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レーヴァティン

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第七十六話 ローマに行ってその十

「一体」
「喫茶コーナーだ」
「ああ、自動販売機のところか」
「喉が渇いたからな」
「そういえば俺もな」
 言われるとだ、久志もだった。
「喉が渇いたぜ」
「じゃあ丁度いいな、近くにある」
 自動販売機が幾つか置かれている喫茶コーナーがというのだ。
「そこに行ってお茶でも飲みながらな」
「話すか」
「俺はペットボトルの麦茶を飲む」
 それをというのだ。
「御前は何を飲む」
「俺か?俺もお茶だな」
「麦茶か」
「いや、紅茶だよ」 
 久志が飲みたいのはこちらのお茶だった。
「ストレートをな」
「そちらか」
「最近あれにはまってるんだよ」
「そちらの島でも結構飲んでいるんだな」
「コーヒーかどっちかをな」
「成程な。紅茶もいいな」
 英雄は紅茶も否定せずにこう述べた。
「麦茶もいいが」
「ああ、麦茶な」
「そちらは嫌いか」
「いや、実は同じ味のが西の島にもあるんだよ」
「代用コーヒーか」 
 麦茶と同じ味の飲みものと聞いてだ、英雄はすぐにその飲みものが何なのか察した。
「あの蒲公英から造る」
「わかるんだな」
「高校時代にドイツ人の留学生から聞いた」
「ああ、ドイツのな」
「ドイツでは結構飲んでいたそうだ」
 東ドイツだ、コーヒーがなかったのでそちらを飲んでいたのだ。
「まずいと評判だったらしい」
「そうみたいだな、あっちだと」
「しかし日本人からするとな」
「麦茶の味だからな」
「冷やすと美味いか」
「ああ」
 そうだというのだ。
「これがな、ただな」
「西の島ではか」
「俺達はそうした飲み方をするけれどな」
「代用コーヒーを冷やしてか」
「これがな」
「あちらでは本来ないか」
「特別な飲み方だよ」
 そうだというのだ。
「あれはな」
「そうなんだな」
「あっちの島じゃ熱いんだよ」
「普通のコーヒーと同じ飲み方か」
「アイスコーヒーがないんだよ」
 この飲み方がというのだ。
「それがな」
「それはこちらでも同じだな」
「冷やして飲むことはないんだな」
「お茶もな」 
 英雄は久志にこう答えた。
「氷はあってもな」
「冷やして飲むことはしないか」
「まずは」
「じゃあ本当に俺達だけか」
「そもそもアイスコーヒーやアイスティーは日本が主だった筈だ」
「日本以外の国じゃあまり飲まないか」
「そうみたいだな」
 二人が通っている八条大学は世界各国から人が集まっている、それで英雄もこのことを知っているのだ。
「そもそもな、それにその日本も昔はだ」
「氷を入れて飲むことをしなかったか」
「それでだ」
 まさにそれ故にというのだ。 
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