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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と強化合宿編
  NO.079 回想と反転

 
前書き
四日連続で更新します。
超蛇足だけどマスキュラー救済?話なのかな?
私も昨日のは自身で不憫だと感じていますし。まぁ、どのみち結果は見えているけど……。 

 


出久が今もなお爆豪の治療を続けている隣で無言で立っていた洸汰は先ほどの『自分だけが』知っている出来事について少なからず恐怖を感じていた。
それは、出久が問答無用でマスキュラーを倒したことか?
いや、今の洸汰の出久に対しての好感度はその程度では揺らがないから今更出久に恐怖を感じることはない。
では? 爆豪が瀕死の重傷でかつての親の死を重ねた事か?
それは否。
確かに不安いっぱいだったが、それでも洸汰と爆豪の接点はこの合宿のみで、そこまで関係も深くはない。
では洸汰は一体“なに”に対して恐怖を抱いたのか……。
それは先ほどの腕が飛ばされて爆豪が気絶した後の事だった……。







マスキュラーに右腕を切断されてそのまま地面に落ちて気絶する爆豪。
腕からは大量に血が出ているためにすぐにでも治療をしなければ出血死してしまう。
だが、

「はっはぁー! 血だ! 俺はこれを見たかったんだよ!」

快感を味わっているマスキュラー。
そんなマスキュラーに対して洸汰はそれはもう震えあがっていた。
出久に関してはかなり重症で呆然自失になっていた。

「さぁて……こいつは時期に死ぬさ……でも寂しくなんねぇよーにてめぇらもまとめてあの世に……いや、命令があったか。チッ……消化不足だぜ」

そんな事を独り言のように呟きながらもマスキュラーは出久達に近づいてくる。

「呆然自失状態か……なおさらちょうどいいな」
「ち、近寄るな!!」

洸汰が出久の前に立ち必死に両手を広げて通せんぼをする。
だがすぐさまマスキュラーは軽く撫でるように洸汰の頬を引っ叩き横に吹っ飛ばす。

「あぐっ!」
「ガキ……邪魔だ、大人しくしていろ」

そしてマスキュラーは出久の前に立ち、

「そんじゃつまんねぇ幕切れだが連れ去るぜ?」
「―――……くも……」
「ん……? なんか言ったか?」
「よくも……かっちゃんを……よくも!!」

伏せていた顔が上がるとそこには憎しみが籠もっている表情をする出久がいた。
それにマスキュラーは「ほう……」と感心する。
人畜無害そうな出久が今回初めて表に出した感情だ。

「そうだよなぁ……ヒーロー気取りでも所詮は人間なんだから憎しみも感じるもんだ。今まで何度も見てきた顔だ。だが、てめぇじゃ俺には敵わねぇ。諦めろ……な?」

そう諭すマスキュラー。
だがなお出久のその眼光は衰えない。
それでやれやれとかぶりを振るマスキュラー。

「そんじゃ、少し手荒だが生きてりゃ別に構わねぇんだよな? 手足でももいどけば時間稼ぎはできるか?」

誰に問うわけでもなく恐ろしい事を宣うマスキュラー。
だが、その時……出久の脳内ではある変化があった。

『イズクがそんな暗い感情を抱いちゃダメ……』
『フォウ……? でも……』
『私が代わりにこいつをのしておくから、イズクはこの瞬間だけの記憶を忘れて……ね?』
『うっ……』

問答無用で出久はついさっきまでの感情と記憶をフォウに奪われて意識を失う。
そして表に出てくるフォウの意識。
そう……出久とフォウの意識が反転してフォウが今現在出久の体を操っている。
その急な変化にマスキュラーもすぐに気づく。
一歩後ずさりをして一言……。

「おい、緑谷。てめぇは……ダレだ?」

先ほどまでの余裕の表情を消し警戒態勢に入るマスキュラー。
それほどに今の出久(フォウ)は威圧感が半端なかった。
そしてまるでストレッチをするかのように軽い足取りで立ち上がった出久(フォウ)は何度か体を捻ったりしていた。

「うーん……久しぶりの体だからまだ少し鈍いかな?」
「てめぇは誰だぁ!!」

マスキュラーは未知の相手に何かされる前に潰す算段で出久(フォウ)に拳を振り下ろす。
だが、次の瞬間には出久の姿はまるで蜃気楼のごとく消え去った。

「ッ!? はえー!!」
「いやいや、まだ本調子じゃないから本気はこんなものじゃないよ?」

そう言ってチャシャ猫のように笑う出久(フォウ)

「い、出久お姉ちゃん……?」
「おっとそうだった。ボウヤ、今この瞬間の出来事は私と君との内緒でお願いできるかな?」
「え? え?」

口に指を持って行って『内緒ね』というジェスチャーをする出久(フォウ)
困惑の表情をする洸汰。
分からなくもない。
突然誰かも分からない人格の人が出てきたら混乱するのが普通である。

「まぁ、とにかく……イズク、使わせてもらうね?」

ワンフォーオールを発動して全身を強化する出久(フォウ)
そしてマスキュラーに脚力強化で一気に距離を詰めて思いっきりぶん殴る。

「ぐぅっ!?」

マスキュラーも危機を感じてか瞬時に筋線維での守りをするが、出久(フォウ)が使用したのは100%の力であった。
それで思いっきり吹き飛ばされるマスキュラー。
だが、同時に出久(フォウ)の腕もあらぬ方向に曲がっていた。
100%を使った代償は普通に計り知れない。

「あ、いっけない。そういえばまだ完全には使えないんだったね。うん失敗」

そう言いつつも一瞬で腕をオートヒールで元の形に復元する光景をマスキュラーと洸汰は見せられて、マスキュラーはその表情を凍らせて、洸汰に関してはもう顔が真っ青になっていた。
だが、出久も自壊覚悟でやろうと思えば使えないわけでもない手であり、出久(フォウ)は一応後でこの方法も出久に伝えようと思った。
出久はそんな事を聞かされても緊急時以外は怖くてできないだろうが……。

「それじゃしょうがないかぁ……ねぇ小僧。今から本気出すけどうっかり死なないでね?」
「本気、だと……? さっきのが本気じゃなかった……だと!?」
「ええ」

ニッコリ笑顔で出久(フォウ)は「猫又解放!」と言霊を発する。
次の瞬間にはそこには5mを超す巨大な猫の姿があった。

「あ……あ……」

それでマスキュラーは人生の中でついぞ感じた事のなかった恐怖を初めて抱く。
そこには超常黎明期以前から生きているオールフォーワン以上の怪物、怪異・猫又の姿があったのだ。
その鋭い眼光だけでまるで金縛りにあったかのように固まってしまったマスキュラー。
そんな感情を抱いていることを知ってか知らずか出久(フォウ)は腕を振り上げた。
そこからはさきほどマスキュラーが出久にやったような壁に何度も拳を打ち付ける行為を何度も何度も行った。
そう、やり返すがごとく。




……………
…………
………
……




そこにはもう白目を剥いているが、しかし痙攣はしているのでかろうじて生きているマスキュラーの無残な姿があった。
それを見届けて出久(フォウ)も人間の姿に戻って、

「久しぶりにスッキリしたなぁ……♪」

そこには出久の前では絶対に見せないであろう笑顔の出久(フォウ)がいた。
猫かぶりもここまで来ると感嘆の声しか出ないであろう。

「さて……」
「ひっ!!」
「そんなに怯えないで……ってそれは無理な相談だよね。それじゃボウヤ。この事はイズクには絶対に言っちゃだめだからね? イズクの私に抱いている幻想を壊したくないの」
「お、お前は……前に出久姉ちゃんが言っていたフォウって奴なのか?」
「そうだよ」

あっけらかんとそう認める出久(フォウ)
出久とは比べるでもなく残忍な気性の持ち主だと洸汰は瞬時に悟った。

「あ、イズクが目を覚ましたら『がむしゃらになって倒した』事にしておいて。あと、早くしないとこの子も死んじゃうかもしれないから私はもう下がるね」

待って!まだ……という洸汰の叫びも虚しく出久(フォウ)はまた反転して引っ込んでしまった。
そして目を覚ます出久。

「……あ、あれ? 僕は……」
「出久お姉ちゃんなの……?」
「洸汰君……? あれ、あのヴィランは……」
「そ、それなんだけど……」

洸汰はフォウに言われたとおりに伝えた。
その後に爆豪の姿を見て出久は血相を変えてすぐに治療にかかったのであった。
これでこそ出久だと洸汰も一応の安心感を得れた。





…………一人回想を終えた洸汰は、これは子供心に出久には伝えられない……と即決して心にしまう事にした。

 
 

 
後書き
救済どころか余計に不憫になってしまったマスキュラー。
本当の怪物の前には抵抗も虚しいですしおすし。
読者にマスキュラーファンがいたら謝っておきます、すみませんでした。

今回はフォウのちょっと残忍な一面でした。 
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