| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七話 大返しの苦労その二

「お家の再興が」
「だからそう言うのか」
「はい、それではとても」
 真田十勇士程はというのだ。
「及びませぬ」
「左様か」
「とても」
「はい、我等はです」
 その十勇士も言ってきた。
「とても及びませぬ」
「何も出来ておりませんから」
「まずはことを果たしてから」
「それからです」
「そうか、お主達も同じか」
 信長は十人衆の言葉も聞いてわかった、彼等の心が。
「自分達のことはよいか」
「はい、それよりもです」
「尼子家の再興です」
「我等も想いは山中殿と同じ」
「尼子家の再興こそが願いです」
「そうか、尼子殿はよい家臣を多く持たれておるな」
 信長はこのことがわかって瞑目して述べた。
「幸いじゃ、わしもよい家臣は多く持っておるが」
「我等が殿もですか」
「幸いなこと、ならば余計に約束しよう」
 山中にあらためて言うのだった。
「尼子家、必ずやじゃ」
「大名にですか」
「戻そうぞ。この度の戦の後でな」
「有り難き幸せ、それでは」
「そなた達は猿夜叉に任せる」
 長政、彼にというのだ。
「そうしてじゃ」
「山陰で、ですか」
「戦ってもらう、頼んだぞ」
「わかり申した」
 山中が応えた。
「さすれば」
「その様にな。しかしじゃ」
 ここでだ、信長は怪訝な顔にもなった。そうして山中にその顔で問うた。
「お主達十人以上おるぞ」
「そのことですか」
 山中も知っているという返事だった。
「実はそれがしを入れて十四人おります」
「そうであるな」
「はい、それがしが筆頭でして」
 山中はまず己から話した。
「この者達はそれぞれです」
「容赦無手介です」
「草葉百手之介です」
「破骨障子之介です」
「阿波鳴戸介です」
「井筒女之介です」
「五月早苗之介です」
「尤道理之介です」
「藪原茨之介です」
「上田稲葉之介です」
「早川柳之介です」
「淵川鯰之介です」
「因幡伯兎之介です」
「六万破之介です」
 それぞれ名乗った、ここまで聞いてだった。
 信長は先程以上にいぶかしむ顔になり今度は彼等全員に尋ねた。
「お主達全員名に介が付いておるな」
「はい、左様です」
「それがそれがし達の特徴になっております」
「名前に介があることは」
「その為尼子十介とも言われております」
 十人衆達もこう答える。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧