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兄妹の天国と地獄

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第三章

「クライマックス出てもね」
「おかしくなかったわよね」
「何ていうか」
 鯉女である彼女が横目で見ての評価だ。
「運がなかったんじゃないの?」
「それでなのね」
「負けて」
 そうしてというのだ。
「最下位だったんじゃ」
「勝ち運がなかったっていうのね」
「それでじゃないの?」
 カープのことならそれこそ二軍の若手の成績まで把握している、だが阪神は他チームなので横目で見ての言葉のままだ。
「今年の阪神は」
「阪神っていつもだからな」
 父はピーナッツを齧りつつ娘に応えた。
「不思議な負け方したり怪我人が出たり」
「そうしてなのね」
「やたらとな」
 それこそというのだ。
「負けるんだよ」
「そうしたチームなのね」
「負けに不思議の負けはないっていうけれどな」
「阪神にはあるのね」
「そうなんだよ、それはあいつが一番よくわかってるさ」
 寿がというのだ、自分の身体の血の色は黒と黄色と言って下着もいつもその二色の縦縞の彼がだ。
「それでもな」
「まあ私もカープが最下位になったら」 
 千佳もこう思うとだった。
「ああなる自信があるわ」
「そうだろ」
「けれど今のお兄ちゃんは」
「落ち込み過ぎか」
「この世の終わりが来たみたいじゃない」
「あいつにとってはそうなんだよ」
 阪神の最下位、それはというのだ。
「もうな」
「それはわかるわ」
 千佳もというのだ。
「よくね」
「そうだろ」
「本当にカープが最下位になったら」
「最近なってないけれどな」
「ここ十年位はね」
 つまり千佳が生まれてからはだ。
「だからいいけれど」
「それでもだな」
「そうなるって思ったら」
 まさにというのだ。
「ああなるわね」
「そうだろ、だからな」
「今のお兄ちゃんは」
「あまり変に刺激しない様にな」
「私お兄ちゃんにざま見ろとか言わないし」
 言うまでもなく阪神が最下位になったことについてだ。
「阪神はファンじゃないけれど嫌いじゃないから」
「そうだな、御前は」
「巨人は大嫌いだけれど」
 もっと言えば超嫌いである、寿もそうだが千佳の巨人嫌いは家の中でも学校でもかなり有名になっている。
「阪神はね」
「嫌いじゃないからだな」
「そんなこと言わないわよ、お兄ちゃんもカープには普通だし」
「だからだな」
「優勝はお祝いするけれど」
 カープのそれはだ。
「それでもね」
「煽ったりしないな」
「そうしたことはね」
「ならいいけれどね」
「あとね、あの数字は出さないでね」
 母は食器洗いが終わったところで娘に言った。
「33-4はね」
「あれよね」
「今のあの娘それにも反応するから」
 このことが予想されるからだというのだ。
「だからね」
「あの数字もなのね」
「出さないでね、絶対に反応するから」
「阪神は関係ないってね」
「そう言うから」 
 寿はそんなに強い訛りではないのでここで何てや阪神関係ないやろとは言わない、ネットでよく出される言葉であるがだ。 
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