| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十八話 山の頂上の仙人その四

 智も花札をしていった、彼は最下位になり続けていたがそれでもだった。時間は順調に潰れていった。そのうえで。
 気付けば夕方になっていたがその時にだった。
 英雄が最初にだ、こう言った。
「来たな」
「そうっちゃな」
 愛実がその英雄に応えた。
「遂に」
「待っていてよかったな」
 英雄はまた言った、言いつつも全員車座のままだ。花札を動かしているその手も動き続けている。
「こうして」
「そうっちゃな、花札をしていて」
「いい時間潰しになった」
「それでっちゃな」
「もうすぐ来る」
 まさにというのだ。
「ここにな」
「わし等に匹敵する位の気ぜよ」
 当季も花札をしつつ述べた。
「これは間違いないのう」
「そうですね」
 良太が応えた。
「それでは」
「じゃあこれでじゃ」
 丁度今している花札が終わった、首位は当季で最下位は智だった。
「花札は止めてな」
「会うぞ」
「そうするかのう」
 当季が立ち上がろうとするとだ、彼より先に。
 英雄は立ち上がっていた、そのうえで仲間達に言った。
「会うぞ」
「そうするぜよ」
「今からな」
「見えてきましたね」
 良太は空から自分達の方に来る雲を見た、その雲の上に南蛮の女の恰好をした若い女がいる。紅のドレスに白いカラーが生えている。スペインというよりかはイングランドのテューダー長を思わせる服だ。
「しかし」
「服がだな」
「日本のものとは違いますね」
「西洋の服だな」
「南蛮人を真似ているのでしょうか」
「おそらくそうだな」
 英雄は良太のその読みに頷いて応えた。
「日本とはいってもな」
「舶来ですね」
「そうした服か」
「別に不思議ではない」
 その南蛮の服装についてだ、幸正はこう述べた。
「実は志摩にもだ」
「ああした身なりの者は来るか」
「時折な、御前等は会っていないか」
「南蛮人は時々見たが」
 それでもとだ、英雄は幸正に答えて述べた。
「それでもな」
「仲間が着ているとはか」
「思わなかった。、しかも仙女がな」
「仙人といいましても身なりは決まっていなかったです」
 謙二がこのことを指摘した。
「中国の道服でなくとも」
「よくある白い仙人の服でもだな」
「よかったです」
「仙人の服はどうでもいいか」
「そこはそれぞれです」
 何を着なければいけない、仙人にその決まりはないというのだ。
「そうなっています」
「そうだったか」
「そうです、それで」
「だからだな」
「はい、南蛮の服でも」
「おかしくないな」
「そうかと。確かに派手で意外な身なりですが」
 謙二もこのことは否定しなかった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧