手の中には、銀色のカードキーが密かに握られている。コンソールが無ければ役には立たないだろうが、今のところこれが唯一の希望であった。
アスナ「わたし―――負けないよ、キリト君。絶対に諦めない。必ずここから―――」
ガチャモン「さてと、なんか世間話でもする?」
決意の言葉を口にしていた矢先、いつの間にか鳥籠の中に勝手に入っていたガチャモンがアスナのすぐ後ろから急に声を掛けて来て、アスナは身体を一瞬硬直させ、反射的に首だけを後ろを振り向けていた。
すると背後にはガチャモンだけでなくモックもガチャモンの隣でアスナをじっと見ていた。
アスナ「あんた達、まだいたの……さっさと消えなさいよ!!」
ガチャモン「いきなり消えろだなんてそんな無茶振りを~……ま、出来ない事も無いけどさ」
モック「しっかし、アスナさんのそのムキな反応は懐かしいですな~。SAOの最初期の頃を思い出しますですぞ~」
ガチャモン「うんうん、アスナさんったら最初の頃は僕らがちょ~っと顔見せたりするだけで大声で本気で怒ったりしてたのにさ、何時からか反応が素っ気なくてさ、まるで反抗期真っ只中の娘が父親に対して見せる態度って感じだったよね~」
SAO時代のアスナを思い出しガチャモンとモックは勝手に鳥籠の中で過去の思い出話に浸り始めていた。相変わらず人の神経を逆なでするのが得意なガチャモンとモックに対してアスナは久々にかつて散々感じさせられた鬱陶しさを全身に感じて声を荒げる。
アスナ「さっさと出てって!この中に入ってこないで!」
ガチャモン「くすす、この中に入ってこないで――だってさ、なんだかんだでアスナさんもこの鳥籠の中が気に入っちゃったみたいだねぇ~」
モック「ぐほほ、まさに住めば都とはこの事ですな~。アスナさんでしたらきっと無人島で一人になっても逞しく生きていけるのかもしれませんですなぁ~」
アスナ「こんな鳥籠に比べればいっそ無人島の方がマシだわ!」
結局、最後までガチャモンとモックはアスナを嘲笑いまくった後に姿を消したのであった……
※ ※ ※
一方その頃現実世界―――
エルダ「茅場先生の大学時代の主な知人関係は決して多くなかったそうよ。その内の何人かとは私も顔を合わせた事くらいはあるけどね」
エルダはそう言いながら自分のスマホを取り出し、幾つかの画像を見せてくる。
エルダ「まずは茅場先生が所属していたラボの教授の重村教授よ」
エルダが見せてきた最初の画像は眼鏡を掛けた初老のおっさんだった。だが、俺の身近にいる山谷のおっさん達と違い、身なりや風貌からして如何にも高学歴、頭脳労働に就いていそうな雰囲気を感じさせる。
俺「んで、このおっさんが怪しいってのか?」
エルダ「そうね、実は重村教授の娘さんはねSAO事件の被害者で実際にSAO内で亡くなったそうよ――流石にSAO内でのキャラクターネームまでは分かってないけどね」
俺「つまりこの教授にとっちゃ茅場は娘の敵になるわけだが……ALOを運営してるレクトと関係性はあるか?」
エルダは首を横に振り、否定の意思を示しながら言葉を続ける。
エルダ「無いわね、彼は今も東都大学の教授で企業人としては電子機器メーカーの『カムラ』の取締役を務めてるけど、レクトとはこれといった繋がりは無いわね」
大学教授にして電子機器メーカーの取締役とは――さぞたんまりと稼いでやがる事だろうな。その内の10%でも俺達みたいな恵まれない貧乏人に恵んでやろうなんて考えは、この手のバリバリ働いて稼いでるエリート様にはないんだろうがな。
エルダ「次は大学時代の後輩の神代さんね」
エルダが見せたのはショートヘアーの20代半前後の女だった。
エルダ「彼女は茅場先生の大学時代の後輩であると同時に彼女でもあったそうよ」
俺「あのマッドサイエンティストが彼女……彼女だと?」
にわかには信じ難い話だった。訳の分からない頭の狂った野望の為に1万人を仮想世界に閉じ込めた挙句に4千人を死なせるような男が色恋沙汰や女の身体に興味を持つなどあるか?
まあ、あんな奴でもその辺りは男だったと言う事も有り得なくは無いのだろうが――やはり奴が女を作っていたとは想像し難いな。
エルダ「神代さんに関してはSAO事件が発生してからしばらくしてから所在が掴めなくなってて、今も連絡が取れてないそうよ」
俺「失踪中って事か……茅場の計画にいち早く気が付いて止めようとして消されちまったとかか?」
エルダ「どうかしらね――二人の恋人関係は茅場先生の大学卒業後は自然消滅していったみたいだから、神代さんが茅場先生の計画に気が付ける可能性は低いと思うのよね―――あ、次の人なんだけどね、この人は今現在ALOの主任研究員の立場にいる人よ」
俺「ほお、そりゃ要注意人物だな」
エルダがスグに見せたのは、これまた如何にもエリートっぽさを強調してるような、身なりの良さそうな風貌でメガネを掛けた20代と思わしき男だった。
エルダ「彼も茅場先生の大学時代の後輩だった人よ。最も、周囲からは常に先輩で大天才の茅場先生と比較され続けたせいで随分と鬱憤が溜まってたそうね」
俺「勝手に勝ち目のない相手と比較されちゃ、そりゃ溜まったもんじゃねーだろうな」
すると、エルダは若干神妙な目付きになり、これから肝心な話を始める様子を窺わせるのだった。
エルダ「須郷さんが茅場先生に対して鬱憤が溜まるのはそれだけじゃないわ―――須郷さんは大学時代にね、同級生の女学生の神代さんに想いを寄せていたみたいなの」
俺「神代って確かさっきの―――ああ、そう言う事か」
要するに、思いを寄せていた女がよりにもよって大嫌いな茅場の女であった事が、より茅場に対する敵意を増長させる要因になっていたと言うわけか。
エルダ「ともかくこの須郷って人は要注意人物かもしれないわね――んで、この人は本当についでのついで、ぶっちゃけこの中の人達の中では断トツで落ちぶれた人なんだけど」
エルダはそう言いながら最後の画像を見せてくる。
俺「…………は?」
その画像を見て俺は思わず瞬きをしてスマホの画像を凝視していた。その画像に映る男も茅場の関係者と言う事だが、その男は俺も知っている人間だった。
エルダ「名前は倉崎正司。茅場先生の同級生だったけど4年生の頃に替え玉受験での入学がばれて退学になったどうしようもない人よ」
呆れ果てた様子でエルダはその男の事をどうしようもないと言う言葉で切り捨てた。だが、エルダがその男を軽く評価するのは俺も理解できる……なぜならこの倉崎という男は、俺の……小田桐家の隣の部屋で無職の居候をしているふてぶてしい男なのであった!
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