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戦国異伝供書

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第十五話 中を見るとその十二

「どうにもな」
「しかしそれが欧州でして」
「同じ耶蘇教でもか」
「宗派が違いますと」
「殺し合うなぞな」
 首を傾げさせもしてだ、信長は言った。
「わからぬのじゃが」
「どうしてもですか」
「しかしそれが欧州ということか」
「はい、異端がおります」
「異端のう」
「それが問題なのです」
「異端もわからぬ。耶蘇教は耶蘇教と思うが」
 信長にしてみればだ。
「何かとあるのじゃな」
「それが為に戦が絶えません」
「惨い戦がか」
「特に神聖ローマ帝国では」
「神聖羅馬か」
「我等の主ハプスブルク家の国でもありまして」
「確かお主達南蛮人はエスパニアやポルトガルという国から来ておったな」
 信長はこのことも知っている、南蛮のことにも通じているのだ。
「そしてそのハプスブルク家はか」
「エスパニアもポルトガルも治めています」
「随分大きな家じゃな」
「まことに」
「そしてその家が治めておる神聖羅馬という国がか」
「宗派の違いで揉めております、そして領主達が皇帝に逆らい」
「領主達が皇帝に逆らうのはわかる」
 信長にしてもだ。
「土地や民、商いのことで何かとあろう」
「まさに」
「だからそれはわかる、本朝ではないことじゃなが」
「帝はですね」
「また別の存在じゃ」
 神聖ローマの皇帝とはというのだ。
「どうもそちらや明の皇帝は公方様に近いがな」
「どうもその様ですね」
「本朝の帝は法皇になるか」
「欧州でいいますと」
「そうじゃな、だから皇帝と領主、本朝で言う大名の争いはわかる」
「左様ですか」
「しかし宗派が違うだけでそこまで殺し合うことはな」
 信長にはというのだ。
「わからぬ」
「そこはどうしても」
「そうじゃ、そしてそうしたことで争っておると」
「やがては」
「人がいなくなってしまうぞ」
「そう言われますがそれがです」
「そちらの状況か」
 信長はどうかという顔のまま述べた。
「左様か」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「おそらく徹底的にです」
「戦をしてか」
「殺し合うかと」
「わしにはわからぬ。一向宗といえどな」
 先程激しく戦った彼等についてもというのだ。
「降ればじゃ」
「それで、ですね」
「刀を向けぬがな」
「それはまさにこの国のことですね」
「確かにわしはあの者達と徹底的にやり合っておるが」
「門徒を皆殺しにすることは」
「全く考えておらぬ」
 一切とだ、信長はフロイスに言い切った。 
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