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汚れちまった悲しみ

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第四章

 その気遣いに気付いてだ、95は男に尋ねた。
「どうして僕達に優しいの?」
「優しくしているつもりはない。ただな」
 外で買ってきた酒を飲みながらだ、男は95に話した。
「わしは御前さん達程じゃないが嫌な過去があった」
「そうだったんだ」
「騙されて裏切られて振られて暴力も受けて否定されて馬鹿にされてな」
 そうしたことがあったとだ、男は飲みつついつもの絶望と悲嘆と苦悩が浮かんでいる目で話をした。
「嫌な思いも散々した」
「それでなの」
「そうだ、その過去を思い出すとな」
「僕達もなの」
「否定出来ない、真実を知っているからな」
 それだけにと言うのだった。
「余計にだ」
「だからなんだ」
「御前さん達がこの辺りにいると聞いてたがたまたま会ってな」
 そうなってというのだ。
「誘った、御前さん達の過去は仕方ない、しかしそれを罵る奴がいてな」
「そえでなんだ」
「わしみたいなもの好きというか」 
 ロックの中の蒸留酒を飲みながらだった、男は95に話した。
「同病相憐れむ奴もいる、わしは御前さん達を見ていると自分の過去を思い出してな」
「それでなんだ」
「自分を見ている気持ちになった」
 自分よりも不幸であるがだ。
「それで誘ったんだ」
「そうだったんだ」
「一緒に住んでくれる様にな。嫌か」
「ううん」
 95だけでなく共にいた4もだった、男の言葉に首を横に振って答えた。
「おじさんの気持ちわからないけれど悲しくて苦しんでいるのはわかるから」
「だからか」
「若し僕達がおじさんと同じ立場ならそうしていたかも知れないから」
 そう思うからこそというのだ。
「いいよ。じゃあこれからもね」
「ああ、わしみたいな奴でよかったらな」
 一緒に住んでいこうとだ、男は飲みながら言って95と4は頷いて答えた。そうして三人は共に暮らしていった。お互いに辛い傷を思い出しつつその傷を知るがうえに無意識のうちに優しくし合って。


汚れちまった悲しみ   完


                   2018・10・21 
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