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無駄な努力をしてみた

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第二章

「どっちにしても」
「そうかな」
「どう考えてもね。けれどそれでもよね」
「やってみるだけやって」
 そうしてとだ、まだこんなことを言う修二だった。実はあまり懲りる性格ではない。
「それで駄目だったら仕方ないだろ」
「言っておくけれど今度駄目だったらね」
 どうかとだ、美香は夫に忠告した。
「私何も出さないわよ」
「つまりもうラストチャンスか」
「そうよ、これで駄目だったらネット通販で椅子買ってね」
 金はあるのだしとだ、妻は夫に冷めた目で告げた。そのうえで夫に大きくて太い輪ゴムを数個渡した。
 修二はすぐにその輪ゴムで椅子を固定した、そうして今度こそと念じながら座ってみたがまたしてもだった。
 傾いた、これで彼も観念してだった。
 ネット通販で椅子を注文してからパソコンをシャットダウンした、そうして食器を拭き終えてお風呂に入ろうとしている妻に言った。
「注文したよ」
「やっぱりそうなったのね」
「今から憂さ晴らしでビール飲むな」
「そうするのね、じゃあお風呂先に入って」
「えっ、僕が」
「お酒はお風呂入った後の方がいいから」
 その方がずっと身体にいいからだ、飲んだ後での入浴は危険だ。
「だからね」
「それでなんだ」
「ええ、じゃあね」
「先にお風呂入ってか」
「ビール飲んでね。何なら一緒に入る?」 
 妻は夫に笑ってこうも言った。
「愚痴なら聞くわよ」
「それで入るついでに」
「そういうことでね」 
 そこから先はあえて言わなかった、お互いに。それでも通じることだったからだ。
「どうかしら」
「やることないしそれじゃあな」
「ベッドに入ってからも一緒だし」
「お風呂一緒に入ろうか」
「そうしましょう」
「それから飲むよ」
 こう言ってだ、修二は美香と共に風呂場に入ってビールも飲んでそうして椅子の憂さを忘れた。椅子が来たのは二日後で色々悪戦苦闘した椅子は粗大ゴミに出すことが決まってもう何もかもが過去のことになって全ては終わった。


無駄な努力をしてみた   完


                   2018・11・9 
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