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シュタイン=ドッチ

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第一章

                シュタイン=ドッチ
 都において権勢を誇っていた藤原道長はその話を聞いてすぐに怪訝な顔になった、そのうえで丹波からその話を彼に伝えた若い官吏に問い返した。
「その話はまことであるか」
「はい、目の色は金や銀、赤であり」
「目の色は青に緑、灰色にと様々で」
「我等よりもずっと体格がよく」
「身体の毛も獣の如き深さです」
「ふむ、異様であるが」 
 道長は官吏達に話を聞いてこう述べた。
「それはおそらく鬼ではない」
「違いますか」
「民達は鬼が来たと恐れ慄いていますが」
「赤い血を飲んでおり肉を喰らう」
「まるで鬼だと」
「それは波斯の者達であろう」
 道長は少し考えてから述べた。
「おそらくな」
「波斯といいますと」
「宋のさらに右にあった国ですか」
「もう新たな国に滅ぼされたと聞いていますが」
「景教とはまた違う教えを奉じる国に滅ぼされたとか」
「古来より本朝にも波斯の者達が異朝から流れ着くことがあった」
 隋や唐からだ、今は宋である。
「そして今も宋には波斯の者が商いでいて波斯からさらに西の国々もあるそうじゃ」
「波斯より西ですか」
「そこにも国がありますか」
「そうした国まであるとは」
「初耳です」
「わしもよく知らぬが」
 道長はそのふくよかで自信に満ちた顔をややいぶかしめさせて述べた。
「そこから宋に来るという」
「そういえば」
 ここで若い官吏の一人が気付いた顔になって言ってきた。
「異朝の古書で大秦という国がありましたが」
「その大秦があった辺りであろうな」
「波斯から西の国々となりますと」
「そこから宋にも人が来てじゃ」
「本朝に来ることもですか」
「あるであろうな」
「ううむ、では丹波に流れ着いたという者達も」
 その官吏は考える顔になり他の官吏達もだった。
 道長の話にそうした話もあるのかと考えた、そして道長自身丹波に着いたという者達に興味を持った、それで陰陽師である安倍晴明と話してだ。
 丹波に着いた者達がどういった者達であり危険はないかということを確かめる為に人をやることになった、その人選はというと。
 源頼光と四天王、そして平井保昌の六人だった。六人は道長の命で丹波に向かいその者達と会いどういった者達か確かめることになったが。
 その際だ、清明は頼光にこんなことを言った。
「丹波に着いた者達について占ってみましたが」
「何かありましたか」
「はい、異朝の者達と出ましたが」
「やはりそうですか」
「どうもかなり変わった者達の様です」
「変わった、ですか」
「はい」
 そうだとだ、彼はこう答えたのだった。
「我等が知らぬ国から来た様です」
「異国の中でも」
「左様です、そしてその話を聞くと」
 丹波、彼等が流れ着いたこの国においてだ。
「思わぬことがわかるとです」
「占いで出ましたか」
「左様です、ですから丹波では」
「慎重にですな」
「その者達の話を聞いて下さることを望みます」
 こう頼光に言うのだった、そうしてだった。
 六人は都を発ってそのうえで丹波まで向かった、その丹波に着いて民達に聞くと道長が聞いた話の通りだった。 
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